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ストックオプションの個人の税金。税制非適格の場合の最高税率は55%!

ストックオプションは、上場を目指すベンチャー企業にとっては、従業員の経営参加意識を高める、業績向上のインセンティブになる、キャッシュアウトを伴わない報酬支給の手段になる、などのメリットがあり、大きな武器になります。

一方で、税制適格ストックオプションとなるように設計をしないと、税率が高くなり、充分なインセンティブになりません。

無償のストックオプションは、税制適格ストックオプションと税制非適格ストックオプションに区別されます。

上場を目指すベンチャー企業のストックオプション設計者向けに、それぞれについての税率・税金の納税時期について紹介します。

1.ストックオプションの流れ

前回までの記事にも書きましたが、以下が簡単な流れと例になります。

①ストックオプションの権利付与

→ここでは、付与時の株価が1株1万円、行使価格(将来いくらで株式を購入できるか)も1万円で、1,000株分を付与されたとします。

通常は、付与時の株価=行使価格となるように設計します。

②ストックオプションの権利行使

→会社が上場し、かつ、権利行使の条件が全てそろって、1,000株分全ての権利を行使したとします。

この時の株価は1株10万円です。

③株式売却

→権利行使により取得した株式1,000株分を全て売却したとします。この時の株価は1株12万円です。

ここでの付与対象者の利益金額は、(売却株価12万円-権利行使価格1万円)×1,000株=1.1億円!です。

では、この利益金額に対していくらの税金がいつかかるのかを見ていきます。

2.税制適格ストックオプション

(1)付与対象者個人の課税対象額と発生時期

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時期 課税対象額 所得の種類
①ストックオプションの権利付与時 課税なし
②ストックオプションの権利行使時 課税なし
③株式売却時 売却額-行使価格 譲渡所得

税制適格ストックオプションは、①、②では税金は発生しません。③の売却時点で初めて税金が発生します。また、所得の種類は譲渡所得となり、金額の大きさに関わらず20.42%で一定です。

(2)例の場合の税額

税制適格ストックオプションは、株式売却時点で初めて税金が発生します。

課税対象額:(12万円-1万円)×1,000株=11,000万円

税額:11,000万円×20.42%=22,462,000円

3.税制非適格ストックオプション

(1)付与対象者個人の課税対象額と発生時期

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時期 課税対象額 所得の種類
①ストックオプションの権利付与時 課税なし
②ストックオプションの権利行使時 行使時の株価-行使価格 給与所得等
③株式売却時 売却額-行使時の株価 譲渡所得

税制非適格ストックオプションは、①では税金は発生しませんが、②、③の権利行使時点と売却時点の2段階で発生します。

また、②の所得の種類は給与所得または退職所得となり、金額の大きさに応じて税率が上がって行きます。同じ年内で権利行使と売却を行わないとすると、権利行使にかかる税金が先行して発生しますので、その原資を別途用意する必要があります。

(2)例の場合の税額

①権利行使時の税額

税額は、所得税が最高で45%、住民税が10%になりますので、最高55%!となります。

課税対象額:(10万円-1万円)×1,000株=9,000万円

税額:所得税が9,000万円×45%-4,796,000円、住民税が9,000万円×10%で、合計が36,604,000円

※通常の給与収入が他にあると仮定し、給与所得控除は加味していません。また社会保険料控除も考慮していません。

なお、これは賞与として源泉徴収の対象となりますが、現金支給をされるわけではありませんので、支給時に支給総額から源泉徴収分が差し引かれて残額が振り込まれるということにはなりません。個人が源泉徴収税額相当額を会社に払い込むことになります。

②株式売却時の税額

課税対象額:(12万円-10万円)×1,000株=2,000万円

税額:2,000万円×20.42%=4,084,000円

売却した翌年3月15日までに確定申告し、納税する必要があります。なお、確定申告では、売却額・行使価額・取引が証明できる書類(上場していれば証券会社の取引明細、非上場であれば売約時の契約書、新株予約権原簿など)が必要です。

③税額の合計

36,604,000円+4,084,000円=40,688,000

まとめ

両者の差額は以下のとおりです。

税制適格ストックオプションの税額 22,462,000円
税制非適格ストックオプションの税額 40,688,000円
税額の差額 18,226,000円

行使価額によりますが、1億円近いような利益額になると2倍近く差がでてきます。

このように税金が全く違うため、要件を満たせば、実務上は税制適格ストックオプションとします。どうしてもできない場合は、有償ストックオプションなどの他のスキームを考えることになります。

以下の記事もぜひご覧下さい。

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