飲食店出店のための物件選びの7つのポイント




飲食店は、物件商売ともいわるほど物件選びに大きく影響されるビジネスです。

実際、料理もサービスも良いのに経営状態が悪いというお店の原因を探していくと物件の立地の悪さに行き着くことも珍しくありません。条件の良い物件を見つけることは飲食業の成功に欠かせない要素といえます。

今回は、物件選びのポイントを紹介します。

1.希望する物件を探せることは少ない

疲れ

最初に覚えておいて頂きたいのは、希望する条件に完全に合致する物件は早々見つかるものではないということです。駅前で、人通りの多い道路沿いのような好条件の場所に新規開業者が出店するのは難しいです。

コンセプト・事業計画と合致した物件を探す

新規の小規模飲食店が確保できる物件は、一般的にあまり良くない物件となることが多いため、そのは覚悟は必要です。成功している店舗は、物件・コンセプト・事業計画がしっかり噛み合った出店をしているところです。決して、希望条件を100%満たした物件に出店できているわけではありません。

優先順位が何かを明確にする

何かを絶対の条件にして、何かを妥協して物件を選定します。新規開業者にとって大切なのは物件・立地の条件に合わせて計画を柔軟に修正することです。大手はコンセプトや条件に合う物件の基準が会ってそれから外れると他を探すわけですが、新規開業者はそのように杓子定規な考えは不要です。”物件探しの成果として投資額が見合った利益を出せる物件を見つけるということ”、これだけ絶対に外してはいけませんが、他はご自身の経営理念やお店のコンセプトからはずれていなければ問題ないわけです。

ただし、見合った利益を出すためにはさまざまな条件を考慮する必要があります。物件選びによって、当初の事業計画で想定した、家賃の金額、期待できる客単価、期待できる座席数、期待できる回転率などが変わってくるはずですので、変更後の事業計画であっても利益が出せるものかどうか、検討しながら物件選びを進めていってください。

2.物件探しの前提を理解する

物件は一度決めたら変えられない

当たり前ですが、物件は一度決めたら変えられません。コンセプトやメニュー、テーブルや椅子などは資金に余裕があれば変更可能ですが、違う立地と物件に変えられるだけの資金的余裕はないはずです。

自分の努力ではどうにもならない要素も多数ある

どんなに自分に合う可能性がある物件を熱心に探したとしても、自分の努力ではどうにもならない部分があります。新規事業者というだけで、信用力という意味ではハンディキャップがあり、大手の飲食店と競合してしまうと、(基本は早い者勝ちですが)信用力で負けるため契約にいたらない可能性があります。

良い物件は早々には出ないため、時間と妥協が必要

良い物件はなかなか出ないものです。大手企業には、物件探しを専門にしている人がおり、そういった人たちはノウハウやネットワークを持っています。そんな人と同等の勝負はできません。お店のコンセプトやターゲットによりますが、駅から少し離れた場所や郊外の幹線道路以外などを狙うのも手です。短すぎるスパンでの物件探しは危険です。良い物件に巡り会えるにはタイミングも重要だからです。

また、良い物件といわれるものは高い価値があり、物件所有者はその価値をなるべく好条件で貸したいと思っているため、家賃も高騰しがちです。

お店の経営は、売上ではなく、利益が重要であることを認識する

経営的に良い物件とはなんでしょうか?そうです、利益をあげることのできる物件です。

家賃が高くて売上が上がる店舗を見つけられたとしても、”売上ー費用”で計算される利益が最大化されなければ、経営的には意味がありません。売上が高く家賃が高い店舗と、売上が多少低くとも家賃がそれ以上に抑えられ、結果として利益が上げられる物件であれば、経営的には家賃の安い物件が正解です。

コンセプトにあった物件探しがやはり重要

よくあんな場所で繁盛しているなーと言われる店舗があります。しかし、実はその店にとってはそれが一番良い立地物件だったということです。新規開業者はそういった物件は探さなくてはなりません。

3.情報を集めるルートを多く持つ

店舗物件を探すには、まず物件情報を集めることから始める必要があります。店舗物件の情報を可能な限り集めて、多くの物件を実際に見に行くことで、条件に合うか合わないか、家賃と比較しての条件の良し悪し、などの判断を行う訓練となります。また、多くの物件を見ていくうちに、何が優先順位を高くなるのかの希望条件が明確になってきます。気になる物件があれば、契約しなくても良いわけですから、ご自分の目で必ず確認しておきましょう。

(1)インターネット

短期間に多くの情報を取得できます。相場観を知る上でも、まずはインターネットで色々な物件を見ておいて、基礎知識を得た上で不動産会社に行ってもよいでしょう。

(2)不動産会社は一つに絞らない

不動産会社は、基本的には同じデータベースを使っているため、物件情報の違いはそれほどないと言われています。しかし、その会社ごとの得意不得意や担当者による違いもあります。

重要なことは、とにかく多くの情報に触れて、物件を見る目を養う、訓練することですので、ひとつの不動産会社に絞る必要はないと思います。様々な不動産会社にタッチしておいて、希望の物件概要を伝えておきましょう。

(3)店舗物件専門会社

普通の不動産会社は店舗に関する知識を持っているわけではなく、話がかみ合わない可能性がありますが、専門会社であればそいういった心配は減ります。

とにかく情報量が多いですし、地域により得意不得意はあるものの、物件情報獲得の第一候補となるでしょうか。まずは、窓口に行って、希望物件概要を伝えましょう。

(4)出店希望地にある不動産会社

都心部の場合、基本的には住宅を中心に営業しているところが多く、店舗物件扱いに積極的ではないところもあります。

しかし都心部以外の場所では、店舗物件に関しても取り扱っているところが多いため、積極的に活用すべきです。

(5)物件情報誌・独立開業希望者向け情報誌

情報量は多くありませんが、参考に見てみるのも良いでしょう。

(6)店舗内装設計施工会社店舗プロデュース会社

こちらも、情報量は多くありません。新規開業の内外装工事を受注するために物件情報を集めている会社が多いです。仲介手数料が取れない一方で、内外装工事は任せることになってしまうというデメリットもあります。

4.地域調査は必ず行う

物件情報収集と並行して出店希望地域の地域調査を行いましょう。

住み慣れた地域で物件を探す場合であっても、事前調査は必ず行うべきです。馴染みがあるとは言ってもそれは商売の視点で見た場合には違うからです。商売が成り立つかどうかという視点で見ると全く別のものが見えてくるものです。

その地域にお店のコンセプトに合ったターゲット層はいるか

最も必要な情報は、自分のお店のコンセプトに合う人が①住んでいるか、②働いているか、③何らかの理由で訪れるか、の3点です。これは、その街や地域の特徴といえるものですので、自分の努力で変えることはできません。これを無視した出店は経営的にリスクが大きくなります。

地域調査には、以下の二つの視点があります。地域調査の目的は、お店のコンセプトにあった地域であるかどうかを判断することです。

データなどに基づいた定量的調査

定量的調査とは、その地域の人口や特性を数字で把握するものです。複数の出店希望地がある場合は、比較するようにしてください。役所の窓口などで資料が閲覧できます。必要なデータは商圏人口、最寄駅の乗降客数、競合の出店状況、などです。

経営者の感覚や直感による定性的調査

定性的調査とは、その地域がお店のコンセプトに合っているか否か感覚で把握するものです。

街並みや昼夜の雰囲気、賑わい、通行人、繁盛している店舗などみて、コンセプトにあっているかを判断します。違う時間、違う曜日に複数回調査に行く必要があります。特にお店のコンセプトで最も大切な時間帯には、必ず複数回足を運びます。

5.賢い内見の仕方

良い物件情報が見つかったら、まずは内見をして候補物件の内部の状況を確認します。契約となれば大きな支出が発生します。一度開店したら簡単に移転するわけにも行きませんし資金的な制約からほぼ不可能と言えると思います。

必要な事柄はすべて確認しなければなりませんが、店舗を借りるのは、住宅を借りるのとは違いますし、チェックすべき項目は本当に多いです。

チェックすべきは、以下の2点に集約される

  • 売上と費用に影響する箇所
    →工事によって、内装外装を変更できるといっても、物件ごとのある程度の制約の中で変更しなければなりません。私は飲食店のコンサルタントではありませんが、売上が上がりやすい上がりにくい、オペレーションしやすいしにくいにより発生するコストの違いがあるはずです。
  • 初期投資額に影響する箇所
    →既存の物件の構造によって、初期投資額は変わってくるはずです。

どちらも契約してから変更できないことがほとんどですから、自分で見るだけでなく、できれば契約前に専門家に確認依頼を行うほうが無難でしょう。契約後に、目標の席数が取れない、投資額が予算オーバーしてしまう、となっても手遅れです。

6.契約を行う前に確認すべきこと

店舗の賃貸借契約を行う前に確認すべき点は大きく分けて2つあります。

基本的な契約条項

物件面積、賃料、保証金の金額などです。

付帯設備契約条項

もう一つは、これから行う内装工事の条件などを定めた付帯設備の条項です。どのような形で引渡し、どうような改装をして良いのか、また、退去する際にどのような形で返還する必要があるのかを確認しましょう。

事業計画書が出来ているかの確認

物件調査がすべて終了したら、投資額の算出と収支予測を行い、最終的な事業計画を完成させ、申し込みするか否かを判断します。

注意したいのは、一度物件を決めてしまったら家賃が発生するため、資金が一気に減っていくということです。この時点で、事業計画書ができていないとスムーズに開業準備を進めることができません。物件契約を行う際に開業計画書の閲覧を求められることもありますし、融資を受ける際には必ず事業計画が必要になります。

7.停止条件付賃貸借契約

賃貸借契約の仕方には、「停止条件付賃貸借契約」というものがあります。

これから物件を借りる際に、日本政策金融公庫などの金融機関から融資を受けられる予定の方は多くいると思います。初めて融資を受ける方は、資金的な制約から「賃貸借契約」を締結できない状況にある場合があります。

気に入った物件があったとしても、”融資の可否を待ってから”となると、他の方に取られてしまう可能性があります。そこで、融資を利用する際の賃貸借契約の仕方として、「停止条件付賃貸借契約」を使います。

これは、融資実行が行われる事が条件で賃貸借契約の効力が生じるものです。つまり、”融資が通れば契約を有効なものにする”という契約になりますので、条件が成立するまでは契約の効力がまだ生じていない状態となります。万が一、融資が実行されない場合は、契約が無効ということになります。

お分かりかと思いますが、この契約方法は、借主にとっては有利ですが、貸主にとっては、契約が無くなってしまうためリスクのある契約となります。当然、貸主に認めてもらえないケースも予想されます。

貸主に認めてもらえない場合、契約書の特約に違約金を設定するのが一般的で、借主も相応のリスクを負った契約内容にする必要があります。また、貸主にこの条件を認めてもらうためには、「事業計画書」や「自己資金の証明書」等を用意して、融資が成功して契約が成立する可能性が相当程度高いことを理解してもらうことが望ましいです。







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