開業資金を引き出すための創業計画書の取引先・取引関係等の書き方

日本政策金融公庫 創業計画書 商品・サービス




商品・サービスを提供するためには、材料などを仕入れて、必要に応じて、外注先を外注する・人材を雇用する必要があります。また、販売先を見つけなくては売上をあげることはできません。

創業計画書では、どこから仕入れて誰に売るのか、また、その時の支払・回収条件はどのようになっているのかを可能な限り具体的に記載して、事業の実現性が高いことを示す必要があります。

今回は、創業計画書の取引先・取引関係等の書き方を解説します。

1.日本政策金融公庫の融資担当者は事業ができるための取引先が揃っているかの確認を行う

取引先

(1)創業計画書における取引先とは、販売先、仕入先、外注先の3つ

実際のビジネスでは他にも様々な取引先が発生することが考えられますが、創業融資の審査で重要なのは、この3つにしぼられています。

販売先とは、商品サービスを売る相手であるお客様のことです。

仕入先とは、商品や原材料などを購入する相手先で、外注先は、会社の業務の一部を外部に委託する相手先です。

なお、販売先が存在しないビジネスはありませんが、一部のサービス業などでは仕入先や外注先はない場合もあります。

販売先・仕入先・外注先は、それぞれについて取引先名、シェア、掛取引の割合、回収・支払いの条件を記載します。

シェアは、販売先であれば売上の何パーセントを占めるか記入します。掛取引の割合とは、代金を後日にもらう取引もしくは代金を後日に支払う取引の割合のことです。回収支払いの条件は、具体的な代金の受け渡しの条件の事です。

(2)融資申込みまでに創業計画書に書けるように取引条件を詰めておく

飲食店やヘアサロンなどの業種は一部のクレジットカード決済を除けば現金売上になりますが、BtoBビジネスの場合は”月末締め翌月末回収”のように、後で代金をもらう条件になることが多くなります。創業融資の申込みまでには、取引見込先を挙げるだけではなく取引条件まで詰めておく必要があります。

ポイントは、可能な限り固有名詞にするということです。起業前から特定の取引先を確保してるかどうかは融資判断に大きく影響を与えます。

飲食店やヘアサロンなど販売先が記入できない事業であっても、どんな顧客層を見込んでいるのかなどを明確にすることにより、事業上の戦略がはっきりしますし、融資の審査上も良いです。

2.日本政策金融公庫のホームページ記載のポイントをおさえる

日本政策金融公庫のホームページには以下のようなものを記入してくださいとあり、これを意識して書く必要があります。

(1)創業計画書には販売先・仕入先との結びつきがあれば記入する

前の勤務先や親族が経営する会社など、取引する相手と強い関係があれば記入するという意味です。創業当初は信用がなく取引先を探すのに苦労するということを日本政策金融公庫の融資担当者は理解していますので、まずはつながりがあるところで取引先を確保できていればプラス材料になります。

(2)創業計画書には契約書・注文書などがあれば添付する

契約書、注文書などにより、確実に取引が実行されるということを示すことになります。

(3)回収・支払条件は創業計画書作成前にあらじめ確認しておく

回収・支払いの条件を書くために、予め取引先と条件を確認しておく必要があります。

(4)創業計画書では立地選定の理由についても触れる

飲食店やヘアサロンなど立地条件が重要なビジネスの場合、その場所を選んだ理由を書いてください。市場分析や競合分析、ご自身の事業の強みなどと結びつけて書くと説得力が増します。

3.日本政策金融公庫の創業計画書の販売先欄の書き方

(1)可能な限り固有名詞を出して具体的に書く

販売先について、審査上は具体性があればあるほど良いです。そのため、融資申し込みまでに見込み客の目処をつけておくことは非常に重要です。

BtoBビジネスの場合、”〇〇の事業者向けに販売する”というよりも、”〇〇の事業者向けに販売する、なお㈱△△からは既に受注を受けている”した方が説得力が増します。また、販売先が確定していなかったとしても、商談中のいくつかの会社名をあげて、どこまで話が進んでいるのかを説明することでプラス材料になります。

飲食店やヘアサロンであっても、お客様はどういった層になるのかを具体的に書きます。近隣のサラリーマンなのか、地元の家族なのか、年齢層はどのくらいなのか、などです。

(2)大口であれば、販売先の信用状況も確認

BtoBビジネスの場合は留意すべきことがあります。

回収条件が掛取引の場合は販売先の信用状況が審査のポイントの一つになります。少ない取引に先に依存していて、かつ、取引条件が厳しいようであれば、その取引先の会社が倒れてしまうとご自身も共倒れしてしまう可能性があるからです。

これは実際の事業においても、販売先をあまりにも集中させて取引条件が厳しいとリスクが大きくなりますので注意が必要です。前払金をもらうなどの対応策を打つ必要があります。

(3)実現可能性が高いことを示す

日本政策金融公庫の融資担当者は 計画書に書いている販売先を実際に販売できるかどうかの実現性の高さを知りたがります。一番の証拠は契約書や注文書 などの資料ですが、それがない場合であっても商談の状況のメモなどを審査面談時に提示するのが良いと思います。また取引が見込める金額の見通しについて、具体的に説明できるようにしておくと、なお良いです。

4.日本政策金融公庫の創業計画書の仕入先欄の書き方

(1)仕入先については、安定性を説明することが重要

販売先と同様で仕入先についても、”材料や商品を仕入れることができる”ことを示すために固有名詞を記載してください。

融資の申し込みまでに、商品や材料の仕入先についてもいくつかの事業者にあたって見込み先を確保しておく必要があります。

仕入先を選定する際に大切な条件は、(当たり前ですが)良いものを、安く、安定的に届けてくれるかどうかです。”良いもの””安い”はどなたでも意識しますが、見落とされがちなのは安定性です。ビジネスがうまく回り始めたのに仕入先の製造が間に合わなくてスムーズに売上拡大できなかったという話はよくあります。必要な時に、必要なものを入手できれば、欠品せずに売上を拡大できます。

さらに、販売先と同様に取引条件も重要です。仕入れ代金の支払いから販売代金の回収があまりにも長いと資金繰りはどんどん厳しくなります。相手あってのことで創業当初は難しい場合も多いですが、可能な限り後に支払えるようにしましょう。

(2)取扱商品・サービスと関連させ、独自性

特に取扱商品・サービスにおいて、仕入れに強みを持つという記載をした場合には、それと関連させて記入していく必要があります。例えば、飲食店で日本海から直送する魚介類や有機栽培の野菜を売りにするのであれば、相手先の具体名を出して、仕入先を確保しているということを示す必要があります。

5.日本政策金融公庫の創業計画書の外注先欄の書き方

外注とは仕事の一部を外の会社に発注することです。自社にリソースがない場合や、外部に依頼する方が低コストである場合は外注することになります。

創業当初は専門の経理部員や管理部門員は雇用はできないものですので、そういった業務を外注することになります。また、他社と共同で製品を製造する場合や営業機能の一部を外に出すなどの場合も外注することになります。

(1)融資の資金使途に外注費は必ず記載する

創業計画書には運転資金の欄がありますが、そこには必ず外注費・外注加工費を記載しておく必要があります。

運転資金は3-4ヶ月程度しか融資が出ないのが通常ですが、外注費は認められやすい運転資金の項目になりますので、内容がわかるように漏れなく記載してください。逆に”その他”に入れてしまうなど、不明確にしておくと認められない場合があります。

(2)外注費を経営上必要不可欠なものとしてアピールする

融資金額は、日本政策金融公庫の融資担当者は必要最低限の金額に、融資申込者はなるべく多く借りたいもので、相反します。融資申込者は、金額を減らされないためには、一つ一つの費用が必要であることを説明して行く必要があります。

事業によっては外部に委託するというだけではなく、事業の営む上で重要な要素と言える場合があります。例えば、精密機械の製造販売を行う計画で自社で工場を持たずに製造を委託する企業形態などがそうです。大学や大手企業と共同で研究開発して外注費を支払うケースも該当します。

このような場合は、当然、外注費は運転資金として認められる費用となります。

6.人件費の支払欄の書き方

従業員やパートアルバイトを雇用する予定であれば記入します。記入に際しては一般的な”15日締め25日払い”と言った形で問題ありません。ボーナスは出す予定がなければ、空欄で構いません。

まとめ

取引先の記載を通して、計画した事業が実現するだけの相手先が揃っていることを日本政策金融公庫の融資担当者に説明する必要があります。

また、融資担当者は売上の回収と仕入れ等の支払の間隔を見て、どの程度資金に余裕があるのかを確認します。売り上げが伸びるほど、運転資金が多くなり売上の代金を回収する前の支払いが多くなります。

日本政策金融公庫の融資担当者は利益が出そうかを見ているだけではなく、資金繰りも検討します。利益が出るかどうかと、代金が回収されるかどうかは、貸倒関連の費用を計上するまでは直接関係しません。利益が出るかどうかと別に、資金が持つかどうかというところも 検討しています。

会社が支払いと比べてかなり遅い場合、起業から1年程度の資金繰りを十分検討して融資担当者に説明できるようにすることが重要です。







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