そもそも起業するときに創業融資は受けるべきなのか?




中小企業白書によると、経営者に創業・起業時に使った資金調達の手法のアンケートをとったところ(複数回答可能)、自己資金が9割程度、家族・親族の出資・融資が3割程度、日本政策金融公庫が2割程度、制度融資が2.5割程度、友人・知人の出資・融資が2.5割程度とのことです。
(ちなみにベンチャーキャピタルからの出資は1%もありませんでした。非常に狭き門です)

当サイトでは、起業時に日本政策金融公庫からの創業融資を受けることを積極的にオススメしていますが、そもそも起業時に融資は受けるべきなのでしょうか?それとも受けないべきなのでしょうか?

この記事では、本サイトがなぜ起業時に創業融資を積極的にオススメしているかを解説していきます。

1.起業時に創業融資を使うと、会社・事業の存続率が高まる

(1)日本政策金融公庫の調査結果

日本政策金融公庫、「新規開業パネル調査結果」というものを公表しています。概要は以下のとおりです。

  • 調査対象:2006年に起業・開業した日本政策金融公庫の取引先2,897社(不動産賃貸業を除く)を継続調査先としている
  • 調査時期:起業時から5年間に渡り毎年実施。回答数は初年度2,897社、最終年度1,359社。
  • 廃業の定義:
    ① 事業の継続を尋ねたアンケートの質問に「現在、事業を行っていない」と回答した企業
    ② アンケートの配付回収を委託した㈱帝国データバンクが現地調査などによって事業を行っていないことを確認した企業
    ③ 日本政策金融公庫の支店が事業を行っていないことを確認した企業

(2)起業時に日本政策金融公庫から創業融資を行った企業の83.3%が存続

このアンケート等の調査の結果、日本政策金融公庫から融資を受けた企業は、起業から約5年経過後で、実に83.3%が存続しているとのことです。

正確なデータはありませんが、起業から5年もすれば4-5割程度は廃業しているのが、日本の平均だと思います。このデータは、明らかに起業時に創業融資を受けたほうが存続率が上がることを示しています。

2.起業時に創業融資を受けるとなぜ存続率が上がるのか?

日本政策金融公庫から創業融資を受けると、なぜ存続率が上がるのでしょうか?私は以下の4つであると考えています。

(1)起業時から資金的な余裕ができるから

起業時に自己資金にプラスして創業融資を受けることができれば、資金に余裕を持ってスタートすることができます。

同調査によると、起業の初年度に赤字であった会社が39.1%(次年度の赤字は26.8%)とのことで、例え赤字であっても資金に余裕があったため、存続することができています。

また、別の調査の2015年度新規開業実態調査によると、開業後の予想月商達成率は2015年度の調査で、全体の11.5%の予想月商達成率が50%未満、全体の19.2%の予想月商達成率が50-75%、全体の19.8%の予想月商達成率が100%未満ということで、約半分が当初の計画通りの売上が達成できていません。計画通りに事業が進まないことを前提に資金を備えておくこと必要です。

(2)日本政策金融公庫の審査をパス出来るだけの能力が起業時にあったから

日本政策金融公庫から客観的に認められるような事業計画を作成する能力があったということです。

なお、審査を通した方は、ご自分だけで計画を作ったという方は少数で、専門家などからアドバイスや支援を受けている方が多いとは思います。

これは非常に重要で、自分でやろうが他人に手伝ってもらおうが、「日本政策金融公庫の審査を通す」という目的を達成できれば、会社としてはそれで良いわけです。事業は一人ではできませんので、目的を達成するためにはいろいろな人の力をうまく使い・借りる必要があるわけで、起業時にその能力が経営者の方にあったということです。

(3)起業前後で事業内容そのものや事業計画をブラッシュアップできたから

経営者自ら事業計画の作成を進めることで、事業内容そのものや計画のブラッシュアップができ、事業の準備をより具体的に進めることができます。専門家などからアドバイスや支援を受ける場合もあると思いますが、丸投げはせず、まずはご自分の頭で考えることが非常に重要ですので、ベースはご自分で作る必要があることを強く意識していただきたいです。

起業前に、事業計画もしくはご自身の商品やサービスを他者から評価してもらうことは非常に重要で、「本当に売れそうか、本当に作れそうか、本当に儲かりそうか」の客観的な意見を聞くことは起業前にやっておくべきことです。

どんなに優秀な方でも、特に潜在顧客からのヒアリングやテストマーケティングなどは必ず行っています。その結果を事業計画という紙に落とし込み、数字にも反映し儲かる事業になっていくるか確認し、足りなかっらまたヒアリングなどを行い、そしてまた数字に反映する、ということを繰り返すほど良い事業・良い事業計画になっていきます。

最後の1つが、以下の通り資金調達力が高まるからです。

3.起業時に創業融資を受けるとその後の資金調達力が高まる

(1)融資は受け続けたほうが良いし、受け続けるのが当然

事業を成功させるには、資金調達は非常に重要な課題の一つです。

資金調達は、起業時だけではなく、多くの場面で必要になります。大口の得意先が倒産して資金が回収できなくなったとき、売上が一時的に低迷してしまったとき、事業拡大のために新たに設備投資が必要になったとき、人員増加・広告宣伝費の増加が必要になったときなどです。

プライベートでは借金は特殊な場合だけ、もしくは、ネガティブなイメージがあるかもしれませんが、会社を継続・成長させるなら「融資は受け続けるのが当たり前」と頭を切り替える必要があります。例外は、一部の資本効率の良い超高収益企業、フリーランス業などの投資が必要のない事業ぐらいです。

(2)倒産の理由は、借入するからではなくキャッシュがなくなるから

「借り入れさえなければ倒産しなかった」とおっしゃる方がいらっしゃる方がいますが、そうではありません。「キャッシュがなくなったから倒産する」のです。もちろん本業があってこそですが、資金調達の強い会社は現預金の水準が高く倒産しにくい会社です。

(3)起業時から融資を受けることにより、資金調達のノウハウが身につく

事業計画を作り、金融機関の担当者に説明をし、関連書類を作成して契約をする、というのは、専門家を利用したとしても初めてやるのは中々ハードルが高いものです。

このノウハウはいざという時のためになるべく早く身につけておくべきです。ノウハウは具体的には以下のとおりです。

  • どこの金融機関にどういうルートで相談するべきか
  • 事業計画はどうやって作成すべきか、融資を受ける際にどのような資料が必要なのか
  • 面談での説明のポイントは何なのか(売上計画の根拠や、資金使途はどのように説明すればよいのか)
  • 融資の利率や期間などの相場観や条件交渉の仕方
  • 銀行員との付き合い方
  • 資金調達に関する専門家の使い方、専門家の能力の見極め方

(4)起業時から融資を受けることにより、実績ができる

金融機関は創業後に数年間融資を受けていない会社に、いきなり融資をしてほしいと頼まれると慎重になるものです。(1)で説明したとおり、何年も事業をやっていて無借金の会社は稀です。

「何か問題があって融資を受けれなかったのではないか、決算書は金融機関から一度もチェックされたことがないわけだし粉飾していないか心配だ」などの印象を持たれてしまう可能性があります。

一度融資を受けて期限通りに完済した実績があれば、他の金融機関からも借りやすくなります。

(5)起業時から融資を受けることで資金調達力が高まることはデータで示されている

「新規開業パネル調査結果」によると、創業時の借入残高の平均が828万円、その5年後の2010年の借入残高の平均が1,272万円ということで、継続的に資金調達ができていることを示しています。

ちなみに、創業時の借入残高の828万円のうち日本政策金融公庫が560万円(67.6%)、2010年の借入残高の1,272万円うち日本政策金融公庫が498万円(39.1%)と、日本政策金融公庫から民間金融機関にシフトして行っていることがわかります。

4.まとめ

創業融資を受けた会社の方が存続するということは、客観的なデータがそれを示しています。

「自己資金だけでなんとかやっていけるだろうし、利息を払うのはもったいないな」という気持ちはよくわかりますが、いざという時のため、将来の成長のために創業融資は検討すべきです。







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