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税率は約20%!税制適格ストックオプションの要件とは?

税制適格ストックオプションに該当すれば、その利益金額に対する課税は売却時点まで繰り延べられることになります。また、利益金額は所得税法上の譲渡所得となり、税率は約20%で一定です。

一方、税制非適格ストックオプションとなった場合は、その利益金額に対する課税は権利行使時点(株式を購入した時点)と売却時点の2段階で発生し、仮に売却が遅れると権利行使にかかる税金だけが先行して発生してしまいます。また、権利行使にかかる利益金額は、所得税法上の給与所得か退職所得になりますので、最高税率が55%となり半分近くが税金となってしまいます。

よって、従業員にストックオプションを付与する場合、ほとんどは税制適格ストックオプションとなるように設計します。

以下の表は税制適格ストックオプションになるための要件の概要です。

ストックオプションの取得者の要件
1.付与対象者 自社か関連会社の取締役・従業員(監査役不可)
2.所有株式数 発行済株式の1/3を超えない
ストックオプションの発行内容・行使の要件
3.権利行使期間 付与決議日の2年後~10年後
4.権利行使価格 契約締結時の株価≦行使価格
5.権利行使価額の制限 権利行使価額が年間で1,200万円を超えない
6.譲渡制限 他人への譲渡禁止
7.発行形態 無償であること
ストックオプションのその他の要件
8.株式の交付 会社法に反しないこと
9.保管・管理など契約 証券会社等と契約していること(付与時は不要)
10.その他の事務手続 法定調書、権利者の書面等の提出

以下で各項目の詳細に解説します。

1.ストックオプションの付与対象者

(1)付与対象者

税制適格となるためには、付与対象は以下の者である必要があります。

  • 発行法人の取締役、執行役、または使用人(従業員)
  • 一定の関連会社の取締役、執行役、または使用人
  • 付与を受けたものである上記の相続人

(2)税制適格の対象となる取締役・役員の範囲

取締役に関しては、委員会設置会社や監査役等設置会社の業務執行をしない取締役や社外取締役であっても、対象になるものと考えられます。

一方で、監査役や会計参与に関しては、税制適格の対象者にはならないとされているので、注意が必要です。

(3)相続人について

適格対象者となる相続人は、付与対象者が権利行使できる期間(3.を参照)に死亡した場合において、その権利行使できることとなる取締役等の相続人に限られています。

(4)一定の関連会社とは

一定の関連会社とは、その発行済株式(議決権のあるもの)の50%を超える株式(議決権のあるもの)を直接または間接に保有する会社です。

間接保有が認められますので、例えば孫会社の取締役等であっても問題ありません。

2.所有株式数

税制適格となるためには、付与決議日に発行会社の大口株主もしくは大口株主の特別関連者に該当しない必要があります。

(1)大口株主とは?

大口株主の要件
公開会社 発行株式の1/10超を所有
未公開会社 発行株式の1/3超を所有

非上場会社は、ほぼ全ての会社が未公開会社ですので、発行株式の1/3が基準になります。(非公開会社とは株式の譲渡制限をしている会社で、自社の定款や登記簿で確認できます)

なお、個人の持株会社を通じての保有がカウントされるかどうかに関しては明確な規定はありませんが、それを持って税制適格の対象者から外れることはないと考えられます。

(2)大口株主の特別関連者とは?

大口株主の親族、事実上婚姻関係にあるもの及びその直系血族などです。

3.ストックオプションの権利行使期間

税制適格となるためには、権利行使は付与決議後2年経過から10年経過までに行う必要があります。

これは取締役・従業員等へのインセンティブを2年という一定期間を設け、旧商法の規定において権利行使期間を10年以内としていたため、それが税法にも残っているものと考えられます。

4.権利行使価格

税制適格となるためには、1株あたりの権利行使価格をストックオプションの契約締結時の時価以上(株価以上)としなければなりません。

ストックオプション制度は権利を付与したことによるインセンティブ効果で株価を上昇させることが本来の目的です。付与時の株価より低い金額を行使価格にしてしまうと、その時点で対象者の利益となり本来の目的には沿わないため、税制適格とはなりません。

時価をいくらで算定するかは様々な考え方があります。ここでは、”税制”の規定に従う必要があります。

投資家と交渉するうえで根拠となるディスカウントキャッシュフローなどとは別物になる場合もあります。例えばベンチャーキャピタル向けに優先株式を発行していた場合、優先株式と普通株式は別に評価して良いとされていますので、投資家から出資を受けた優先株の高い株価を必ずしも使用する必要はありません。

このように種類株式を発行している場合は株式評価はより複雑になりますので、専門家に相談して、税制適格ストックオプションとして認められる範囲で可能な限り低い株価にしておくようにし、インセンティブ効果を大きくするようにします。

5.権利行使価額の制限

税制適格となるためには、権利行使価額が年間1,200万円を超えてはいけません。これは”権利行使価額”であって、売却額ではありません。

仮に年間1,200万円を超える権利行使を一度行った場合は、それ以後の年は、年間1,200万円以内であっても税制適格の対象となりません。

6.譲渡制限

ストックオプションは株式などと同じように、特に制限がなければ他人への譲渡は可能です。

税制適格となるためには、譲渡は禁止としなければなりません。

7.ストックオプションの発行形態

税制適格となるためには、無償発行または役務提供の対価として発行される新株予約権である必要があります。

平成18年税制改正前は、無償発行によるものに限られていましたが、改正後は、金銭の払込をさせないで発行された新株予約権であることが税制適格の要件になりました。

この金銭の払込をさせないで発行された新株予約権の範囲には、無償発行の新株予約権のほか役務提供の対価として発生する報酬債権と相殺して発行されたものも含まれると解されています。

まとめ

今回は、税制適格ストックオプションの要件を解説しました。

1~7は、設計する段階でよく確認しておく必要があります。行使条件については各社ごとに色々な設計が可能ですが、税制適格ストックオプションとした場合は適法性を確認する必要が有り、専門家に相談すべきです。

以下の記事もぜひご覧下さい。

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