飲食店における賄い(まかない)と自家消費の個人事業・法人の処理の違い

飲食店において、仕入れた材料を事業主や役員・従業員が消費する、まかないや自家消費は税務調査で必ずと言って良いほどチェックされる項目ですので、正しく処理する必要があります。

個人事業の場合や、法人の場合で考え方や処理の仕方が異なりますので、それぞれについて解説します。

1.個人事業か法人かでも処理の仕方が異なる

まずは、事業の形態が個人事業主か法人かで分けて考える必要があります。

従業員へ支給する賄いであれば、個人事業主か法人かの違いはなく、留意すべき点では同じです。一方、社長が仕入れた材料を自ら消費する場合は、個人事業主か法人かで異なります。順番に解説していきます。

区分ごとの主な論点は、以下のとおりです。2.以降で解説していきます。

個人事業 法人
事業主/役員  自家消費の処理(2.で解説)  賄い+定期同額(4.で解説)
従業員  賄い(3.で解説)

2.個人事業における事業主の自家消費

個人事業の場合、個人事業主が仕入れた材料を自分で食べたとき、「自家消費」の他、「家事消費等(かじしょうひとう)」などの勘定科目名を使って、売上と同じように処理する必要があります。なお、所得税の青色申告書の「月別売上(収入)金額及び仕入金額」の欄では、「家事消費等」と記載されています。

(1)会計処理の例

会計処理としては、「自家消費」勘定を貸方に、借方には「事業主貸」を計上します。「自家消費」勘定とせずに、通常の売上と同様に「売上高」を使う場合もありますが、飲食店の場合、自家消費が多く、税務調査でチェックされるポイントになりますので、きちんと自家消費勘定を設定し、どのくらい自家消費したか記録することをオススメします。

飲食店を営む個人事業者が店で材料500円を、自分の食事用に使った。
(借方)事業主貸  500円/(貸方)自家消費  500円

なお、事業者が消費税の課税事業者であれば、上記は課税売上の仕訳になります。

(2)自家消費の価額はいくらにすれば良いのか?

個人事業者が購入した販売用の資産(飲食店の場合は、食材や飲み物)を自分のために使用した場合、所得税法上、その販売価額を総収入金額の金額に算入することになっています(つまり、その分だけ事業所得が増えて税金が増える)。また、販売用の資産以外の場合は通常、売買される価額となります。

一方、販売価額ではなく、棚卸資産の取得価額以上の金額をもってその備え付ける帳簿に所定の記載を行い、これを事業所得の金額の計算上総収入金額に算入しているときは、

その棚卸資産の仕入価額以上 or 通常の販売価格の70%以上

のどちらか高い金額を「自家消費」の額として計上することができます。

なお、個人事業者が自家消費を行った場合の消費税の扱いは、時価に相当する金額を課税標準として課税されます。ただし、棚卸資産を自家消費した場合は、その棚卸資産の仕入価額以上の金額、かつ、通常他に販売する価額のおおむね50%に相当する金額以上の金額を対価の額として確定申告したときはその取扱いが認められます。

すなわち、上記の所得税の要件を満たす(その棚卸資産の仕入価額以上、通常の販売価格の70%以上の高い方)ように処理すれば、消費税上も問題がないということです。

(3)未処理の場合の納付額

仮に、自家消費の処理について未処理であって、1年あたりの自家消費を500円(1食当たりの価額)×20日/月×12ヶ月=12万円とすると、12万円×税率+過少申告加算税10%を支払うことになります。

3.個人事業や法人における従業員に対する賄い

(1)賄いの基本的な考え方

賄いは従業員への経済的な利益の供与であるため、原則として通常の現金による給与と同等と扱われ、従業員の所得税の対象となるとされています。

(2)未処理の場合の納付額

仮に、賄いの処理について未処理であって、1年あたりの賄いを500円×20日/月×12ヶ月×5人=60万円として計算すると、事業主/会社側は、税務調査によって60万円分の源泉所得税の徴収漏れとして、源泉所得税+不納付加算税10%を支払うことになります。

従業員側も、増加した給与所得に応じて所得税等を追加で納付する必要が出てきます。

(3)賄いを課税されないためのポイント

役員や使用人に支給する食事は、次の二つの要件をどちらも満たしていれば、給与として課税されず、福利厚生費扱いとなります。

・役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。

・次の金額が1か月当たり3,500円(税抜き)以下であること。
(食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額)

この要件を満たしていなければ、食事の価額から役員や使用人の負担している金額を差し引いた金額が給与として課税されます。

なお、ここでいう食事の価額は、次の金額になります。

・仕出し弁当などを取り寄せて支給している場合には、業者に支払う金額

・社員食堂などで会社が作った食事を支給している場合には、食事の材料費や調味料など食事を作るために直接かかった費用の合計額

つまりは、飲食店の場合は、従業員に原材料費の半分以上を負担してもらい、かつ、会社の負担が1か月当たり一人3,500円以下となるようにすれば、給与計算に影響を与えず、事業主/会社側の源泉徴収漏れや従業員の所得税の増加が避けられるということです。

なお、3,500円はあくまで判定のための基準であることに注意が必要です。仮に会社負担が5,000円の場合、3,500円との差額の1,500円が給与扱いになるのではなく、5,000円が給与扱いになります。

(4)支給時の仕訳

賄いの仕訳例

飲食店を営む個人事業者(もしくは法人)が店で材料10,000円を原材料費として購入した。
(借方)売上原価  10,000円/(貸方)現金  10,800円
(借方)仮払消費税   800円

(パターン1)従業員に対して原材料費5,000円分の賄いを支給し、従業員は2,500円(税抜)を負担した。
(借方)現金            2,700円/(貸方)自家消費(社内売上)  2,500円
______________ /(貸方)仮受消費税                        200円
(借方)福利厚生費       2,500円/(貸方)売上原価        2,500円

(パターン2)従業員に対して原材料費5,000円分の賄いを支給し、従業員は1,000円(税抜)を負担した。
(借方)現金            1,080円/(貸方)自家消費(社内売上)  1,000円
______________ /(貸方)仮受消費税                          80円
(借方)従業員給与       4,000円/(貸方)売上原価        4,000円

(5)給与として課税されないもの

以下の2つは、給与として課税されないこととされています。いずれも福利厚生費で処理します。

給与として課税されないもの

・現金で食事代の補助をする場合において、深夜勤務者に夜食の支給ができないために1食当たり300円(税抜き)以下の金額を支給する場合

・残業又は宿日直を行うときに支給する食事で無料で支給するもの

4.法人における役員に対する賄い

これは社員が数人程度で、社長が現場に出て賄いを食べているような状況で発生しやすいです。

基本的には、3.と同様になりますが、役員特有の注意点があります。いずれにしろ、福利厚生費となるように書類やルールを整備しておく必要があります。

(1)未処理の場合の納付額

仮に、賄いの処理について未処理であって、1年あたりの賄いを500円×20日/月×12ヶ月=12万円として計算すると、会社側は、税務調査によって12万円分の源泉所得税の徴収漏れとして、源泉所得税+不納付加算税10%を支払うことになります。この場合の1回あたりの賄いの金額も、法人から役員への贈与とみなして、仕入額ではなく販売額とされる可能性が高いと思われます。(70%基準はあくまで所得税のルールのため、法人の役員に適用されるかは定かではありません)

役員側も、増加した給与所得に応じて所得税等を追加で納付する必要が出てきます。

(2)株主総会等の承認も必要

給与扱いとなる賄いは、通常の役員報酬や役員賞与と同様に、株主総会の決議もしくは定款への記載が必要です。賄いを正しく処理しておらず、仮にそれが税務調査で発覚した場合で報酬限度額を超えてしまったときは、理屈上は会社法違反にもなってしまいます。

まとめ

個人事業主の自家消費

特に飲食店においては、税務調査で必ずチェックされるポイントになりますので、計上のルールを決めて、確実に処理しておく必要があります。

従業員に対する賄いや法人の役員の賄い

給与課税されないように、賄いの対価を従業員や役員から徴収することをオススメします。そのほうが役員や従業員の所得税上のメリットがあるためです。







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