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投資と出資と借入(融資)の違い

会社を設立して初めて資金の調達をしようとした場合、ファイナンスに関する知識があまりないという方がほとんどだと思います。

最初の資金調達は、財務・経理の専門の人材は社内におらず社長自らが行う場合がほとんどです。それでも社長自らが多くの時間をかけて専門的な知識を習得する必要はなく、外部の専門家を上手く利用することで必要な知識やスキルを補うことができます。一方で、専門家を利用する場合であっても、専門家のアドバイスを受けて合理的な判断をするだけの最低限の知識は必要です。

今回は基礎的な言葉から説明していきます。

1.投資は出資と借入(融資)を含む言葉

投資、出資、借入という用語があります。これを理解していないと話がかみ合わないですし、実は混同している方がよくいらっしゃいます。その意味の整理をしますと、投資は出資と借入を含んだ言葉です。

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お金の出し手を投資家と言い、投資家から見た場合には、出資は株式投資、融資は債券投資ということになります。スタートアップ・ベンチャーに関して言うと、出資を行う投資家は、主にエンジェル投資家・ベンチャーキャピタル・事業会社になります。融資を行う投資家は、銀行・金融公庫等ということになります。借入は、借り手から見た言い方で、貸し手から見た場合には、融資もしくは貸付と言います。出資は投資家から見た言い方で、受ける会社から見た場合は増資を行うといいます。

2.出資の概要

(1)出資は返さなくてよい資金

出資とは、一般に”会社にとって返さなくても良い資金”という解説がされています。

それはそのとおりで、借りた資金を返済する必要がありませんし、利息を支払う必要もありません。では、出資は借入れと比較して良いことばかりなのでしょうか。もちろんそんなことはありません。

(2)出資を受けるとは、会社の権利の一部を渡すこと

株式会社の社長(余談ですが会社法上に社長という概念はありません。通常社長は取締役であり代表権を持ちますので、会社法上では社長を代表取締役と呼びます)というのは会社のオーナーである株主から経営を委任されている立場の者をいいます。

100%株主=社長であった場合には会社は社長のもので、その立場の違いを意識する場面はほとんどないのですが、会社法上はあくまで社長は株主から委任された立場です。

仮に、第3者が10%分の出資を行い、社長と第3者の出資比率がそれぞれ90%と10%になった場合、会社法上は会社の90%は社長のもので10%はその第3者のものになります。

”ものになる”とは具体的にどういうことかというと、株主の権利は大きく分けて以下の2つがあります。

①直接経済的な利益をうける権利

会社が利益の配当をしたときに比率に応じて受けることができる権利や、会社を売却や清算をしたときに比率に応じて売却額や清算金を受け取ることができる権利

②会社の運営の権利

取締役の選任権、解任権、会社のルールである定款の変更等の決議において株主総会で投票をする権利

 

出資は会社にとって返さなくて良い資金ではありますが、新しい株主である投資家と会社の権利を分け合うことになりますので、増資を受けるということは、会社の一部を第3者に譲渡すると言い換えることもできます。例えば外部の出資比率が50%を超えた場合には、定款に別途定めがなければ取締役を解任できる権利が生じますので、最悪社長をクビなるというリスクが出てきてしまいます。

ただし、スタートアップ・ベンチャーにおいては、創業社長を代替できる人材は限られていますので、50%を切ったからといって即クビになるわけでは、もちろんありません。早い段階から50%を切ってもIPOまでいくケースももちろんあります。

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3.借入(融資)の概要

(1)借入(融資)は返済する必要のある資金

借入は、返済する必要のある資金で、借り入れをおこなった元本に利息を加えて返済することになります。返済の仕方は契約により様々ですが、2つのパターンがあります。

①期日一括返済:

返済期限の日に、全額一括で借入を返済する方法

②分割返済:

一定の期間ごとに、借入金額を分割して返済期限までに返済する方法

(2)貸付をする銀行は、直接経営に意見をいう権利はない

出資をうけた資金を自己資本と言いますが、それに対比して借入である負債は他人資本と言われます。

貸主は株主のような経済的な利益をうける権利や会社の運営の権利を持ちませんので、会社がいくら儲かっても利息以上の経済的な利益はありません。また、会社の運営に口を出して「返済が滞っているから社長をクビにしろ」と出張はできるかもしれませんが、実際の決議を行う場である株主総会の投票権ははありませんので直接クビにすることはできません。

一方、借入に関しては確実な返済が求められますので、確実にキャッシュを生み(もしくは代替できる担保があり)返済できる可能性が極めて高い状態でなければ銀行は貸してくれませんし、会社側としても借りるべきではありません。
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3.まとめ

出資は、返済する必要がない一方で、会社の権利の一部を渡すことになります。借入は、返済する必要がある一方で、会社の権利を渡すことにはなりません。会社の事業内容やその状況に応じて資金調達の方法を考える必要があります。

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