自己資金ゼロで起業はできるのか?創業融資の現実は。。。

創業融資を獲得するには、「経営者能力」、「自己資金」、「事業計画の実現性」の3つが最も重要になります。

その3大要素のうちの1つである自己資金が欠けていても融資が可能なのでしょうか?自己資金の定義、自己資金により融資の審査や融資限度額がどう変わるかを説明します。

1.自己資金の定義は?

(1)自己資金の要件は?

経営者自身が用意した事業のための資金になります。自己資金は以下の2つの要件を満たす必要があります。

①経営者自身が貯めた資金であること

親や親戚・友人から借入れた資金は自己資金として認められません。

また、借りるのではなく支援してもらった(贈与してもらった)資金については、自己資金として認められない可能性があります。審査をする立場からは、経営者の資質として”起業に向けて資金を用意する意志や能力があるのか”を見極めるためです。ただし、全く認められないということでありませんので、きちんと説明する必要があります。((3)を参照)

②①を通帳などで客観的に確認可能であること

審査する際には通帳の写しの提出を求められます。そこで毎月の給与やボーナスからご自分の貯金をされているかをチェックされます。タンス預金をされている方は、銀行預金に切り替えてください。

また、見せ金と言って創業時に一時的にお金を引っ張ってきて、融資が降りたら返すという手口もあり、それを防ぐため、「いつ誰から入金されたのか」は必ず確認されます。

(2)個人と法人の自己資金の定義

①個人の場合の自己資金とは?

個人の場合は、(1)①、②の要件を満たす事業のために使うことのできる資金を自己資金といいます。

②法人の場合の自己資金とは?

法人の場合は、基本的には登記上の資本金の金額になります。ただし、資本金となった金額については、個人の場合と同様に(1)①、②が満たしているかがチェックされます。

(3)親や親戚からの支援は、贈与契約を締結する

親や親戚からの支援は、贈与契約書を作成し、締結しておきましょう。

通帳上、他人からの多額の入金があると必ず審査で聞かれますので、それが借入ではなく贈与(すなわち返す必要がなく、全額を事業で使える)であることを説明できるようにしましょう。

なお、贈与契約書があってもそれだけで良いというわけではなく、あくまで補完するものです。やはり親や親戚との関係上、形式的に贈与契約書があっても返さなければいけない可能性がありますので、自己資金として認められない場合があります。

返す必要がない資金であることをきちんと説明する必要があります。

(4)制度融資では自己資金に関する規定がある

東京都の制度融資では、自己資金について以下の規定があります。

①制度融資の自己資金の金額に関する規定

個人事業として借り入れる場合には、住宅ローンの2年分は差し引かれることになります。

自己資金=(1)-(2)

(1)創業しようとする者が事業に充てるために用意した次のアからカまでの合計額

  • ア 残高の確認できる預貯金
  • イ 客観的に評価が可能な有価証券に保証協会の定める評価率を乗じたもの
  • ウ 敷金、入居保証金
  • エ 資本金・出資金に充てる資金
  • オ 融資申込み前に導入した事業設備(不動産を除く。)
  • カ 客観的に評価が可能な資産(不動産を除く。)

(2)次のア及びイの合計額

  • ア 残存返済期間が2年以上ある住宅ローン、設備資金等長期返済を前提とする借入金の年間返済予定額の 2 年分
  • イ その他の借入金全額

②制度融資の自己資金の証明書類に関する規定

次の(1)から(7)に該当する自己資金を有する場合は、上記のほか、その金額等を確認できる 次の書類の写し(ただし、(4)の証明書及び書面については原本)

  • (1) 預金については、預金通帳又は預入日及び満期日が表示された証書等預金残高の推移が確認できるもの
  • (2) 有価証券については、取引通知書、計算書又は投資報告書等所有権の帰属が確認できるもの
  • (3) 敷金及び入居保証金については、賃貸借契約書及び預り証等の差入金額等の確認ができるもの
  • (4) 資本金又は出資金については、株式払込金保管証明書、出資払込金保管証明書又はその会社を代表す べき者が作成した発行価格の全額の払込みを受けたことを証明する旨を記載した書面に、「取引明細等払 込取扱機関が作成した書面」又は「払込取扱機関における口座の預金通帳の写し」を添付したもの
  • (5) 融資申込み前に導入した事業用設備については、領収書等支出した金額が確認できるもの
  • (6) 上記以外の自己資金で金額を確認できる客観的な証明書類
  • (7) 借入金については、返済予定表又は借入残高が確認できるもの及び借入の始期、終期が確認できるもの

2.自己資金を増やす方法

融資の審査に望む段階で手持ちの現預金がなくとも、自己資金をいくらか増やす方法があります。

(1)みなし自己資金で増やす

本来自己資金は手持ちの現預金のことをいいます。しかし、開業前に既に支払った事業のための支出がある場合については、その一部については自己資金として認められます。

例えば、飲食店や美容室における”敷金・保証金”、”店舗の設備費”です。審査を受ける段階で店舗の設備費について既に200万円支出していて、300万円が手元にあるならば、500万円が自己資金として認められます。

(2)現物出資で自己資金を増やす

これは、法人設立する場合にしか使えない方法です。

法人設立する前に車やパソコンなどを既に持っていて、それを会社の財産とするならば、資本金として認められます。

ただし、金額は総額で500万円以内にしないと手続きがかなり煩雑(税理士や会計士等の証明が必要)になるため、実質は500万円までしか使えません。

(3)出資者を増やして自己資金を増やす

出資者を増やし、共同創業の形を取れば(この場合は単に資金の出してではなく、役員として働いてもらうことを自己資金の要件とする場合もあります)、資金を増やすことができます。しかし、株を渡すことは会社を一部譲渡することと同じことですので、慎重に検討する必要があります。詳しくは、ベンチャーの資本政策作成の目的と具体的注意点・手法をご覧下さい。

3.日本政策金融公庫や制度融資の基準

(1)制度に定められた基準(形式基準)

各制度に定められた基準は以下のとおりです。

日本政策金融公庫の自己資金の基準
新創業融資制度 創業時において創業資金総額の10分の1以上
その他の融資制度 特に定めはない
制度融資の自己資金の基準
東京都 必須条件ではない(限度額に定めあり)
東京の各区 融資限度額を自己資金とするところが多い

日本政策金融公庫の”新創業融資制度”が自己資金の9倍が融資の限度額です。
東京の各区の”融資限度額を自己資金とする”とは、例えば300万円の自己資金を用意できれば、300万円が融資の限度額になるということです。東京都の制度融資の融資額は、自己資金に 1,000 万円を加えた額までという制限があります。

(2)実際の審査での基準(実質基準)

①日本政策金融公庫の場合、自己資金の目安は必創業資金総額の1/3程度

創業融資を獲得する成功要因は冒頭に記載のとおり主に3つありますので、自己資金がいくら必要かは一概には言えません。(もちろん、形式基準を満たす必要はあります。)

目安としては、「日本政策金融公庫の創業計画Q&A」が参考になります。このQ&Aによると、創業資金総額に占める自己資金の割合は平均で27%となっています。これは、あくまで調査上の平均値なのですが、実態として日本政策金融公庫がどのぐらいの割合を出すのかに近いと思います。

これによると、融資は自己資金の2-3倍程度を受けることができる、言い方を変えると、自己資金は必創業資金総額の1/3程度を用意する必要があるということになります。これは、新創業融資であれ、新開業資金であれ、中小企業経営力強化資金であれ、基本的には同じです。

自己資金額

②制度融資の場合は半分は自己資金である必要がある

東京の各区の制度融資は、上述のとおり、融資限度額を自己資金と同額としているところが多いです。これは自己資金を必須としない東京都制度融資も同程度と考えて良いと思います。

4.自己資本はやはり必要

結論から申し上げますと、やはり自己資金は必要です。

自己資金の貯金

自己資金0円でも借りれたという話はネットで調べると出てきますが、実際のところは聞いたことがありません。確率としては1%を切る程度だと思います。融資のコンサルタントも自己資金0円の方は支援できないと断るケースもよくあります。やはり、起業に向けた貯金は必要です。

一方、やりたい事業の種類によりますが、自己資金がほほない状態でのスタートも不可能ではありません。ITベンチャーで、最初はまとまった資金が不要な受託事業で資金を積み上げていき、資金や人材がそろった時に自社サービスを開発して成長する会社もあります。ただし、このやり方は、飲食店や美容室などの最初に設備が必要な事業では難しいです。

5.まとめ

事業を始めるにあたって百万円単位の資金が必要であれば、融資で調達するにしても審査を通すために自己資金は必ず必要になります。

どうしても目標額に達しないのであれば、もう少しサラリーマンを続けて貯金をする、事業の規模を当初の想定よりも小さくして実績が出た段階でもう一度融資を受ける、といった選択肢を考えることになります。







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