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ストックオプションによる課税と確定申告

ストックオプションは、その条件や時期によって発生する所得の種類が異なり、確定申告が必要なのか迷う場合も多いと思います。

今回は付与対象者に、いつ、いくら、何の所得が発生するかの観点から解説していきます。所得が発生する場合は、所属する会社で年末調整等してくれない限り、取引発生の翌年3月15日までに確定申告を行う必要があります。

1.付与時点の課税と確定申告

ストックオプション全般について、付与時点では課税されません。当然確定申告も不要です。

(正確には譲渡制限つきなどの条件が入りますが、それがクリアされるように設計されますので、付与対象者からの観点では気にする必要はないと思います。)

2.権利行使時の課税と確定申告

税制非適格オプションで行使時に課税される金額は、”(行使時の時価 ー 行使価格)× 数量” です。この税制非適格オプションには、いわゆる株式報酬型ストックオプション(1円ストックオプション)も含みます。

なお、税制適格ストックオプション・有償ストックオプションは行使時に課税されません。

ストックオプションの種類については、
「税率は約20%!税制適格ストックオプションの要件とは?」
ストックオプションの個人の税金。税制非適格の場合の最高税率は55%!
株式報酬型ストックオプション(権利行使価格1円)の税務と会計処理
有償ストックオプションのメリット・デメリットと税務
をご参照下さい。

種類 行使時の身分 所得の種類 確定申告
税制非適格 役員・従業員 給与所得 不要 ※1
付与時:役員・従業員
行使時:退職者(退職から10日程度以内)
退職所得/給与所得 必要 ※2
付与時:役員・従業員
行使時:退職者(退職から10日程度以降)
雑所得/給与所得 必要 ※2
第3者(業務に関連) 事業所得/雑所得 必要 ※3
第3者(業務に関連しない) 雑所得 必要 ※3
税制適格 役員・従業員 課税なし 不要
有償 問わない 課税なし 不要

※1 通常の給与は総額から源泉徴収分を差し引かれます。ストックオプションは、会社からの現金支給ではないため、対象者から会社に対して源泉徴収分を支払う必要があります。

※2 “現実に役員を退任/従業員を退職しなければ権利行使をすることができず、また、退任/退職後極めて短期間に一括して権利行使する”場合は、退職所得として認められます。
退職所得となった場合は、税額がかなり小さくなります。
詳しくは、
株式報酬型ストックオプション(権利行使価格1円)の税務と会計処理
権利行使期間が退職から10日間に限定されている新株予約権の権利行使益に係る所得区分について
をご覧下さい。
なお、行使が退職後であっても、職務等に関連して株式を取得する権利が与えられたと認められるときは給与所得して扱うことになります。
注意点として、退職後に当該権利の行使が行われた場合において、例えば、権利付与後短期間のうちに退職を予定している者に付与され、かつ、退職後長期間にわたって生じた株式の値上がり益に相当するものが主として供与されているなど、主として職務の遂行に関連を有しない利益が供与されていると認められるときは、雑所得とするとされています。
通常の退職金のみであれば、退職日が12/31日で会社が年末調整をしてくれる場合、確定申告が不要です。しかし、ストックオプションはその条件に該当することは想定されませんので、確定申告が必要になります。

※3 会社の役員・従業員以外の第3者は、事業所得または雑所得として他の所得も含めて確定申告する必要があります。

(株式等を取得する権利を与えられた場合の所得区分)
23~35共-6
(1)令第84条第2項第1号又は第2号に掲げる権利を与えられた取締役又は使用人がこれを行使した場合 給与所得とする。ただし、退職後に当該権利の行使が行われた場合において、例えば、権利付与後短期間のうちに退職を予定している者に付与され、かつ、退職後長期間にわたって生じた株式の値上り益に相当するものが主として供与されているなど、主として職務の遂行に関連を有しない利益が供与されていると認められるときは、雑所得とする。
(2)令第84条第2項第3号又は第4号に掲げる権利を与えられた者がこれを行使した場合発行法人と当該権利を与えられた者との関係等に応じ、それぞれ次による。
 イ 発行法人と権利を与えられた者との間の雇用契約又はこれに類する関係に基因して当該権利が与えられたと認められるとき(1)の取扱いに準ずる。
(注) 例えば、措置法第29条の2第1項((特定の取締役等が受ける新株予約権等の行使による株式の取得に係る経済的利益の非課税等))に規定する「取締役等」の関係については、雇用契約又はこれに類する関係に該当することに留意する。
ロ 権利を与えられた者の営む業務に関連して当該権利が与えられたと認められるとき 事業所得又は雑所得とする。
 ハ イ及びロ以外のとき原則として雑所得とする。
(3) 令第84条第2項第5号に掲げる権利を与えられた者がこれを行使した場合一時所得とする。 ただし、当該発行法人の役員又は使用人に対しその地位又は職務等に関連して株式を取得する権利が与えられたと認められるときは給与所得とし、これらの者の退職に基因して当該株式を取得する権利が与えられたと認められるときは退職所得とする。

(注) (1)及び(2)の取扱いは、発行法人が外国法人である場合においても同様であることに留意する。

3.売却時の課税と確定申告

課税される金額は、それぞれ異なります。税制非適格ストックオプションは売却額と行使時の時価の差額、税制適格ストックオプションと有償ストックオプションは売却額と購入に要した額の差額が課税金額となります。それぞれの金額を申告することになります。

種類 課税金額 所得の種類 確定申告
税制非適格 (売却価格 ー 行使時の時価)× 数量 譲渡所得 必要
税制適格 (売却価格 ー 行使価格)× 数量 譲渡所得 必要
有償 (売却価格 ー 購入価格)× 数量 譲渡所得 必要

(1)税制非適格ストックオプション及び有償ストックオプションの必要書類

必要書類については、通常の株式の売却時と同様になります。

詳しくは、「平成27年分株式等の譲渡所得等の申告のしかた(記載例)」をご覧下さい。

(2)税制適格ストックオプションの必要書類

通常の株式の売却時の添付書類に加えて、その売却した税制適格ストックオプションに係る新株予約権付与契約書の写しや「特定権利行使株式分がある場合の計算明細書」の添付をすることになります。

特定権利行使株式分がある場合の計算明細書は、「確定申告書等様式コーナー(株式等譲渡益課税関係)」のNO.6をご覧下さい。

4.まとめ

ストックオプションは種類が多く、個人の申告の必要性が大変わかりづらいです。申告漏れがないように気をつけてください。

以下の記事もぜひご覧下さい。

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