事業融資を受けるにあたって、個人事業主は法人と比較しての有利不利はあるのか?




事業を経営されている方は様々な悩みをお持ちですが、資金繰りは最も悩まされるものの一つです。

安定的なキャッシュフローを生み出している大企業であれば条件の良い借入先の中から選べる立場になりますが、個人事業主や中小企業は選べる金融機関は限定的であり、審査のハードルも高くなります。

融資の審査に関しては、個人だから法人だからといった要因でハードルが高くなるわけではなく、「事業の実績が乏しいから、もしくは、安定してキャッシュフローを生み出せていないから」が厳しくなる理由です。

個人事業主が、融資を獲得するポイントを解説します。

1.金融機関の選定

実績がまだ出ていない創業初期の個人事業主が借入をできる金融機関は限定的です。借入できる可能性がある金融機関・制度を見ていきます。

(1)日本政策金融公庫

日本政策金融公庫は、中小企業・個人事業主向けに、300万円~3,000万円程度の小口の融資を専門とする金融機関です。

政府系の金融機関で、開業数・開業率を増やすという国の政策に沿って、民間の金融機関よりもリスクを取って融資を行うことができます。

創業当初はまず日本政策金融公庫を検討することをオススメします。主なメリットは以下のとおりです。

  • 創業融資に積極的。事業の実績がなくとも融資を検討してもらえる
    →民間金融機関で信用保証協会も保証がなければ融資はしてもらえませんが、日本政策金融公庫であれば検討してもらえます。ただし、日本政策金融公庫としてはリスクを取るわけですから、融資を受ける側としても創業計画書をしっかりと作り、自己資金の要件をクリアする必要があります。
  • 無担保無保証の制度が用意されている
    →一般的な中小企業向けの融資には担保や保証を求められますが、日本政策金融公庫には無担保無保証の制度があります。担保については、無担保とは?無保証とは?日本政策金融公庫の「新創業融資制度」が有利な理由をご覧下さい。
  • 金利が低く、返済期間が長い
    →融資制度の種類・資金使途・返済期間・担保や保証人の有無などによって異なりますが、年利率が約1.5%~4.0%の範囲内で設定されています。また、民間金融機関に比べて返済期間が長く(=1月当たりの返済額が小さい)、据置期間(融資実行後の一定期間だけ返済がない期間)があるものがあります。
  • 審査期間が短い
    →審査自体は申し込みから1ヶ月未満で終わります。ただし、創業計画書の作成は時間がかかるものですので、事前に作っておく必要があります。

(2)制度融資

信用保証協会が他の金融機関と協調して融資をすることを、制度融資と呼びます。

制度融資は、各都道府県、金融機関、信用保証協会の3者が協調して融資を行います。それぞれの役割は以下のとおりです。

制度融資における各機関の役割
都道府県 一定の資金を金融機関に預託し、これを融資の原資の一部にする
信用保証協会  金融機関の融資について保証する。返済不能となった場合に代位返済する
金融機関  企業に融資を実行する

主なメリットは以下のとおりです。

  • 利子や保証料の補助がある
    →制度融資を利用する場合には、利子に加えて信用保証協会に保証料を支払う必要があります。市区町村の制度融資を利用すれば、かなりの補助を受けることができ、利子や保証料を合わせて実質1%程度になることもあります。これは、日本政策金融公庫よりも安いです。
  • 返済期間が長い
    →実質的には、日本政策金融公庫と同程度の返済期間の設定が可能です。

一方で、デメリットは以下のとおりです。

  • 日本政策金融公庫に比較して、対応が厳しい
    →担当者によりますが、民間企業の金融機関も審査を行いますので、日本政策金融公庫に比較すると対応が厳しい場合が多いです。
  • 社長の保証は要求される
    →原則として、社長は保証人になる必要があります。ただし、連帯保証人は不要です。
  • 審査期間が日本政策金融公庫に比べれば長い
    →全ての審査が終わるまで、1-3ヶ月程度はかかります。

2.個人事業主と法人で違うのか?

融資が受けるれるかどうかという観点では、個人事業主であっても法人であっても、実は変わりません。

融資の審査においては、個人事業主か法人かという事業の母体ではなく、(経営者のやる気・能力も含めた)事業の中身で判断します。一部の企業では、取引先が法人かどうかを取引をするうえでの信用調査項目にいれているところもありますが、融資においては関係ありません。

昔は、株式会社が1千万円、有限会社が3百万円の資本金が設立時に必要でしたので、数量的な自己資金の大きさや信用力・経営者のやる気を測ることができていましたが、今は1円でも設立できてしまいますので関係がありません。

会社を設立するかしないかは、節税をしたい、ベンチャーキャピタルから出資を受けたい、などの別の観点から検討する必要があります。詳しくは個人事業主との違いから見る法人化の4つのメリットと2つのデメリットなどをご覧下さい。

3.融資を受けるうえでの重要なことは?

結局のところ融資を受ける上で重要な3大要素は、以下の3つです。

  • 経営者の能力
    →過去の同業種での勤務経験・実績、面談での印象や説明能力で判断されます。
  • 事業計画(創業時は創業計画書)
    →事業計画書・創業計画書の内容で判断されます。詳しくは、
  • 自己資金の大きさ
    →自己資金は大きければ大きいほど良いです。おおよそ自己資金の2-3倍程度の融資を受けることが可能とお考え下さい。

詳しくは、日本政策金融公庫の融資を通すための審査の基準と3つのポイントをご覧下さい。

4.まとめ

融資を受けるにあたっては、個人事業主でも法人でも有利不利はないと言って良いです。

将来融資をうけて起業をしたいという方は、①将来やる予定の事業についてサラリーマンとして経験を積んでおく、②事業プランを練っておく(事業計画としてアウトプットしておくとなお良いです)、③自己資金を増やすため貯金をする(具体的な目安は総資金の1/3程度)を今からやっておくほうが良いです。

資金がないと事業のスタートラインにすら立てないため、準備期間中にやるべきことはしっかりとやっておく必要があります。







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