日本政策金融公庫からの追加融資で苦労しないための6つのポイント

創業融資を受けて1年も経過すると、「事業がうまく行き始めたから追加の設備投資のための資金がほしい」、「事業が想定よりもうまく行かなかったから追加の運転資金のための資金がほしい」といったような状況となり、追加融資を検討し始める個人事業主や会社の方がいらっしゃいます。

また、ご自分で検討されていなくとも、順調に融資の返済を続けていると、「追加融資をしませんか?」という勧誘が日本政策金融公庫の方から来る場合もあります。

今回は日本政策金融公庫から追加融資を受けるにあたってのポイントやネガティブな理由で追加融資を実施しないための1回目の融資の注意点を解説します。

1.創業融資は期待>実績、追加融資は期待<実績。

創業融資を受ける際には、ほとんどの方が事業の実績がなく、開業前に融資を受けた方はその事業の実績は0です。

日本政策金融公庫の審査担当者は、創業融資の審査の際に何を見るかというと、創業計画書や面談を通して、①経営者の能力、②事業プランの実現可能性を見ます。また、自己資金の大きさを見て、③その事業にかける真剣さや本当に準備ができているかを確認します。この3つが創業融資が通るか通らないかの3大ポイントで、事業の期待の高さを総合的に測って、融資するかどうかを決めていると言えます。

一方で、追加融資は、事業の期待度よりも実績を見ることになります。

実績というと、大きくは以下の2点が挙げられます2点目がより重視される指標で、例えば民間の金融機関から新たに融資を受けようと思うのなら、融資を受けれるだけの決算書を作成する(=事業で利益を出す)必要があります。

  • 延滞なしで期日通りに返済を行っている
    当たり前と思われるかもしれませんが、まずは「借りたお金はきちんと返す」という実績を示す必要があります。これを実行するためにも、無理なく返済できる事業計画や要調達額を創業時に立てておくべきです。
  • 決算書で利益が出ている
    会社側から見ると将来必要な資金を借りたいわけですが、金融機関としては基本的に過去の実績である決算書を見てどのぐらい貸せるのかを判断します。経営計画書などで将来の成長性は多少は加味されるのですが、基本は「過去と同じぐらいのキャッシュフローを生み出すだろう。それで返済できるだけの融資をする」という前提で審査をします。
    (3つの大きなポイントとして、①直近決算のキャッシュフロー・②財政状態(債務超過になっていないか)・③債務償還年数(現在の借入残高を直近決算のキャッシュフローを用いると何年で返済できるか)があります)

日本政策金融公庫に関しては、民間の金融機関に比べると、延滞がなく返済を一定期間行なっていれば追加融資を行ってくれる可能性が高いです。もちろん、決算書や事業計画の審査も実施します。

2.追加融資前に2-3割程度の返済を期日通りに終わらせる

追加融資を受けるには、当初の融資の返済期間・金額に関しては、どの程度必要でしょうか?

一般には全体の5割程度と言われているようですが、期間としては1年、金額としては2-3割程度の返済を期日通りに行なっていれば、追加融資の可能性があります。期間に関しては、少なくとも創業後1期目の決算を迎えていない場合は、日本政策金融公庫としては決算書という客観的な実績を確認できないため、追加融資には慎重にならざるを得ないです。よって、少なくとも1年目の決算書を作ってから追加融資の話を持っていきたいものです。

ただし、金額や期間の条件がそろったからといって、必ず追加融資を実行してもらえるわけではありません。以下の他の条件も揃えておく必要があります。

3.追加融資は、決算や申告書作成を行っていることが条件

1.に記載のとおり、創業後の融資に関しては実績を重視されます。

実績は基本的には決算書を見て判断しますので、それのベースとなる記帳は正確にできている必要があります。注意したいのは、表面的に記帳されているかどうかも重要ですが、領収書等の根拠に基づいて適正に記帳されているかがより重要であるということです。例え融資が実行されたとしても、後々何かのきっかけで数字の誤りが判明して粉飾とみなされると、最悪融資が引き上げられる可能性があります。適当な数字を金融機関に出すのは絶対に避けるべきです。

また、税務申告書の提出も求められますので、各期の申告を法令通りに行い、納税が完了している必要があります。

税理士報酬は創業期の会社にとっては大きなコストとなりますが、特に追加で融資を受けたい場合、顧問契約は厳しくとも申告だけは税理士に依頼したほうが良いと思います。

4.日本政策金融公庫の実行から短期間しか経過していなければ、リスケジュール・制度融資の可能性も考える

(1)リスケジュールする必要があるのか検討

事業をスタートさせてから想定よりも上手くいかずに、このままだと資金ショートしてしまうような場合は、追加融資は難しいのでリスケジュールを行うことを検討します。リスケジュールとは、簡単に言うと返済を先延ばしにしてもらうことです。

追加融資は、「事業がうまくいっていて運転資金がさらに必要だ」とか「実績ベースの営業キャッシュフローの金額からもう少し借り入れることができる」といった場合に行います。よって、短期間で事業がうまくいかないことが判明したようなケースは、ほぼリスケジュールを選択することになります。

リスケジュールにも注意点があります。

  • リスケ中は追加融資は不可能
    →リスケ中は追加融資を受けることはほぼ不可能です。リスケ中の金融機関からの追加支援は期待できません。
  • 自力で事業を軌道に乗せる計画とする
    →リスケジュールの際は計画書を金融機関に提出する必要があります。上述のとおりリスケ中の金融機関からの追加支援は期待できませんので、自力で事業を軌道に乗せる計画(具体的には、計画最終年の営業キャッシュフローを、借入残高の1/10超まで持っていく)にする必要があります。
  • リスケするなら返済を一旦0にする
    →例え金融機関から少しでも返してほしいと言われたとしても、”返済を一旦0円にする必要がある”という計画を作って、0円にしてもらうべきです。中途半端に返済して会社の命を縮めては、お互いにとってデメリットしかありません。金融機関が納得するような計画を出せば、「少しでも返してほしい」とは言われません。

(2)制度融資の利用を検討

仮に1年も経過していないのに追加融資が必要になった場合、別の融資制度を利用するという方法もあります。

考えられるのが、信用保証協会から保証を受ける制度融資です。これについては、日本政策金融公庫で融資が実行できなくて行く場合、可能性としては相当厳しいのは事実ですが、チャレンジしてみる価値はあります。

なお、1回目の融資で日本政策金融公庫から断れたあとに、制度融資で融資を受けるという事例はありますので、覚えておいた方が良いです。

5.返済完了から3年以内に行う方が良い

融資は会社ステージにより利用する金融機関が変わります。

創業初期は日本政策金融公庫は最も使いやすい金融機関であることは間違いないのですが、事業が安定するにつれ、民間の金融機関の方が金利や融資金額の面でマッチする場合が出てきます(ほとんどの中小企業は、継続して日本政策金融公庫と付き合うことになります)

民間金融機関も検討した上で、仮に日本政策金融公庫からの融資を返済後に、2回目の融資を日本政策金融公庫から受けたい場合には注意が必要です。

過去に日本政策金融公庫と取引があっても、融資を完済してから3年が経過すると、事業計画や取引データが消去されることになっています。過去の返済実績は日本政策金融公庫のデータ上は削除されますので、審査においては、借主側から一から説明する必要があります。

なお、本当の意味で日本政策金融公庫から卒業できる会社は、地方銀行やメガバンクからプロパーで融資を受けれるような会社だと考えますので、それに当てはまらなければ継続して付き合うことをオススメします。

6.上手くいかないことも想定して最初の融資額や創業計画書を策定する必要がある

2回目以降の融資を実施する場合、理由は大きく2つに分かれます。

事業が軌道に乗って、追加の運転資金や設備資金のために追加融資/新規融資を受けたい

この場合は、上手くいっている度合いにもよりますが、金融機関の方が貸したいと思うはずですので融資実行までの資金繰りにさえ注意すれば、心配はありません。

うまくいった結果である決算書を金融機関に持っていって説明をすれば、他に問題事項がなければ融資をしてもらえるはずです。

事業がうまくいかず、足りなくなった運転資金のために追加融資を受けたい

このような状況に、特に創業から1ー2年程度で陥ってしまうと、追加融資は大変厳しいです。選択肢としては、まず、4.に記載のリスケジュールを検討することになります。

こういった事態にならないようにするためには、最初に作成する創業計画書や調達額を無理のないものにしておく必要があります。創業計画書を1年以上かけてじっくり検討して、「これは行ける!」と思っても、それがその通りに行くことはなかなかありません。

対策としては、創業計画書について実行可能なある程度緩い数字にしておく、かつ、審査担当者が納得できそうなところを目指すことです。

創業当初は、計画よりも上手くいく方ももちろんいますが、圧倒的にうまくいかない方が多いのが現実です。それにも関わらず、計画通りにいってギリギリ資金が回る計画書を作ってしまうと、少しうまくいかないとすぐに資金ショートをしてしまいます。一方、返済が予定通りにできないような計画書だと、そもそも審査が通りません。バランスの良い計画書や調達額とする必要があります。

資金面での工夫は、例えば店舗型の事業であれば、立地を都心から郊外に移して初期費用や家賃を抑える、従業数を少し計画より減らしてご自身の手を動かす割合を増やしたり、家族に手伝ってもらうなどがあります。

理論上は融資額をギリギリにして利息の支払額を抑えるというのが正解ですし、それはその通りだと思います。しかし、起業のために何年も事業の経験を積み、自己資金も貯めて、ようやく始めた念願の事業が1年も経たずになくなってしまっては、元も子もありません。

事業を始めてすぐだと、長期間借入れが残るのが気持ちが悪いと感じる方も多くいらっしゃいますが、事業を成長させようとすれば融資による資金調達は不可欠です。融資を受け続けること、借入残高が残り続けることが当たり前だと気持ちを切り替えたほうが良いです。

「借りすぎたな、利息を払い過ぎだな」は贅沢な悩みで、倒産するよりはそうなった方がよっぽどいいです。創業融資は可能な限り多く、返済期日は長くしておくことが重要です。







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