12.302016
過少申告加算税、無申告加算税、重加算税の平成28年度税制改正

平成28年度税制改正で、申告しないことや過小に申告したことに対するペネルティである、過少申告加算税、無申告加算税、重加算税の割合が改正されました。
課税割合の変更、及び加重措置の創設がされ、重加算税などの割合が増加します。
適用時期は、平成29年1月1日以後の法定申告期限が到来するものからです。
Contents
1.税務調査で課されるペナルティの種類
税務調査で誤りを指摘された場合、修正申告書を提出してその内容を訂正します。その際に課されるペナルティは、下記のとおり大きく二つに分けられます。
・加算税(国税)と加算金(地方税):過小に申告したことによるペナルティ(今回の記事で解説)
・延滞税(国税)と延滞金(地方税):支払われるべき税金が支払われなかった期間に課される遅延利息
2.更生・決定とは?
加算税、加算金を理解するために、税務調査でよく出てくる更生・決定の概要を理解しておく必要があります。
(1)更生とは?
申告書を提出後に、税務署が税務長調査により申告の誤りを修正すること。
(2)決定とは?
申告書が提出されたなかったときに、税務署が税務長調査により税額などを決定すること。
両者の違いは、申告書が出されているか・いないかの違いであり、税務署が税務調査により税額を決めることと理解しておいて頂ければ問題ないです。
(3)更生予知とは?
税務調査ででは、更生予知という言葉も出てくる場合があります。更生予知とは、簡単にいうと”税務調査の指摘により納税額が増えそうだと認知・予想すること”です。税務の世界では、”税務調査通知以後かつ更正予知前”(税務調査の通知は来たけど、納税額が増えそうかはわからない時期)という期間もあり、加算税を考える上では、以下の3つの時期に区分されます。
申告の時期 | 修正時のペナルティの大きさ |
(税務調査の)事前通知前 | 小さい
↓ 大きい |
(税務調査の)事前通知後~更生予知前 | |
更生予知後 |
3.加算税、加算金とは
(1)加算税と加算金の違いと区分
・所得税や法人税、相続税など国税に課されるもの→加算税
・法人の事業税などの地方税に課されるもの→加算金
加算税、加算金と名称は違うものの、国税か地方税かの違いでその内容は同じです(以下、加算税と加算金を合わせて加算税と記載します)。なお、所得税と相続税に加算金はありません。
(2)4つの加算税
以下の4つの種類の加算税があり、それぞれ課税要件が定められています。
名称 | 課税要件 |
①過少申告加算税 | 期限内申告について、修正申告・更正があった場合 |
②無申告加算税 | 期限後申告・決定があった場合
期限後申告・決定について、修正申告・更正があった場合 |
③不納付加算税 | 源泉徴収税額について、法定納期限後に納付・納税の告知があった場合 |
④重加算税 | 仮装・隠蔽があった場合 |
(3)平成28年度税制改正
平成28年度税制改正において、加算税制度について、以下の見直しが行われています。
- 加算税の課税割合の変更
- 加算税の加重措置の創設
以下では、4つの項目ごとに、改正前後の違いについても触れて解説していきます。
4.①過少申告加算税の計算方法と改正の内容
(1)過少申告加算税とは
過少申告加算税とは、期限内に税務署に申告後、税務調査で間違いを指摘されて、修正申告を行ったり、税務署から更生処分を受けたことによって、”修正申告等による税額>期限内に提出された申告の税額”であったときの過小分のペナルティです。
過少分に対して、一定割合を乗じて支払うことになります。
(2)過少申告加算税の算出ルール(改正前)
基本的には10%ですが、当初申告した納付すべき税額(当初の申告書で算出された納付税額)と50万円のいずれか多い金額を超えた部分は、税額に対して15%が課されます。
(3)加算税と加算金の計算例
・当初の申告書で算出された納付税額30万円。修正申告により新たに納付することとなった金額90万円。
当初の申告書で算出された納付税額30万円と50万円を比較すると50万円の方が大きい。よって、50万円を超える部分に15%が課される。
50万円を超える部分は90万円ー50万円=40万円です。そして50万円まで10%が課されることになります。
(50万円-30万円)×10% + 40万円×15% = 8万円
(4)平成28年度改正の影響
”調査通知以後かつ更正予知前にされた、修正申告に基づく過少申告加算税”というものが設けられました。
過少申告加算税の要件は”税務調査実施”がありましたので、従来は、調査通知を行った直後に修正申告を行い、過少申告加算税を回避をすることができました。改正後はこれができなくなります。
”調査通知以後かつ更正予知前にされた、修正申告に基づく過少申告加算税”には、5%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分は10%)が課されます。
適用時期は、平成29年1月1日以後の法定申告期限が到来するものからです。
改正前 | 改正後 | ||
加重措置なし | 加重措置あり | ||
事前通知前 | 0% | 0% | 0% |
事前通知後~更生予知前 | 0% | 5%(10%) | 5%(10%) |
更生予知後 | 10%(15%) | 10%(15%) | 10%(15%) |
※()内は、当初の申告書で算出された納付税額と50万円のいずれか多い金額を超えた部分に適用される割合
5.②無申告加算税の計算方法と改正の内容
(1)無申告加算税とは
無申告加算税とは、期限内に確定申告をしなかった場合、本来おさめるべき税額に対して課されるペナルティです。
本来納めるべき税額に対して、一定割合を乗じて支払うことになります。
(2)無申告加算税の算出ルール(改正前)
上記以降に期限後申告等をした場合:×15% (20%)
更生予知の前後で、割合が異なります。
更生予知前は5%ですが、更生予知後は、15%(納付すべき税額が50万円を超える部分は部分は税額に対して20%)です。
(3)加算税と加算金の計算例
・税務調査のを受けて、期限後申告により納付することとなった金額90万円。
50万円を超える部分は90万円ー50万円=40万円です。そして50万円まで15%が課されることになります。
50万円×15% + 40万円×20% = 15.5万円
(4)平成28年度改正の影響
①更生予知前の割合の増加
更生予知前は5%でしたが、10%(納付すべき税額が50万円を超える部分は15%)に増額されます。
趣旨は、過少申告加算税と同様で、従来は、調査通知直後に期限後申告を行い、無申告加算税を低くすること(更生予知後か前かは争うことにはなりますが)ができました。改正後はこれができなくなります。
②加重措置
期限後申告等があった日の前日から起算して5年前の日までの間に、その期限後申告等に係る税目について無申告加算税(更正予知によるものに限る)または重加算税を課されたことがあるときは、その期限後申告等に基づき課する無申告加算税または重加算税の課税割合にそれぞれ10%加重する制度が創設されました。
この場合の割合は、25%(納付すべき税額が50万円を超える部分は30%)です。
適用時期は、①、②ともに平成29年1月1日以後の法定申告期限が到来するものからです。
改正前 | 改正後 | ||
加重措置なし | 加重措置あり | ||
事前通知前 | 5% | 5% | 5% |
事前通知後~更生予知前 | 5% | 10%(15%) | 10%(15%) |
更生予知後 | 15%(20%) | 15%(20%) | 25%(30%) |
※()内は、50万円を超えた部分に適用される割合
6.③不納付加算税の計算方法
(1)不納付申告加算税とは
不納付加算税とは、源泉所得税の納付期限を過ぎてしまった場合のペナルティです。
本来納めるべき税額に対して、一定割合を乗じて支払うことになります。
(2)不納付加算税の算出ルール(改正なし)
上記以降に期限後納付をした場合:×10%
更生予知の前後で、割合が異なります。更生予知前は5%ですが、更生予知後は10%です。
(3)平成28年度改正の影響
改正はありません。
7.④重加算税の計算方法と改正の内容
(1)重加算税とは
①過少申告加算税、②無申告加算税、③不納付加算税が生じる場合で、事実を隠ぺいしたり仮装したりした場合に、①②③の代わりに課されるペナルティです。
(2)重加算税の算出ルール(改正前)
②無申告加算税:×40%
(2)平成28年度改正の影響
期限後申告もしくは修正申告(更正予知によるものに限る)または更正もしくは決定等(以下「期限後申告等」)があった場合において、その期限後申告等があった日の前日から起算して5年前の日までの間に、その期限後申告等に係る税目について無申告加算税(更正予知によるものに限る)または重加算税を課されたことがあるときは、その期限後申告等に基づき課する重加算税の課税割合にそれぞれ10%加重する制度が創設されました。
改正前 | 改正後 | ||
加重措置なし | 加重措置あり | ||
①過少申告加算税、、③不納付加算税 | 35% | 35% | 45% |
②無申告加算税 | 45% | 45% | 55% |
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