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無償ストックオプションの発行会社の仕訳・会計処理

今回は、無償ストックオプションを発行する会社の会計処理を紹介します。

未公開企業と(非上場企業)と公開企業では会計処理が異なりますので、注意が必要です。ブラックショールズなどの難しいオプション価値算定は、未公開企業では必要ありません。

1.未公開企業(非上場企業)の無償ストックオプション

未公開企業(株式譲渡を制限している会社。一般には、上場会社以外は株式譲渡を制限していますので、ここでは、未公開企業=非上場企業、公開企業=上場企業と考えて頂いて結構です)は、公開企業と会計処理が異なります。

(1)ストックオプション付与時点の会計処理

未公開企業は、ストックオプションの公正な評価単価(後述の公開企業では公正な評価単価による会計処理が求められています。)に代えて、その単位当たりの本源的価値の見積りによることも認められることされています。

ストック・オプションの本源的価値とは、算定時点においてストック・オプションが権利行使されると仮定した場合の価値であり、”付与時点の株価-行使価額”で計算されます。

税制適格ストックオプションの条件の一つに、付与時点の株価≦行使価格であることが挙げられていますので、本源的価値は0ということになります。本源的価値は0の場合は、仕訳の必要がありません。一方で、まれですが、付与時点の株価>行使価格の場合は仕訳が必要になります。

①税制適格ストックオプション(付与時点の株価≦行使価格)の付与時の会計処理

ストックオプションの付与を行った。この時の付与時点の株価は200,行使価格は200、対象勤務期間は2年(ストック・オプションと報酬関係にあるサービスの提供期間)であった。

借方 貸方
仕訳なし

②税制非適格ストックオプション(付与時点の株価>行使価格)の付与時の会計処理

ストックオプションの付与を行った。この時の付与時点の株価は200,行使価格は100、対象勤務期間は2年であった。

借方 貸方
株式報酬費用 50 新株予約権 50

※(付与時点の株価200-行使価格100)÷2年=50。翌年も同じ仕訳を計上します。

なお、税制非適格ストックオプションだから必ず付与時点で仕訳が必要というわけではなく、あくまで付与時点の株価>行使価格の場合に仕訳が必要です。また、税務上は費用として認められませんので、加算します。

(2)権利行使時の仕訳

①税制適格ストックオプションの権利行使時の会計処理

付与対象者が、ストックオプションの行使を行った。この時の行使価格は200であった。

借方 貸方
当座預金 200 資本金 100
資本準備金 100

②税制非適格ストックオプションの権利行使時の会計処理

付与対象者が、ストックオプションの行使を行った。(1)②の例のとおり、行使価格は100、”付与時点の株価200-行使価格100”で算定された計上済みの新株予約権は100であった。

借方 貸方
当座預金(※1) 100 資本金 100
新株予約権(※2) 100  資本準備金 100
当座預金(※3) ✖✖ 預り金 ✖✖

※1 行使価格100を付与対象者から払い込まれます。

※2 (1)②で計上した株式報酬費用分です。ここで税務上損金算入されるため減算します。

※3 付与対象者から、賞与と同様の扱いで”権利行使時の株価-行使価格”にかかる源泉徴収をする必要があります。

(3)権利行使者の売却時の仕訳

借方 貸方
仕訳なし

会社にとって、株主が変わらるだけですので、いずれも仕訳は必要ありません。

(4)権利失効時

①税制適格ストックオプションの権利失効時の会計処理

借方 貸方
仕訳なし

未公開企業の税制適格ストックオプションは、元々新株予約権勘定を計上していませんので、仕訳は必要がありません。
②税制非適格ストックオプションの権利失効時の会計処理

借方 貸方
新株予約権 50 新株予約権戻入益 50

(1)②で計上した新株予約権の権利が失効した場合は、「新株予約権」勘定から「新株予約権戻入益」(特別利益)勘定に振り替えます。

2.公開企業(上場企業)の無償ストックオプション

未公開企業との相違点は、大きくは、付与時点でストックオプションの公正な評価額を算定する必要があることです。

非上場の場合ですと、付与時点の時価=行使価格であれば、行使してすぐに売却したとしても利益はゼロで、かつ、自由に売れないわけですので、その時点の価値はないとみなされます。

一方で、上場企業は、付与時点の時価=行使価格であっても、株価は常に変動していて、場合によっては付与されてすぐに行使すれば1時間後に利益がでる可能性があるです。この1時間後に利益が出そうな価値をきちんと評価して、会計処理をしていくというのが、上場企業におけるストックオプションの考え方です。

公正な評価額を算定して費用処理していく以外は、未公開企業と大きく違いはありませんので、以下は税制適格ストックオプションを前提に仕訳を解説します。

(1)ストックオプション付与時点の会計処理

ストックオプションの付与を行った。付与時点の株価は200,行使価格は200、対象勤務期間は2年であった。なお、公正な評価額は500(公正な評価単価50×付与数10)であった。

借方 貸方
株式報酬費用 250 新株予約権 250

※公正な評価額500÷2年=250。翌年も同じ仕訳を計上します。

なお、公正な評価額の算定にあたっての公正な評価単価・付与数の留意点は以下のとおりです。

公正な評価単価:会計基準等においては、公正な評価単価の算定技法について特定の方法の採用を具体的に定めず、一般的な条件が示されています。よって、現在のやり方にとらわれず今後も進化していくものと考えられます。

付与数:付与した数全てではなく、権利不確定による失効の見積数を控除して算定します。

(2)権利行使時までに退職者が出た場合や条件変更した場合

権利行使時までに退職者が出た場合や条件変更した場合にそれに応じて単価や付与数を変更します。ただし、単価は原則は変更しないこととされ、行使価格を変更するなどの条件変更があった場合のみ変更します。

例えば退職者がでた場合は、最終的な株式報酬費用が、”公正な評価単価×退職者を除いた付与数”となるように対象期間で費用計上される株式報酬費用を変更させます。

(3)権利行使時の仕訳

付与対象者が、(1)の対象勤務期間後にストックオプションの10個分の行使を行った。

借方 貸方
当座預金 2,000 資本金 1,250
新株予約権 500 資本準備金 1,250

(4)権利行使者の売却時の仕訳

借方 貸方
仕訳なし

未公開企業の場合と同様です。

(5)権利失効時

対象勤務期間後に2名が退職した。退職者にかかる公正な評価単価50、付与数は2個であった

借方 貸方
新株予約権 100 新株予約権戻入益 100

未公開企業の場合と同様です。計上した新株予約権の権利が失効した場合は、「新株予約権」勘定から「新株予約権戻入益」(特別利益)勘定に振り替えます。

3.まとめ

今回は、無償ストックオプションを発行する会社の会計処理を紹介しました。

未公開企業と(非上場企業)と公開企業では、公正な評価額を算定するかしないかで処理が異なりますので、注意が必要です。

以下の記事もぜひご覧下さい。

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