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個人事業主・フリーランスのための源泉徴収の4つの注意点

働き始めれば、一度は源泉徴収という言葉を耳にしたことがあると思います。

源泉徴収については、サラリーマンであれば知らなくとも問題ありませんが、個人事業主・フリーランスとなれば理解しておく必要があります。源泉徴収は、個人事業主やフリーランスの方に深く関わってくるものです。

今回は、源泉徴収の概要から、対象や計算方法および注意が必要な消費税の扱いまで源泉徴収の扱いについて解説しています。

1.源泉徴収の概要

(1)そもそも源泉徴収とは

源泉徴収とは、給与や報酬などの支払者が、給与や報酬などを支払う際に、その金額から事前に所得税等を差し引いて支払いを行う制度です。

基本的には、従業員・役員、個人事業主・フリーランスなどの個人に対する支払いが対象となります。

(2)源泉徴収の対象になるもの

源泉徴収の対象になるもので、一般的に知られているものに給与所得があります。

しかし、それだけではありません。以下のものの源泉徴収の対象となります。

イ 原稿料や講演料など
ただし、懸賞応募作品の入選者などへの支払については、一人に対して1回に支払う金額が5万円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。
ロ 弁護士、公認会計士、司法書士等の特定の資格を持つ人などに支払う報酬・料金
ハ 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
ニ プロ野球選手、プロサッカーの選手、プロテニスの選手、モデルや外交員などに支払う報酬・料金
ホ 芸能人や芸能プロダクションを営む個人に支払う報酬・料金
ヘ ホテル、旅館などで行われる宴会等において、客に対して接待等を行うことを業務とするいわゆるバンケットホステス・コンパニオンやバー、キャバレーなどに勤めるホステスなどに支払う報酬・料金
ト プロ野球選手の契約金など、役務の提供を約することにより一時に支払う契約金
チ 広告宣伝のための賞金や馬主に支払う競馬の賞金

国税庁HP:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは

(3)源泉徴収の計算方法

源泉徴収額の計算は以下のように行うことになります。

  • 100万円以下の場合の計算方法
    源泉徴収税額 = 支払金額 × 10.21%
    10万円の場合の計算例:10万円 × 10.21% = 10,210円
  • 100万円を超える場合の計算方法
    源泉徴収税額 =(支払金額 – 100万円)× 20.42% + 102,100円
    200万円の場合の計算例:(200万 – 100万円)× 20.42% + 102,100円 = 306,300円

2.請求書の消費税は別にする

消費税の取扱いについては、注意が必要です。

消費税を区分表示しない場合には、源泉徴収は、消費税も含む金額の全てが対象となります。一方、請求書で報酬等の金額と消費税の金額が分けられている場合には、消費税の金額を除いた報酬の金額のみを源泉徴収の対象とすることができます。

  • 請求書に”報酬額108,000円”と記載する場合
    →源泉徴収税額は、108,000円の10.21%である11,026円(1円未満切捨て)になります。
  • 請求書に”報酬100,000円、消費税等8,000円”と記載する場合
    →源泉徴収税額は、100,000円の10.21%である10,210円になります。

消費税については、区分して表示するようにしましょう。

3.支払いを受ける側(個人事業主・フリーランス)の確定申告

(1)納税額の基本的な考え方

「うちは利益出ていないのに、源泉徴収の税率は高いな」と思った方は安心してください。

最終的な納税額は、”所得金額×税率ー源泉徴収額”で計算されます。仮に、”所得金額×税率”が”源泉徴収額”よりも低い場合は、差額が還付されます。

利益が少額の場合 利益が高額の場合
年間の税額(所得金額×税率で計算) 10万円 20万円
源泉徴収額 15万円 15万円
確定申告による税額 5万円の還付 5万円の納税

(2)支払調書を入手する

確定申告の際には、源泉徴収されているということを証明する書類である支払調書を入手する必要があります。支払調書は、報酬等の支払いをする側が、個人事業主・フリーランスに対して発行する義務がありますが、2月になっても支払調書が届かなければ、得意先に対して督促をする必要があります。”請求されたら送付する”という会社もあるため、督促は忘れずに行ってください。

なお、支払調書は、1月末期限で税務署に提出してるはずのため、2月に入ればすぐに送ることができるはずです。

(3)確定申告の際には、源泉徴収の金額を忘れずに記入

確定申告の際に、源泉徴収により差し引かれている金額の申告を忘れないでください。個人事業主・フリーランスの場合、源泉徴収で差し引かれている金額は、納税額よりも多くなっている場合があり、その場合は上記のとおり還付されます。

(4)取引に源泉徴収の徴収漏れがあった場合の対応

詳しくは、4.を読んだ後に戻ってきていただきたいのですが、年をまたいだ源泉徴収の徴収漏れがあると手続きが面倒です。

支払いを受ける側から見た源泉徴収漏れとは、例えば、総額で100,000円の売上のうち、10,210円を差し引かれた金額を受け取らなければならないところ、100,000円を全額受け取って、源泉徴収が不要の前提で確定申告してしまうことです。

源泉徴収の徴収漏れが判明すると、その時点で得意先に源泉徴収分を支払う必要があります。得意先からは、その分の訂正がされた支払調書を入手し、これを根拠に税務署に対して所得税の更正請求を行わなければなりません。非常に面倒です。

4.支払う側の注意点

(1)支払う側は源泉徴収の義務があり、遅延するとペナルティ

支払う側は源泉徴収は義務なので、それを怠ると不納付加算税、延滞税の支払いが発生します。

不納付加算税は、自分で納付するのと、税務調査で指摘されて納付するので、税率が違います。

不納付加算税の税率
自分で納付する場合の税率 5%
税務調査で指摘されて納付する場合の税率 10%

延滞税は変動しますが、国税庁HP:No.9205 延滞税についてをご覧下さい。期限から2ヶ月間は概ね年利3%、2ヶ月を超えると概ね年利9%になります。

不納付加算税、延滞税ともに、納付漏れした金額に上記の利率を乗じます。

(2)源泉徴収漏れの場合の取り漏れ分の回収について

支払者である会社等が、源泉徴収漏れをした場合、既にその部分に相当する額は得意先に支払済みですが、以下の手続きが必要になります。

  1. 返金してもらう、もしくは、次回支払う報酬と相殺
    →基本は、返金してもらうことになりますが、継続取引をしていれば、(相手方に了解を得た上で)次回取引で相殺するやり方もあります。
  2. 支払調書の修正
    →返金を受けた会社等は、過去の取引を修正すると共に、支払調書を修正する必要があります。返金の修正が同じ年の取引なら問題ありませんが、源泉徴収をしなかった年と源泉漏れが判明した年が違う場合、修正が必要になります。

(3)取り漏れ分の回収できない場合

受け取る側に対してそれだけの報酬を追加で支払ったと税務署は解釈しますので、回収出来ない分に対して、源泉徴収義務をさらに追及されることになってしまいます。

まとめ

源泉徴収は手取りが減り気持ち的には嫌なものです。しかし、きちんと手続きをおこない、かつ、利益が出ていないような状態であれば、確定申告で取り戻すことができます。

逆に、源泉徴収の漏れがあると支払い側に延滞税等が発生し、支払う側・受け取る側の両方が手続き的にかなり面倒になります。適切に計算・納付等をしましょう。

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