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創業計画書の「経営者の略歴等」には、年月ごとの経歴、過去の事業経験、取得資格、知的財産等の欄があります。
日本政策金融公庫の審査においては、過去の同業・類似の事業の経験が重視されます。経験は、経営者としてはではなくサラリーマンとして経験も、もちろん含みますので、「同業・類似の事業でいかに実績を残してきたか」や「サラリーマン時代にいかに起業の準備となるような経験をしてきたか」を主眼において説明していきます。
これらの実績や経験により、起業しようとしている事業における「経営者の能力」が測られることになりますので、適切にアピールする必要があります。
目次
1.日本政策金融公庫の記載例の問題点
日本政策金融公庫の記載例を見て、問題点を考えていきます。
(1)経験は書かれているが、具体的に習得したスキルやノウハウが見えてこない
履歴書のように時系列に整理された記載になっています。悪くはないと思いますが、「経営者の能力 」のアピールができていません。
この記載例では、アルバイトが3年・ダイニングキッチンが9年(うち店長が3年)ですので、起業するにあたっての同分野での経験年数は十分あると言えます。しかし、そこで習得したスキルやノウハウの記載がなく、融資担当者からはわかりません。
面談でアピールは可能なのですが、創業計画書において事前にアピールして、「この人は実績があり能力がありそうだ」と思わせるようにします。
(2)略歴の記載上のテクニック
問題は、ここでスキルやノウハウをアピールするには枠が小さすぎることです。審査担当者や決裁権を持つその上司が一番熱心に読んでくれるのは創業計画書ですので、テクニックとして文字を小さくしてしまうというのがあります。(特に、小さくしてはいけないというルールはありません)
なお、審査担当者にアピールできる実績を多く持つ方には、別紙に職務履歴書のような形でしっかりと書く事をお薦めします。逆に、それほど実績がない方が無理に別紙を作るとスペースの空きが出てしまって印象が悪くなってしまいますので、その場合は、文字を小さくするなどして、創業計画書だけにまとめるようにします。
2.経営者の略歴の良い例
(1)スキルやマネジメントをアピールできる略歴の例
平成18年3月 :〇〇大学工学部卒業 情報工学を学ぶ
平成18年4月~:㈱〇〇〇にて、5年間、銀行向けの即時決済ステム開発に従事。画面設計・基本設計・テストを担当。
平成21年4月~:他の金融関連システムの経験の必要性を感じて、㈱△△△に転職。5年間、主に保険の契約管理や販売システム開発に従事。後半の2年は全体のプロジェクト管理業務(年収は700万円)
平成28年1月 :金融システムの受託開発の事業を行うため、勤務先を退職。
(2)融資担当者の弱い分野はわかりやすく説明することが必要
この例ですと、大学から一貫してIT系のスキルを磨いていることがわかります。そういった方は稀だとは思いますが、可能な限り起業する事業に関連する実績をアピールするようにします。この記載ですと、その分野の技術の高さや、管理業務経験を書く事によりマネジメント能力があることがわかります。
学歴については、記載したほうが良いと思います。特に起業する事業に関連する知識を学んでいたなら強みを示す一つの要素になり、「経営者の能力」を補足してくれます。また、「どうやって売上を上げるのか、お客様をつかまえるのか?」が審査の重要なポイントになりますので、お客様との契約の折衝や営業の経験があれば、必ず記載するようにします。
IT関連は、飲食店やヘアサロンなど従来からあるビジネスと比較して、融資担当者の理解が進んでいないところです。一言でITといっても様々な分野があると思いますので、創業計画書や面談の際は、融資担当者はあまりITの知識がないという前提で記載・説明をすることが重要です。
大学や経歴が文系でも、プログラミングなどを独学に勉強されて起業し、成功される方も多くいらっしゃいます。経歴だけではスキルがうまく表現できなければ、スキルを身につけた経緯をきちんと説明する必要があります。例えば、ご自身で運営されているサイトで多くのPVを集めた、ECでいくら売れたなどです。
(3)略歴のストーリーが重要
昔は、転職を頻繁にしていると「長続きしない人」という印象を持たれて、マイナスポイントになっていたようです。
現在は、「起業するという目的意識を持って、各社で必要なスキルを身につけてきたんだな」という印象を与えることができれば、マイナスポイントにはならないです。むしろ、積んできた経験・獲得してきたスキルをストーリー立てて説明できれば、「起業に向けてスキルを磨いてきた人」ということで高評価を受けることができます。
3.「過去の事業経験」の書き方
稀でしょうが、過去に経営者としての経験があれば記載します。また、ここは、「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」に該当しないかのチェックを行うための目的もあるようです。この制度は、過去に事業をして一度失敗をして、再度起業する人のための制度です。
また、個人事業主として何年か税務申告を行っていて法人化するケースなどを判別するためのものでもあります。法人化することを起業・創業と思われている方がいらっしゃいますが、融資の審査上は、個人事業であっても法人であっても、事業を始めた時点が起業・創業です。
なお、創業融資に該当しない場合であって、何年も個人事業主として税務申告している実績があれば、他の融資制度で融資を受けることができる可能性が高いです。
事業の経験については、同業種でなくとも過去の経営者の経験は評価されますので、経験があれば記載してください。
4.取得資格欄の書き方
取得資格の欄には事業に関係する資格や認可を記入します。例えば、自動車免許はタクシーや運送業以外は関係ありませんので記載不要です。
資格が必要な業種である税理士などの士業、美容師・理容師などは既に資格を持っていることを明記しましょう。なお、本人が持っておらず他の役員などが持っているという方がいますが、その場合は融資を受けられる可能性がかなり低くなってしまいます。資格者資格保持者がいなくなると事業ができなくなるからです。
この欄は、基本的には公的資格を記載するものですが、事業を行う上での優位性を示すことができる場合には民間資格についても記入します。
5.知的財産等の欄の書き方
知的財産権は、創業融資の中で技術の新規性が見られる方だけに特別の制度がありますので、これに該当するかどうかチェックするための欄のです。
特許権や実用新案権などがある場合は記入してください。
まとめ
創業計画書においては、略歴とは単にご自分の履歴書のような形で記載するものではありません。創業計画書全体を通してですが、「経営者としての能力」を示す必要がありますので、この欄においても意識する必要があります。
日本政策金融公庫は起業する事業分野の経験を重視します。これから起業しようとしている分野と関連付けて、経験や実績を書き進めてください。
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