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ホームページ制作費は、広告宣伝費(損金処理)かソフトウエアとして固定資産計上か

今や事業を開始するとホームページを作成するのが当たり前になってきました。ただし、一言でホームページといっても、一律に会計処理が決まっているわけではありません。その内容や機能によって会計処理は異なります。みなさんも、ホームページを外注したときに費用か資産計上かを迷ったことはないでしょうか。

ポイントを簡単にいうと、ホームページが単なる広告宣伝費か、複雑なプログラムが使われているかによって会計処理が分かれることになります。詳細を解説していきます。

1.30万円以下であれば内容に関係なく費用処理(損金算入)が可能

中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例はソフトウェアになりうるホームページでも適用が可能です。そのため、御社が中小企業者等(大会社の子会社等ではない資本金1億円以下の会社)であれば、2.以降で解説する内容や機能に関係なく、30万円以下のものは費用処理が可能です。また、機械装置等と違い、ソフトウェアですので償却資産税の申告の心配もいりません。

大企業等の場合は、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例が使えませんので、10万円を超えるかどうかが費用処理できるかの基準になります。

2.会社概要や商品紹介のためのものは費用処理

ホームページは、一般には企業や商品のPRのために作成されるものであり、かつ、常に更新されるものであるため,その制作に要した費用は、原則として広告宣伝費に該当し、支出時の損金に算入されます。

ただし,制作したホームページの使用期間が1年以上に及ぶ場合には,繰延資産として使用期間で均等償却することになります。この”使用期間が1年以上に及ぶ場合”というのは、1年以上一度も更新せず、そのままになっている状態のものを指します。よって、極端な話、年1回でもお知らせページなどを更新すれば、支出時に全額を損金参入できるということになります。

3.その他に費用処理が可能なもの

明らかな広告宣伝費のほか、以下のようなものも費用処理が可能なものと考えられます。

(1)お問い合わせフォームや資料請求フォーム

単純にメールを送る機能である場合は、宣伝目的等の一環であると考えられることから、費用処理が可能と考えます。

(2)ニュースやリンクの掲載

単なる情報であり、4.のソフトウェアには該当しないため、費用処理が可能と考えます。

(3)SEO機能

SEOの作業は,一般的にホームページ内の文章の変更作業が中心となります。このことからソフトウエア機能追加ではないことや,SEO作業の目的が広告宣伝のためのものであることなどから、広告宣伝費に該当するものと考えます。

なお、SEOの対策費用で契約時に保証料を支払っている場合、支出時は資産計上する必要があります。保証料については、その後、返還する可能性がなくなった時(例えば、成功報酬で成果が上がった時)に、費用処理すべきと考えます。

4.ソフトウェアに該当するものは固定資産となる

ホームページにソフトウェアに該当するものが含まれる場合、当該部分は資産計上することになります。

ソフトウェアは、会計基準上、「コンピューターを機能させるように指令を組み合わせて表現したプログラム」とされており、税務上も大きな違いはないと考えます。

ソフトウェアについては、プログラム言語の種類に関係なく,サーバーを介してデータベース等との情報のやりとりをするようなものが含まれるものと考えられ、他のネットワークに接続できる機能を有するものや企業内のネットワークと接続できる機能を有するものなどが挙げられます。さらに、仕様書のようなものがある場合には、一般的にソフトウエアに該当するものとされています。

以下では、具体的にソフトウェアに該当するものを見ていきます。

(1)自社商品を検索する機能はソフトウェア

検索機能などのプログラム機能については、サーバーを通して情報を探し出すようなプログラムですので、ソフトウエアに該当するものと考えられます。

(2)オンラインショッピング機能はソフトウェア

オンラインショッピング機能は、閲覧者が購入するためのプログラムが組み込まれているため、ソフトウエアに該当するものと考えられます。

(3)「ログイン/パスワード」の入力機能はソフトウェア

サーバーを通じて管理している情報と顧客が入力した情報が適正であるか否かを確認するプログラムが組み込まれているため、ソフトウエアに該当するものと考えられます。

(4)自社の商品を購入することができるオンラインショッピング機能

サーバーを通して商品売買を管理するプログラムが組み込まれていること、オンラインショッピング機能の目的が広告宣伝であるとは考えにくいため,ソフトウエアに該当するものと考えられます。

(5)自社の商品であるチケットをインターネットで予約できる機能

広告宣伝を目的としたものではないうえ、サーバーを通じて商品管理等をするプログラム機能を有しているため,ソフトウエアに該当するものと考えられます。

(6)広告宣伝目的の動画掲載の作成費用

判断が分かれるところかも知れません。ただ、一般的に動画は仕様書等が付されていることなどから,ソフトウエアに該当するものと考えられます。

(7)ゲーム機能

ソフトウエアに該当するものと考えられます。

(8)各機能のバージョンアップについて

資本的支出として資産計上する必要があります。

5.ホームページを資産計上したときの具体的な会計処理

(1)ホームページの耐用年数

ソフトウェアに該当した場合は、3年もしくは5年でで償却しますが、ホームページは「複写して販売するための原本」又は「研究開発用のもの」にも該当しないと考えられますので、5年で償却することになります。

根拠は以下を参照ください。No.5461 ソフトウエアの取得価額と耐用年数

ソフトウエアの耐用年数については、その利用目的に応じて次のとおりです。

(1) 「複写して販売するための原本」又は「研究開発用のもの」・・・・・・・・・3年

(2) 「その他のもの」・・・・・・・・・・・・5年

(2)広告宣伝部分とソフトウエア部分を区別できる場合

広告宣伝部分とソフトウェア部分に分けて、広告宣伝部分を費用処理、ソフトウェア部分資産計上+償却処理を行うことになります。

(3)広告宣伝部分とソフトウエア部分を区別できない場合

広告宣伝部分とソフトウエア部分が区分できない場合は,全額をソフトウエアとして計上する必要があります。ですので、”ホームページ作成費用一式”とされている見積書や請求書をもらった場合は、上記の区別がわかるように、(節税をしたい場合は)再作成してもらうことをおすすめします。

(4)事業年度の途中にソフトウェアを取得した場合は、月割計算する

例えば、3月決算の会社が1月に取得した場合は、取得価額の3/60ヶ月(60ヶ月は5年×12ヶ月)のみ、減価償却費の計上が可能です。

(5)前払いがあり、未完成のまま決算を迎えた場合

未完成のものの前払い金額は、”ソフトウェア仮勘定”として無形固定資産に計上し、減価償却は行いません。完成時に、ソフトウェア勘定に振り替えて、減価償却をスタートします。

(6)ホームページを1年毎に作り変えている場合

作り変えるタイミングで、古い方のインターネット上の掲載をやめてしまえば、やめたタイミングで古い方を”除却”できますので、取得価額のうち未償却の部分は費用処理が可能です。ただし、一部使用中であれば費用処理はできませんので注意が必要です。なお、特定の機能ごとに取得価額を把握しており、特定の機能について使用をやめた場合は、その特定の機能部分については除却可能と考えます。

まとめ

ホームページにはソフトウェアに該当するかしないかについては、判断が難しいものもありますが、上記が参考になれば幸いです。

また、特にデザイン色の強い制作会社などは”ホームページ作成費用一式”といった請求書を発行している場合が多いようです。後から会計処理に幅を持たせるためにも、見積書や請求書は詳細がわかるものを入手しておくことをおすすめします。

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