新規事業計画の取扱商品・サービス・セールスポイントの書き方

日本政策金融公庫 創業計画書 商品・サービス




「取扱商品・サービス」欄では、始めようとしている事業のビジネスモデルや強みをわかりやすく説明する必要があります。

記入欄は、「取扱商品・サービスの内容」と「セールスポイント」の2つしかありませんので、ビジネスモデル全体や強みを説明するのは簡単ではありません が、工夫次第では分かりやすく説明することができます。

重要なポイントは、強みや独自性を記載して競合優位性があるということを認識してもらうことです。

1.日本政策金融公庫の創業計画書の洋風居酒屋の記載例

日本政策金融公庫のホームページで紹介されているされている創業計画書の洋風居酒屋の記入例をご覧ください。上段が、「取扱商品・サービスの内容」、下段が、「セールスポイント」です。

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日本政策金融公庫の記入例をご覧になると、ランチも提供する居酒屋を始めることは理解できます。 一方で、「セールスポイント」に書いてある内容については、あまりインパクトがあるようには思えず、融資担当者は「自分も会社帰りに行ってみたい」とは思わないはずです。

このような記載では、融資担当者にとっては魅力的な事業として成り立つと思わせることはできない可能性が高いです。

2.創業計画書の取扱商品・サービスの内容の4つのポイント

では、以下のように記載を変えてみたらいかがでしょうか?日本政策金融公庫の記載例と比較すると、魅力的なお店に見えませんでしょうか。

取扱商品

①昼 日本海でその日に取れた魚を使った海鮮丼などを近隣の認知度を高めるため安く提供
客単価1,200円(売上シェア20%)

②夜 有機野菜と魚介類を中心にし、リーズナブルでありながら料亭の味を提供
客単価7,000円(売上シェア80%)

セールスポイント

  • 独自にルート開発した日本海から毎日直送される新鮮な魚介類と有機野菜を使った料理を提供。日本酒は全国各地の30種類を提供
  • 社長である料理長は都内有名料亭で7年間修行しており、リーズナブルでありながら手の込んだ料理を提供
  • 店内はカウンターがメインになっており、落ち着いて雰囲気で料理やお酒を楽しめる
なお、飲食店等のBtoCビジネスは当てはまらない場合が多いのですが、融資担当者は「見込み客がどれぐらい取れているのか?」ということを最も重視するといっても過言ではありません。もしそういったプラスポイントがあるのならば必ず記載すべきです。

見込み客の獲得は、商品・サービスのセールスポイントではありませんが、商品・サービスの魅力や集客力をアピールできることになります。さらに、日本政策金融公庫の創業計画書の「事業の見通し」の売上予測を裏付けることにもなります。

日本政策金融公庫の創業計画書の取扱商品・サービスポイントは以下の通りとなります。

(1) 創業計画書では誰に何を売るのかをわかるようにする

飲食店やエステサロンなどは明らかなため意識する必要はありません。

一方、IT関係など融資担当者にとって馴染みのない事業や説明が必要な事業はこの点をまずは明らかにします。専門用語は極力使わずにわかりやすく記載してください。

ターゲット顧客・販売チャネルをどうするかまで明らかにできればなお良いです。

(2)創業計画書では複数商品であっても主力商品は3つとする

これは計画上だけの話ではありません。創業当初はリソースは限られていますので、あまりにも多くの商品を並べるのは実際に難しいものですし、融資担当者にとっても「思いつきで書いているのではないか?」という印象を持ってしまいます。

(3)創業計画書では料金単価が分かるようにする

融資担当者がわかるように料金単価は必ず記載してください。

飲食店など提供する商品が多い場合は別途メニュー表を提出します。メニュー表だけではなく、目標とする平均単価を明記するとわかりやすくなります。

(4)創業計画書では商品やサービスの独自性を出す

可能な限り商品やサービスの特性を出すように心がけてください。

改善例のように、どこどこから当日仕入れて、とすると特徴的で美味しそうな料理をイメージできます。

全般的な強みや独自性をアピールするう工夫として、経営者の略歴と関連付けることがあります。「商品の仕入れルートは以前の会社の勤務時に築いた人脈から発掘した」「以前の会社のお客さんがついてきてくれる」などの記載があると日本政策金融公庫の融資担当者に「上手くいきそうだ」という印象を与えることができます。

3.創業計画書の「セールスポイント」の書き方

世の中には全く新しいビジネスモデルというものはほとんどありません。日本政策金融公庫の融資担当者は既存の事業において「いかに競合他社に勝てるのか」「独自性をもっていて、強みがあるのか」が成功するカギを握るというふうに考えています。このセールスポイントは、収支計画の売上の大きさの根拠の一つになりますので、大変重要な部分です。

以下の点を意識して記載していってください。

(1) 商品・サービス、ビジネスモデルの強みを表現する

次のような観点で魅力を語ると、日本政策金融公庫の融資担当者に「刺さりやすい」です。

  • 他の人や企業にはない商品やサービスを提供している
  • 適度な事業規模のあるニッチ市場を狙っている
  • 以前の職場で培ったスキルやノウハウを発揮できる
  • 独自の仕入れルートがある
  • 見込み顧客がいる
  • 特許などの独自の技術や知的財産を持っている、大学などと 共同開発している

(2) 客観的に数値を使って説明するようにする

融資申込者側からすると、つい主観的な表現になってしまいます。

キャッチコピーに形容詞が多すぎると、良い印象を与えません。「ハイクオリティーなサービス」「こだわりの料理」「最適なソリューション」などは悪くはないと思いますが、あまりにこういった表現が多すぎると良い印象を与えません。書くべき例を示すと以下の通りです。

  • 創業メンバー全員が10年以上の実績を持っている
  • 前職において売上を3倍に伸ばした実績を持っている
  • 実家で有機栽培を行っており、そこから仕入れられることができる
  • 今まで作ったWEBサイトはすべて月間〇〇PVを達成した、〇〇PV当たり1件の売上を達成している

(3) 顧客の目処がついている

「お客さんは起業してから探します」「なんとかなるはずです」では、融資担当者不安に思うものです。

日本政策金融公庫の融資担当者が最も恐れるのは、売り上げが全く上がらずに、早々に返済が滞ってしまうことです。すぐに黒字にならなくとも、顧客がある程度確保できていれば返済が滞ることは避けられるはずですので、担当者も安心して融資を実行できます。

実際の事業おいても、起業時に顧客を全く確保できていないという状態では事業が成功する可能性は低くなってしまいます。もちろん例外的な方はいらっしゃいますが、自分は特別だと思わずに準備を進めることをおすすめします。

BtoBビジネスにおいては、お客様を確保している、契約書している、発注書を入手している、などがあれば積極的に開示します。BtoCであっても、理美容業などで発注書などの客観的な証拠を示すことができませんが、「勤務していた時の指名リストが何人で何%程度は来てくださる見込みです」とすると説得力があります(強引な引き抜きは、以前の職場との関係やモラル上問題がありますので、以前の職場との関係は維持されるように行動された方が良いとは思います)

また、以前の勤務で「営業部に所属しており優秀な成績をだしていた」とすれば、売上を確保できる可能性が高いという判断をしてくれます。

(4)市場分析・競合分析はやるべき

市場分析や競合分析はやるべきです。事業を実際に成功させるためにも行うべきですし、行った方が融資の審査でも有利になります。

業種によりますが、それほど難しいことではありません。市場分析は、市場の大きさや成長性を分析します。例えば、A駅からF駅の間で単価7,000円の和食の店の出店を考えているとします。何を基準にA駅からF駅を選びますか?

色々な基準があると思いますが、市場分析的には以下のとおりです。

  • 駅周辺にどの程度の人数が住んでいるのか?そのうち店にくる可能性がある層は何%ぐらいか?
  • 駅周辺位どの程度の人数が働いているのか?そのうち店にくる可能性がある層は何%ぐらいか?

競合分析については、以下のとおりです。市場分析で調べた潜在顧客を取り合う相手がどの程度いて、強みや弱みを分析することです。

  • 単価7,000円の店は何件程度か?食べログなどで評価の高い店は多いのか?それぞれの強みや弱みは?
  • 和食の店は、何件程度か?
  • 来る可能性がある層の人数÷競合店舗はいくらか?競争率は高すぎないか?

私も飲食店の専門家ではありませんが、立地を考える上では色々な分析ができます。もちろん何階かとか、ビルの綺麗さも重要だと思いますし、さらには有名店になってしまえば、駅はさほど関係ないかもしれません。しかし、出店当初にお店に来るお客様は店の近くだと思いますので、どの駅の周辺で、どの立地にするかはとても重要だと考えます。

「飲食店で分析なんてばからしい」「圧倒的に美味しければ関係ない」。このような意見は否定しませんし、それはそれでおっしゃるとおりだと理解しているのですが、分析がしっかりできていると少なくとも融資担当者は経営者としての能力が高いと判断してくれます。

まとめ

日本政策金融公庫の創業計画書は、取扱商品・サービスだけでもポイントはかなりあります。

この箇所は無理に創業計画書内におさめようとせずに、別紙を使って説明してよいと思います。

自社の商品・サービスの特徴や強みは何なのかは、日本政策金融公庫の融資担当者に評価されるだけではなく、実際にお客様に選ばれる商品・サービスになっているのかを考える上でも重要です。じっくりと検討されてください。







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