日本政策金融公庫の融資を通すための審査の基準と3つのポイント

金融機関に融資を申し込むと審査というものがあることは皆さんご存知だと思います。創業融資は、全ての方が融資を受けられるわけではなく、カードローンやクレジットカード作成と同様に審査が必要になります。

審査とは、金融機関が融資の可否を検討するためのプロセスです。事業には対処すべき様々な課題があるわけですが、創業初期の最も大きな課題の一つがこの創業融資の審査を通すことです。

今回は、審査はそもそもどのように行われるのかと、審査を通す上で重要な3つのポイントについて解説していきます。

1.日本政策金融公庫の創業融資の審査の体制

まずは、日本政策金融公庫の創業融資がどのようなプロセスで行われていくのかを見ていきます。

(1)日本政策金融公庫の審査の担当は複数ではなく一人で実施

日本政策金融公庫では、融資は一人の職員が担当することになります。

複数の多数決で審査が行われるなら、例え誰か一人が反対しても審査が通るわけです。しかし、日本政策金融公庫の審査は一人で行います。

すなわち、まずは目の前の担当者をいかに説得するのか、いかに担当者に「この会社・事業は大丈夫そうだ。融資しよう」と信じさせるかが重要です。

(2)創業融資の担当者は創業計画書などを見て面談を実施

日本政策金融公庫の融資の担当者は、融資の申込者から提出された創業計画書などをみて、面談によるヒアリング審査を実施します。

そして、担当者が計画書や面談を通して、その会社・事業に融資すべきかの判断材料や結論をまとめた「稟議書」を提出して上司に回します。稟議書には、その会社に融資をすべきか・しないべきかの結論も書かれれることになっています。

(3)日本政策金融公庫の担当者は稟議書を書くが、その上司が審査の決裁権者

日本政策金融公庫の融資の担当者は融資すべきかの結論を付した稟議書までは書きますが、決定権を持っているわけではなりません。

最終的には、その担当者の上司が「稟議書」を見て融資をすべきかどうかを決定します。決裁権者は通常はその支店の支店長ですが、内容や金額によっては本店の審査部門になることがあります。

支店内で決裁する場合、融資の担当者の上司である融資課長や支店長が稟議書を見たり担当者と議論をしたりして、OKが出れば融資が実行されることになります。

(4)審査の結果、担当者の書いた稟議書の結論は変わる場合もある

日本政策金融公庫の審査では、融資するかしないかの最終的な判断が出される過程では、担当者の最初に書いた稟議書の結論が変わる場合があります。

ですので、「あの日本政策金融公庫の担当者がハズレだった」ということで、融資を受けることができなかったり、逆に融資すべきではないのにしてしまったということがないように、審査が担保されていると言えます。

決裁権者は融資申込者に会ってもいないのになぜ結論を変えることができるのでしょうか?何を根拠に変えているのでしょうか?それは、創業計画書や自己資金の大きさなど、担当者の意見とは関係のないところで、判断しているからです。

誰が担当者であったとしても、融資審査の際に提出する創業計画書や自己資金の大きさなどは決裁権者も見ることになっているわけですから、融資担当者に会って説得するだけではなく、会うことのできない決裁権者を説得するためにも、特に創業計画書をきっちりと作成することが重要です。

2.日本政策金融公庫の審査が通る確率はどの程度なのか?

ネットで調べると様々な情報があり、人によっては2-3割程度だと言ったり、自分が支援をすればほぼ100%通ると言っている専門家の方もいます。

(1)日本政策金融公庫においては、平均すると5-6割程度が審査をパスする

日本政策金融公庫で実際に創業融資の審査を担当した方の話によると、平均で5-6割程度なのだそうです。これは、何か試験のように相対的な評価で目標のパーセンテージがあるわけもなく、絶対的な基準があるわけでもありません。「この会社・事業にお金を貸したら、返済してくれそうか」という基準で決めています。

(2)ほとんどの人が審査の当落線上

創業融資の審査を担当した方の話によると、上位10%は誰が見ても明らかに融資すべき、下位10%は誰が見ても明らかに融資すべきではない、のだそうです。逆に言うと、残りの80%の人は、融資を受けれるかどうかの当落線上にいるわけで、審査のプロセスをうまくやれば融資が通るし、審査のプロセスをうまくやれなければ融資が通らないということになります。

3.日本政策金融公庫の創業融資の審査に明確な基準はない

創業融資に関しては、「チェックリストのようなものがあって、そのうち何%をクリアしていれば審査を通す」というようなものではなく、個別総合的に判断して決めることになっています。つまり明確な基準は存在しないのです。

決算書が何年分かある会社であれば、それを分析して融資することは可能です(民間金融機関のプロパー融資などはその手法で行っています。よって、その手法を使えない創業融資は基本取り扱っていません。)

ところが、創業融資の申込者に関しては、何も実績がないため、数字的な分析を行うことができません。現状では、審査に携わる人たちの経験や勘に基づいた個別総合判断で融資の可否が決まっています。

これは、いい加減に決められているように思うかもしれませんが、少なくとも60年以上この制度が続いているわけですので、そういうことはないと言えます。

貸倒率が高すぎれば税金の無駄だと批判を受けますし、融資審査に慎重になりすぎて貸倒率が低すぎれば「民間金融機関が担うことができないリスクの高い領域を担うという日本政策金融公庫の存在意義」がなくなってしまいます。この2つバランスを60年上手くとり続けて組織として存続しているわけですから、審査はそれなりに機能していると言えるのではないでしょうか。

4.日本政策金融公庫の審査で3つのポイントは何を見られるのか

では、日本政策金融公庫の「個別総合的な判断」はどのように行われているのでしょうか?私は、以下のとおりと考えています。

項目 何を見るのか
経営者の能力 経営者の過去の経歴・実績+今後実施される面談
事業計画 将来の事業計画の実現可能性
自己資金 過去にどれだけ多くの資金を貯められたか

ご覧頂くとわかりますが、青字は将来、赤字は過去についてです。

半分は赤字、つまり過去ですので、これからすぐに創業融資を獲得しようと努力しようとしても、融資審査の可否の要素の半分は既に決まってしまっています。

ただし、面談や事業計画は非常に重視されますし、審査は総合的に判断されるため、過去に実績がなくても、(自己資金が全くない、過去の職歴と全く関係ない事業を始めるなどでなければ)完全にあきらめる必要はありません。

以下では、各項目について見ていきます。

5.経営者の能力

これらは日本政策金融公庫の創業計画書で書くべき項目と一致しています。ですので、審査の過程で作成する創業計画書は単なるフォーマットではなく、銀行側は創業計画書に書かれている内容や審査面談での説明により経営者の能力を測っています。

(1)過去の事業の経験・実績

一部の融資制度では、経営者の同業種での経験年数を条件にしているものもあります。

これは、起業しようとしている事業に詳しかったり、経験があったり、実績を出している方が、将来借入れた額をきちんと返済してくれる可能性が高いと判断されるためです。実際のところは全くの業界未経験者が成功する例もありますが、事業をしようとしている業界の経験者でなければ、日本政策金融公庫の創業融資の審査を通すことはなかなか難しいです。

始めようとしている事業や業界に詳しく、実績もあることをアピールする必要があります。

(2)創業の動機

なぜ創業しようと思ったかの理由です。

これは、ご自身の過去の体験や、前の会社でチャンスを見い出したとすると、非常に説得力があります。「単に儲かりそうだからやってみたい」というのでは、「ではなぜあなたがやる必要があるのですか?」と日本政策金融公庫の審査担当者は感じてしまい、説得力がありません。

ご自身の体験や経験から独自の洞察を発見したことや独自のニーズを見い出したことなどをアピールする必要があります。

(3)事業に対するスタンス(事業や計画書の説明能力)

事業をどのように成功させようとしているかの考えや姿勢です。

日本政策金融公庫の創業計画書では、将来きっちりと返済する計画であるということを数字的に説明する必要がある一方で、数字の組立だけにとらわれては説得力がありません。数字の計画は、結局のところは当初の想定通りにいくことはほとんどありませんので、銀行側としても「計画通りにいかないのはわかっているけど、最終的にこの人は貸したお金を返してくれるのか」を審査しています。

これについては、ご自身の強みや課題を認識できておりそれを活かそう解決しようという計画になっている、無駄なこと(お客さんに見えないところ)にお金を使うつもりはない、想定よりもうまくいかなかった時のプランも考えておき面談で聞かれたら答えられるようにするなど、ご自身に分析力や考える力があること、事業に対する堅実な姿勢、何かが起きても対応できる実行力があること、などを審査担当者にアピールする必要があります。

6.事業計画(創業計画書)

事業計画(創業計画書)は日本政策金融公庫の創業計画書の書き方・記入例。創業の動機などの重要ポイントを解説で詳細を書いていますので、ここでは審査を通すための概要を説明します。

大前提は、「借入れた金額が返済できる計画になっているか?」です。以下は、創業時に返済期間5年で1,000万円の借入を行う前提の資金繰りの簡単なシミュレーションです。

(1)返済期間が終わった時点で預金がプラスになっているか

”返済期間が終わった時点で預金がプラスになっている=借入を返済出来るだけの資金を事業で生み出している”ということが言えますので、返済期間が終わった時点で預金がマイナスになるような計画であれば、修正する必要があります。

1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
A:借入額 1,000
B:税引後利益 0 50 100 150 150
C:減価償却費 160 160 160 160 160
D:返済原資(B+C) 160 210 260 310 310
E:設備投資額 800
F:返済額 200 200 200 200 200
期末預金残高(A+D-E-F) 100 110 170 280 390

(2)各項目(特に売上)が合理的な根拠を持っているか

審査を通す上では、事業計画の各項目は、単なるあてずっぽうな数字ではなく、合理的な根拠が必要となります。

例えば売上であれば、簡単にいうと売上単価×数量で計算されます。

売上単価は、競合の単価が調べられており、比較すると同程度か低いか高いか、それはどのような戦略に基づいているのか、数量は、市場分析ができていて、市場全体ではどのぐらいの数量が売れているのか、直接の競合は何社ぐらいいて何%ぐらいのシェアを取るのか、そのシェアを取るための戦略や取れる根拠は何なのか、といったことを説明できるようにします。

日本政策金融公庫の審査においては、爆発的に伸びるような数字よりも、納得しやすい合理的な数字が好まれる傾向にあります。

7.自己資金

事業を始めるにあたって百万円単位の資金が必要であれば、自己資金は必ず必要になります。これは、日本政策金融公庫でも制度融資であっても同様です。

自己資金の目安は「日本政策金融公庫の創業計画Q&A」が参考になります。このQ&Aによると、創業資金総額に占める自己資金の割合は平均で27%となっています。これは、あくまで調査上の平均値なのですが、実態として日本政策金融公庫がどのぐらいの割合を出すのかに近いです。

これによると、融資は自己資金の2-3倍程度を受けることができる、言い方を変えると、自己資金は必創業資金総額の1/3程度を用意する必要があるということになります。これは、新創業融資であれ、新開業資金であれ、中小企業経営力強化資金であれ、基本的には同じです。

どうしても目標額に達しないのであれば、もう少しサラリーマンを続けて貯金をする、事業の規模を当初の想定よりも小さくして実績が出た段階でもう一度融資を受ける、といった選択肢を考えることになります。

詳しくは、自己資金ゼロで起業はできるのか?創業融資の現実は。。。日本政策金融公庫の自己資金のに関する5つの留意点をご覧下さい。

8.まとめ

日本政策金融公庫などの創業融資の審査を通すための3つのポイントを解説しました。

半分は過去の実績や自己資金で決まってしまいますが、面談や事業計画は非常に重視されますし総合的に判断されるため、過去に実績がなくてもあきらめる必要はありません。事業計画や面談の準備をしましょう。







コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です