日本政策金融公庫の新創業融資制度と東京都制度融資の創業融資の違い




会社設立時の融資としては、日本政策金融公庫の新創業融資制度と東京都制度融資の創業融資が代表的です。

両者の違いの概要は以下のとおりです。以降で具体的に解説します。

新創業融資制度

新創業融資制度

東京都制度融資

東京都 創業融資

1.融資限度額 3,000万円(うち運転資金1,500万円) 2,500万円(自己資金の制限あり)
2.返済期間 運転資金7年、設備資金20年
据置期間は2年
運転資金 7 年、設備資金 10 年
据置期間は1年
3.金利 基準金利 2.16~2.45% 固定:1.7~2.5%
変動:短プラ+0.7%以内
4.申込期間  税務申告を2期終えるまで  事業開始後5年まで
5.勤務要件 現在の企業もしくは同業種に6年以上 要件なし
6.自己資金 借入額は自己資金の10倍 要件なし
7.許認可事業 事後でも可 許認可が要件
8.社長の保証 なし あり

1.融資限度額

新創業融資 3,000万円(うち運転資金1,500万円)まで。
制度融資 2,500万円まで。ただし、創業前については”自己資金+ 1,000 万円”の範囲内。

これは、仮に自己資金が500万円なら、1,500 万円が限度ということです。

融資限度額は日本政策金融公庫の新創業融資が有利です。

ただし、開業時の資金の調達先に関しては、「新規開業実態調査」によると、「金融機関等からの借入」が平均866万円(平均調達額に占める割合は63.4%)となっています。この平均値は担保付き保証付きも含まれていますので、日本政策金融公庫の無担保無保証で現実的に狙えるゾーンは(自己資金の金額などによりますが)100-600万円、平均300万円程度だと考えます。

一応の上限額は両者とも高いですが、実際に限度額まで融資を受けるハードルは高いと言えます。ただし、自己資金の額や創業者の実績などによって1,000万円を超える調達も不可能ではありません。

2.返済期間・据置期間

新創業融資 返済期間は、ものによっては運転資金が7年以内、設備資金が20年以内(いずれも据置期間が2年)まで設定可能
制度融資 返済期間は、運転資金が 7 年以内、設備資金が 10 年以内(いずれも据置期間が1年)まで設定可能

返済期間・据置期間は日本政策金融公庫はの新創業融資が有利です。

3.金利

新創業融資 基準金利 2.16~2.45%
制度融資 (責任共有利率)

【固定金利】

融資期間 3 年以内 :1.9%以内

3 年超 5 年以内:2.1%以内

5 年超 7 年以内:2.3%以内

7 年超 :2.5%以内

【変動金利】

短プラ+0.7%以内

(全部保証利率)

【固定金利】

融資期間 3 年以内 :1.7%以内

3 年超 5 年以内:1.9%以内

5 年超 7 年以内:2.1%以内

7 年超 :2.3%以内

【変動金利】

短プラ+0.5%以内

金利は制度融資が有利です。ただし、制度融資は別途保証料(0.3-1.5%程度)がかかります。詳しくは、「東京信用保証協会の信用保証料」をご覧下さい。

なお、信用保証には責任共有制度というものがあります。これは、信用保証協会と金融機関が適切な責任共有を図るもので、責任共有制度の利率と信用保証協会が全て保証する利率が分かれています。

なお、制度融資については、創業支援特例という0.4%低くなる優遇制度があり、以下のいずれかを満たす必要があります。

産業競争力強化法(平成 25 年法律第 98 号)第 2 条第 23 項第 1 号に 規定する認定特定創業支援事業により支援を受け、区市町村長の証明を受け ていること。

・商工会議所・商工会、公益財団法人東京都中小企業振興公社または保証協会より認定特定創業支援事業に準ずる創業支援を受け、その証明を受けていること。

4.申込可能期間

新創業融資制度 開業前または事業開始後税務申告を2期終えるまで
制度融資 開業前または事業開始後5年まで

申込可能期間は制度融資が有利です。

なお、期間の終わりについて、日本政策金融公庫が2期終えるまでと決算期を基準としているのに対して、制度融資が5年までと年を基準としていることに注意してください。

5.勤務経験等の要件

新創業融資制度 現在の企業に継続して6年以上、もしくは、現在の企業と同じ業種に通算して6年以上
制度融資 要件なし

勤務経験の要件は、制度融資は特にありません。ただし、条件が緩いため実質はほとんだ変わりがないです。

日本政策金融公庫は以下のいずれかに該当すれば良いとされており、(1)雇用の創出を伴う事業であれば問題ありません。なお、現時点で雇用していくとも近い将来に雇用する予定であれば条件に該当します。さらに後日に実際に雇用したかどうかを報告する義務はありません。

(1)雇用の創出を伴う事業を始める方

(2)技術やサービス等に工夫を加え多様なニーズに対応する事業を始める方

(3)現在お勤めの企業と同じ業種の事業を始める方で、次のいずれかに該当する方

 (ア)現在の企業に継続して6年以上お勤めの方

 (イ)現在の企業と同じ業種に通算して6年以上お勤めの方

(4)大学等で修得した技能等と密接に関連した職種に継続して2年以上お勤めの方で、その職種と密接に関連した業種の事業を始める方

(5)産業競争力強化法に規定される認定特定創業支援事業を受けて事業を始める方

(6)地域創業促進支援事業による支援を受けて事業を始める方

(7)公庫が参加する地域の創業支援ネットワークから支援を受けて事業を始める方

(8)民間金融機関と公庫による協調融資を受けて事業を始める方

(9)既に事業を始めている場合は、事業開始時に(1)~(8)のいずれかに該当した方

6.自己資金

自己資金

自己資金の要件は東京都の制度融資は要件がない(区の制度融資はあり)ため形式的には有利です。

日本政策金融公庫の創業融資制度は創業資金総額の10分の1の自己資金が必要とされています。ただし、5.(3)ー(8)に該当したり、「中小企業の会計に関する指針」を適当していたりすれば、自己資金の要件はなくなります。

制度融資に関しては、東京都の各区のものについては、自己資金以内としているところが多いです。

なお、実際の審査では両者ともに自己資金がないとなかなか通りません。ですので、形式的な定めも重要なのですが、実際は自己資金を用意する必要があります。

「新規開業実態調査」によると、開業時の「金融機関等からの借入」が平均866万円、「自己資金」が平均311万円ということですから、日本政策金融公庫であっても実績から見て借入できる金額は自己資金の2-3倍程度と考えて頂いて良いです。

7.融資前の許認可

営業許可
新創業融資制度 原則は許認可後。ただし、融資後でも可能な場合あり
制度融資 許認可が要件

制度融資の要件としては、”許認可事業を開始される場合は、原則として事業に必要な許認可を受けていること”があります。

制度融資の場合、飲食店などは店舗が整わなければ申請できません。ですので、設備の一部を自己資金で支払い、残りの支払いを借り入れで賄おうとした場合、仮に融資が受けられないければ、最悪開業できず設備の支払いだけが残るという状況もありえます。

一方で、日本政策金融公庫の新創業融資制度も原則は融資までに許認可を受ける必要がありますが、実態として飲食店や介護事業の一部では店舗や事業所設備を整えないと許認可が下りない事業については、事後でも構わないとされています。

8.社長の保証

信用保証協会に保証人になってもらう制度融資は、社長は原則的に保証人にならなければなりません。この点は、日本政策金融公庫の新創業融資制度と大きく異なる点です。

ただし、制度融資であっても、経営者以外の第三者を保証人として求めることは、原則禁止されていますので、社長以外の人までが保証人として求められることはありません。

9.まとめ

1.ー5.までは実質的な違いは大きくはありません。

重要なのは、6.自己資金、7.融資前の許認可、8、社長の保証です。

日本政策金融公庫は一般に自己資金の2-3倍程度の借り入れが可能、許認可の融通がきく、社長保証なしですので有利と言えます。一方制度融資は利率が若干安いという有利な面があります。

多くの場合、日本政策金融公庫が有利と言えますが、日本政策金融公庫から借りられない可能性が高い場合は制度融資も並行して進めるというやり方もあります。







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