ブログ

法人と個人の減価償却費の範囲と計算方法。個人は定額法が原則のため注意。

法人と個人事業では固定資産の経費化できる範囲、届け出のタイミング、届出をしない場合の償却方法、繰越ができるかどうかなどが異なります。両者の違いについて解説します。

1.法人と個人の経費とする範囲

(1)個人の場合

個人で車両を購入し、プライベートにも事業にも使用したとします。

その場合は、使用割合に応じて経費を按分し、事業分だけを経費とすることができます。200万円の車両を40%事業で使い4年で償却すると、1年当たりの減価償却費が200万円×40%÷4年=20万円となります。60%分の120万円は経費化できません。

(2)法人の場合

法人の場合は、按分計算するということはなく、事業として必要かどうかという判断になります。

”高級車を会社名義で買って、社長の自宅に駐車しておき会社にほとんど見かけない”という場合は経費として認められないと判断される場合がありますが、普段会社で使っているものを多少プライベートで使用したとしても常識の範囲内であれば、全額を経費として問題ありません。

2.耐用年数・償却年数について

耐用年数とは本来は物理的・機能的にその固定資産が使える年数を指しますが、税務の世界では法定耐用年数を指します。

理論的には、固定資産は物理的・機能的にその固定資産が使える年数を各社で見積もって償却していくべきです。しかし、各社に耐用年数の決定を委ねてしまうと、利益が出そうな時は耐用年数を短くし、そうでない時は長くするといった形で、簡単に利益操作ができてしまいます。そうすると国としても税収が安定しませんので、国が全社共通で使用する法定耐用年数を定めています。

なお、会計と税務は違いますので、会計では自社で見積もった理論的な耐用年数、税務では法定耐用年数を使用するということも可能ですが、中小企業でこのようなやり方をしている会社はほぼありません。さらに、上場企業であってもほとんどの会社が法定耐用年数を使用していますので、(IFRSの全面導入で変わる可能性はありますが)現状日本では耐用年数は法定耐用年数を指すと言っても過言でないと思います。

3.減価償却の方法について

主に、毎年定額を償却する「定額法」と、最初の年の償却額が大きく毎年償却額が逓減していく「定率法」があります。償却できる総額はいずれの方法も変わりませんが、定率法の方が最初に大きく償却できるため、節税の観点からは有利です。

4.減価償却の方法の届け出のルールについて

減価償却の方法は届け出をしない場合の方法が法人・個人事業で定められており、それ以外の方法を選択したい場合には届出を行う必要があります。

また、一度決めたものは原則として3年は変更ができません。

(1)法人

①設立時:設立第1期の確定申告書の提出期限まで提出

②変更時:新たに償却方法を採用しようとする事業年度開始の日の前日まで提出

③届け出をしない場合の償却方法:定率法(定率法を採用できない建物等以外)

(2)個人

①新たに業務を開始:所得税の確定申告書の提出期限(取得した日の翌年315)まで提出

②変更時:変更しようとする年の315日まで提出

③届け出をしない場合の償却方法:定額法

個人の場合、節税の観点から有利な方法である定率法は、届出をしないと選べませんので注意が必要です。

5.償却方法を決定するときの注意点

節税の観点のみで言えば、定額法と定率法を選択した場合に、定率法の方が有利です。一方で、以下のようなデメリットもありますので注意が必要です。

(1)個人事業の場合、貸借対照表も作らないといけない

個人事業の場合、必要なければ貸借対照表は作らなくても良いです。しかし、定率法を行うには資産残高を把握する必要があり、貸借対照表を作る必要がでてくるので手間が多くかかります。

(2)購入年度に費用が大きくなる

定率法は購入年度に費用が大きくなり、その年の大きなものを買えばその年の損益が大きく悪化します。

銀行からの融資、投資家からの出資等の資金調達を検討されている方は、直近の決算書はかなりチェックされるため注意が必要です。経理の知識がない方が両者の定額法と定率法の違いを説明するのは簡単ではありません。

(3)個人事業では償却費の繰越はできない(定額法・定率法いずれも)

法人の場合は、その年に過小に償却した場合や償却しなかった場合も、翌期以降に処理すればいずれは購入金額の全額を経費として計上できます。

一方で個人事業主は繰越の処理が認められていません。100万円のものを4年で定額法で償却していて、3年目だけ償却費の計上を忘れたとします。その場合は100万円/4年=25万円分は永久に経費処理できません。

6.まとめ

固定資産の償却処理について解説しました。償却方法はのちのち損益に与える影響も大きくなっていきますので、よく考えて選択してください。

スポンサードリンク

関連記事

コメントは利用できません。




ページ上部へ戻る