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税務調査で外注費を給与と認定されないための4つのポイント

ソフトウェア業、美容室、飲食業等では、社員ではない方に経常的に仕事を「外注」することがよくあります。

この外注に対する支払いである「外注費」について、税務調査で「給与」と認定される場合があるので注意が必要です。その場合は、所得税の「源泉徴収漏れ」と、消費税の「消費税仕入税額控除過大」の2つ納税に加えて加算税等が発生していまいます。

1.「外注費」を「給与」と認定された場合の影響

「外注費」であるべきものを税調調査で「給与」と認定された場合には以下のような税額が発生します。

(1)源泉徴収税額

外注費の場合は、特定の支払先(具体的には弁護士や税理士等の専門家への支払等。詳しくは、国税庁HP:源泉徴収が必要な報酬・料金等とはをご参照ください)を除き、源泉徴収は不要です。

給与の支払い等で源泉徴収したものは原則翌月に納付しなければなりません。「外注費」として処理して源泉徴収分を納付しておらず、税務調査で「給与」と認定されてしまうと、源泉徴収漏れという扱いになり追徴課税されてしまいます。

金額は、仮に40万円を12ヶ月支払っていた場合は、1年分で約100万になります。

(2)消費税額

外注費として処理した場合には、消費税の納付額の計算上、外注費分を控除して計算します。

「外注費」としての処理を前提に消費税を納付し、税務調査で「給与」と認定されてしまうと、あるべき納付税額よりも少なく納付していたいたことになりますので、過少申告という扱いになり追徴課税されてしまいます。

金額は、40万円を12ヶ月支払っていて税率8%の場合、1年で約35万になります。

(3)延滞税、加算税の支払

(1)と(2)上記の追徴課税の納付に加えて、延滞税、過少申告加算税等も課税されます。

金額は、延滞税、過少申告加算税等を合わせると(1)と(2)の金額に20-30%程度加算されます。

(4)合計額

(1)ー(3)の合計額は、仮に3年分とすると、単純計算で5百万円近くになりますので、非常に影響は大きいです。

(なお、(1)の源泉徴収額は支払先から回収する権利はあります。ただし、取引が継続していないなどから、現実的に回収が難しいこともあります。)

2.「外注費」と「給与」はどうのように区分するのか

通達には、以下のような説明があります。

(1)外注費の定義

報酬が請負契約若しくはこれに準ずる契約に基づく対価

(2)給与の定義

報酬が雇用契約若しくはこれに準ずる契約に基づく対価

(3)実務上はどのように区分するのか

上記は、給与の定義に当てはまらなければ、外注費として処理して良いとも読み替えることができます。

注意点としては、雇用契約を結んでいなければ給与にならない、というわけではなく、「雇用契約に準ずるもの」も給与として処理しなければならないということです。

実質的にはどのように判断していくのかを見ていきます。

3.単に雇用契約のあるなしではなく、「総合勘案」により判定

民法上、「雇用」とは、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約するもの、「請負」とは、当事者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事の結果に対してその報酬を支払うことを約するものとされています。

報酬に係る所得区分が、契約によって判定できない場合には、平成21年12月17日付課個5-5「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて」で、次の事項を総合勘案して判定することとしています。

(1)代替性があるのか

通達には、”他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうか”とあります。

これは、代替性が高いほど外注費として認めらる可能性が高まり、依存性が高いほど給与とされる可能性が高まります。

(2) 時間的な拘束があるのか

通達には、”報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く。)を受けるかどうか”とあります。

これは、時間的拘束がなく時給計算がされない場合は外注費として認めらる可能性が高まり、時間的拘束が強く時給計算がされている場合は給与とされる可能性が高まります。

(3) 指揮監督下にあるか

通達には、”作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く。)を受けるかどうか”とあります。

これは、作業の具体的な指示がなければ(約束された成果を出してもらえればプロセスは問わない等)外注費として認めらる可能性が高まり、具体的な指示に従って作業をおこなっている場合は給与とされる可能性が高まります。

(4) 成果に責任があるか

通達には、”まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるかどうか”とあります。

これは、納品できない場合などに報酬の支払いを拒否できれば外注費として認めらる可能性が高まり、報酬の支払いを拒否できなければ給与とされる可能性が高まります。

(5) 材料・用具等が供与されているか

通達には、”材料又は用具等(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く。以下同じ。)を報酬の支払者から供与されているかどうか”とあります。

これは、材料又は用具等が支給されていなければ外注費として認めらる可能性が高まり、材料又は用具等が支給されていれば給与とされる可能性が高まります。

4.対策としては契約書や請求書の記載を気をつける

前提として、実態が雇用契約に準じていると明らかなものにも関わらず、契約書や請求書だけ外注費になるように整えるというのは、相手方にも合意してもらえないでしょうから無理があります。

実態として「外注費」という判断した場合には、税務調査で余計な指摘を受けないように契約書や請求書の記載を気をつけます。

①請負契約書に、働いた時間ではなく、完成したもに対して対価を払うことを明記する

②請負契約書に、時間的な拘束があるような記載はしない

②請求書には、時間×単価でいくらといった記載はせずに、~代でいくらといった記載にする

③支払日は従業員の給与日で合わせるのではなく、他の支払い先に合わせる

「外注」と「雇用」のビジネスリスク等の違いとは?

なお、雇用して「給与」を支払うと、様々な義務が発生しますので記載しておきます。雇用することによって、組織力が高まる・会社にノウハウが貯まる等の良い点がある一方で、初めて人を雇用するもしくは新たに人を雇用する場合にはリスクや事務コストが発生することになりますので、外注(一般には割高にはなります)で代替できないのかを一度考える必要があります。

(1)各種の規則の作成

人を雇用して給与を支払うと、様々な届出や規則の作成が必要となります。

(2)残業代の支払

労務管理や対策をきちんとしていないと、後々未払残業代の支払いが発生する可能性があります。スタートアップ・ベンチャーにおいては長時間労働となることも多いですが、規則をきちんと整備しておき、働いていただく方にもきちんと納得して頂いたうえでジョインしていただき、給与を支払う必要があります。

(3)簡単に解雇はできない

面接だけで、はなかなかその方を理解するのは難しいものです。日本の法律ではやめてほしくなっても解雇は難しいので、リスクを考える必要があります。

余談ですが、スタートアップ・ベンチャーの社長に「採用で何を重視するのか」と聞くと、9割の方が「スタートアップ・ベンチャーの文化を良く理解しておりそこで働く気概があるのか、性格的に合いそうか?」ということを重視しているそうで、能力はその次だそうです。私も能力よりも合う合わないという点を重視します。

5.まとめ

「外注費」について、税務調査で「給与」と認定されると追加で支払う税金は多額になります。

総合的に勘案するというあいまいな基準ですので、契約書や請求書の記載等、やれることは全てやっておいて給与と認定されないようにしておくことが重要です。

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