「自己資金はないけど近い将来起業したい」人がすぐにやるべき2つのこと




資金調達して起業したい方がすぐにやるべきことは、ずばり「資金を貯めること」と「起業したい事業を決めて同業種での経験を積むこと」です。

「なんだ当たり前のことを、やっぱり資金は必要なのか」と思った方もいらっしゃるかもしれません。しかし、事業を始めるための資金を全てご自身で用意する必要はありません。必要な資金の一部だけ用意すれば良いのです。金融機関は事業の実績が全くない起業家に対して100%資金リスクを負うことを基本はしませんが、一部だけ起業家が用意すれば、足りない分を融資してくれます。

また、金融機関は、同業種の経験があったほうが起業の成功確率が高い(金融機関にとっては返済確率が高い)というデータを持っていますので、特に創業融資においては同業種の経験が非常に重視されます。”同業種の過去の実績・経歴=経営者の能力”と判断されるといっても過言ではありません。

今回は、この2条件について解説していきます。なお、本記事は創業融資を受けることを前提に話を進めます。エンジェル投資家やベンチャーキャピタルから投資してもらう場合は全く話が違いますので、ご注意ください。

1.創業融資の概要について理解しておく

本題に入る前に、創業融資の概要についてご説明します。

日本には「創業融資」という国が起業する人を支援するための好条件の融資制度があり、一定の条件を満たせばほとんどの人が申請することができます。この融資制度は、創業当初という一般的には金融機関にとって最もリスクが高い貸付先について、低金利、一定金額まで無担保無保証で融資を行う、起業家にとって大変有利な制度です。

また、審査を通る確率も50%前後(正確なデータについては公表されていません)と言われており、けっして低い確率でありません。

(詳しくは、日本政策金融公庫の新創業融資制度と東京都制度融資の創業融資の違い日本政策金融公庫の中小企業経営力強化資金のメリット・デメリットなどをご覧下さい。)

ここで注意すべき点があります。「腕のいい融資の専門家に立派な事業計画を書いてもらえば通すことができるだろう」と思われている方もいるかもしれませんが、それは誤解です。

創業融資については事業計画ももちろん重要なのですが、むしろ起業家自身の過去の経歴や経験、自己資金の大きさが一定程度ないと真剣に事業計画を見てもらう段階まで進むことができません。

以下の3つが審査の3大要素ですので、1番目の自己資金と2番目の経営者の能力(≒過去の同業種での実績)は、起業を決意した段階から要件を満たすように行動する必要があります。

項目 何を見るのか
自己資金 過去にどれだけ多くの資金を貯められたか
経営者の能力 経営者の過去の経歴・実績(+今後実施される面談)
事業計画 将来の事業計画の実現可能性(総資金は概ね1万千円程度まで)

(詳しくは、審査の3つのポイントをご覧下さい。)

2.今からでも遅くはないので資金を貯める

先ほど述べたとおり、必要な資金を全て用意する必要はありません。

(1)総資金の1/3以上を貯めるのが理想

大体の目安としては総資金の1/3以上を貯めるのが理想です。

創業融資においては、自己資金の2-3倍程度を受けることができる、言い方を変えると、自己資金は必創業資金総額の1/3程度を用意する必要があるということになります。

一方、自己資金要件の緩い制度もいくつか存在します。日本政策金融公庫の”新創業融資制度”であれば自己資金の9倍まで可能、税理士等と共同で申請する日本政策金融公庫の”中小企業経営力強化資金”であれ自己資金要件は特にありません。

ただし、過去の実績に目を引くものがあるなどの特殊な場合に限り、自己資金の何倍も借りるのは難しいと理解して頂いた方が良いと思います。(もちろん、制度がある以上は無理ではありません)基本的には制度上は自己資金の何倍も借りられるものがあるとしても、実質は自己資金の2-3倍程度であると認識しておいた方が良いです。

(2)理想の自己資金を貯めるためには?

仮に一年後に起業したいとお考えなら、”必要資金の1/3以上を貯める”ことを目標に行動をしていったほうが良いです。今までどおり生活していくととても無理だという場合は、①事業計画を総資金がよりもかからないものに修正する、②生活を切り詰めて何とか1/3以上を貯める、のどちらかもしくは両方を行う必要があります。

(3)必要な総資金の考え方

ここで注意したいのが総資金の考え方ですが、「余裕を持ったものにする」ことが重要です。

理想としては、以下の2条件を満たすような金額が目安になります。

  • 総資金は初期投資(設備投資と初期の準備費用)+運転資金(ここでは、売上が全く上がらない場合でもかかる家賃や人件費等の費用)3ヶ月分
  • 売上を固く見積もったとしても、一番資金が底になるタイミングで、総資金1,000万円程度の事業なら100万円以上、総資金500万円程度の事業なら50万円以上の余裕がある資金繰り計画になるか

 

より詳しくは、自己資金ゼロで起業はできるのか?創業融資の現実は。。。日本政策金融公庫の自己資金のに関する5つの留意点もご覧下さい。

3.起業したい事業を決めて同業種で働き始める

創業融資を実施する日本政策金融公庫などの金融機関は、上述のとおり、同業種の経験があったほうが起業の成功確率が高い(金融機関にとっては返済確率が高い)というデータを持っています。

創業融資においては同業種の経験が非常に重視されます。計画書においても、経営者の略歴は別紙でまとめてアピールする必要があるほど重要な点です。繰り返しますが、”過去の実績・経歴=経営者の能力”と判断されると思ってい頂いて良いです。

サラリーマンをされている方で飲食店などで独立されたいと考えていらっしゃる方は、「創業融資を受ける」という観点からは、すぐに独立するよりもある程度の期間を飲食店での修行に当てられる方が良いです。修行をする場合、一般的に給料はサラリーマン時代よりも下がるでしょうから、当然個々の事情にもよりますが、2.で述べた自己資金はサラリーマン時代に貯めておくことが必要でしょう。

また、同業種での経験年数は6年程度は必要だという意見があります。これは、日本政策金融公庫の新創業融資制度の要件の一つに6年という記述があるからです。これについては、勤務要件以外でも申請者としての要件をクリアできますので、必ずしも6年は必要ないです。逆に、サラリーマンをやめて6年も修行が必要というのであれば、ほとんどの人があきらめてしまうでしょう。

日本政策金融公庫に提出することになる創業計画書においては経営者の略歴欄があります。まずは最終的にどのような記述が必要なのかをざっとご確認頂ければと思います。

まとめ

起業時に資金調達したいのであれば、どういった要件を満たせば資金調達できる可能性が高まるのかを事前に確認していただくことが重要です。

また、「全ての資金を自分で貯める」という考えもあります。しかし、①お金持ちの方で資金に困ることがない、②融資を受けるぐらいなら事業をたたむ、という方以外は創業融資を受けることをおすすめしています。なぜなら、創業融資で一度融資を受けておけば、次の融資を受けやすいからです。(借り入れは悪いことなのか?無借金経営のメリット・デメリットそもそも起業するときに創業融資は受けるべきなのか?をご参照ください)

「事業がうまくいかなくて必要になったら融資を受けよう」というのでは銀行は貸してくれない可能性が高いです。そうならないためにも、必要な借り入れは実施して、資金的な余裕は常に持っておくようにしましょう。







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