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やり直しがきかない会社設立時の資本金の決め方の5つのポイント

「会社設立しようと思うけど、資本金はいくらがいいんですか?」はよく聞かれる質問で、多くの方が会社を設立する際に最も悩む点の一つです。

実は、会社法、税法、用意できる資金、受けたい融資額などなど、様々な観点から検討する必要があります。資本金をどのように理解して、金額を決めれば良いのかを解説します。

1.資本金とは?

資本金とは、ざっくり言うと、会社が事業のために使うことのできる資金のうち、株主から払い込まれた金額をいいます。資本金は設立時に払い込んだ金額から動かせないわけではなく、その後「増資」という株主からの追加の払込みの手続きを行うことにより、増やすこともできます。資本金を払い込むことを「出資する」とも言います。

会社が事業のために使うことのできる資金のうち、株主が払い込んだ資金である資本金を「自己資本」、株主以外の外部から資金である融資などを「他人資本」とも言います。会社法上は会社は株主のものですから、オーナーである株主から出された資金は会社の内部の資金で「自己資金」、金融機関などの外部から出された資金である融資を会社の外部の資本で「他人資本と」というわけです。

創業時の調達のしやすさでいうと、出資については、外部の者に事業計画を認められて出資してもらうのはなかなか難しいものですので、社長が全額を出すことが多いです。一方、融資であれば日本政策金融公庫の創業融資制度などを使えば、そうハードルが高くなく融資を受けることができます。創業融資に関しては、日本政策金融公庫起業融資ポータルに有用な情報が揃っていますので、ぜひご覧下さい。

また、資金調達を資本金にするか融資・借入にするかで、メリットとデメリットがあります。

①出資のメリット

  • 返済不要で、創業初期の資金調達手段となる
  • 投資家からアドバイスを受けることができる
  • 投資家からのネットワークにアクセスできる
  • 本気で会社の成功に協力してくれる

②融資のメリット

  • 経営権を握られず出資比率を落とさせずに資金調達できる
  • 創業融資や制度融資を利用するれば、安定的なキャッシュフローや担保がなくとも資金調達ができる

詳しくは、起業時の資金調達で知っておきたい出資と借入のメリット・デメリットをご覧下さい。

2.5つの観点から検討する

会社法改正により、資本金1円でも株式会社が設立できるようになりました。改正前は、株式会社が1,000万円必要でしたので、設立自体のハードルは大きく下がったと言えます。ですので、法令上は資本金はいくらでも良いとうことになります。

設立時の資本金の金額は、5つの側面から検討する必要があります。重要な箇所から解説していきます。

(1)運転資金としての資本金

①基本的な考え方

設立してすぐに資金調達に走り回ってしまうと本業に集中できなくなってしまい、事業の成功の確率を大きく下げてしまいます。

会社が継続するために充分なキャッシュフローを生み始めるのはいつのタイミングなのかを事業計画を作成のうえで検討をし、資本金や創業融資を使って資金を調達しておく必要があります。「充分なキャッシュフローを生み始める」ということを具体的に言うと「銀行から2回目の融資を受けられるほどの実績を出す」と言い換えることができます。ここでは詳細は述べませんが、これはすなわち黒字にするもしくは売上が右肩が上がりで黒字がもうすぐだという状態です。

成長を目指すスタートアップやベンチャー企業であれば、ベンチャーキャピタル等からの資金調達のタイミングや金額を事業計画作成のうえで検討しておき、それに合わせて開発や事業を進めるようにしなければなりません。ベンチャーキャピタルから出資を受けるには、目先の黒字よりも将来IPOできるような成長性があるかが重要ですので、黒字である必要はありません。ただし、事業計画や経営陣の魅力だけでは資金調達は難しくなってきており、最初の資金調達時点でもある程度商品やサービスが市場に受け入れられているという実績を示す必要があります。逆算して資金計画や事業進捗計画を立てておくべきです。

なお、「増資」により設立後に追加で資金を投入して資本金を増やすことが可能ですが、登録免許税や面倒な手続きが必要です(司法書士に頼めば手数料も発生します)。設立時に少額出資して、その後少しずつ増資するというのは避けた方が良いです。この点は、役員から会社に貸付を行うという方法もありますが、外から好ましくないと見られる場合がありますので注意してください。

②必要な運転資金の考え方

創業時は、(業種によりますが)全ての資金調達額を合計して最低限、初期費用+月々の費用3ヶ月分を用意しましょう。全ての資金調達額というのは、資本金だけではなく、創業融資などの金額も含みます。

例えば、創業時の資金を資本金+創業融資で賄うものとします。創業融資は自己資金の2倍程度の金額を受けるのが平均ですので、1,000万円の資金が必要であれば、資本金が333万円、希望融資額が667万円ということになります。

何かの店舗をオープンするとして、初期費用(改装費、敷金・礼金、備品等)700万円、1ヶ月の費用(家賃、給与、日々の仕入れなど)100万円であれば、700万円+100万円×3ヶ月=1,000万円となります。これで3ヶ月間、全く売上がなくとも会社は存続できるわけです。仮に初期費用800万円かかるのであれば、資本金を増やして融資額も増やすか、別のもっと安い店舗を探すなどしなければなりません。

なお、初期費用+月々の費用3ヶ月分というのは一応の目安ですので、業種によってはもっと少なくて良いかもしれないですし、多くする必要があるかもしれません。ご自分の感覚と、先輩経営者・専門家にアドバイスなどにより決定する必要があります。

(2)融資を受けるという観点での資本金

創業融資の多くは、自己資金の要件がつけられています。

制度によっては自己資金の何倍も借りられるものはありますが、目安としては自己資金と2-3倍程度の融資を受けることができると考えて頂いて良いです。

創業融資においては、資本金=自己資金というわけではなく、場合によって一部の金額が自己資金として認められないことも出てきてしまいますが、ご自分が前職で貯めた中から資本金に当てているのであれば全く問題ありません。

自己資金については、詳しくは、自己資金ゼロで起業はできるのか?創業融資の現実は。。。ご参考:日本政策金融公庫-創業融資QA-自己資金はどれくらいあればよいですか?をご覧下さい。

融資審査においては、自己資金は、融資の金額の大きさを決めるばかりではなく、融資が実行できるかどうかにおいても重要な指標になります。

(3)節税の観点での資本金

会社に課される税金である法人税や消費税等には1,000万円、3,000万円、1億円の3つの壁があります。

小さな会社(=資本金が小さい)ほど、特例の恩恵を受けることができることになっています。

①1,000万円以下

・基本的に設立から2年間は消費税を免除されます。

→これについては、消費税の還付がある場合はあえて届出をするという選択もあります。

・法人住民税が安くなります。

②3,000万円以下

・特定の固定資産について、一度で償却できたり、税額控除を受けることができます。

③1億円以下

・法人税の税率が一部下がります。
・交際費の損金算入部分が大きくなります。
・30万円未満の少額減価償却資産が一定額まで全額損金算入できます。
・欠損金の全額繰越控除が適用できる、欠損金の繰戻還付が適用できます。
・事業税の外形標準課税の対象外になります。など

上記は全てを網羅しているわけではなく、また、細かく覚える必要はないですが、3つの壁があること自体は覚えておいて頂きたいと思います。

最初から1000万円以上出資できる方は稀でしょうが、特に理由がなければ資本金は1000万円以下となるようにします。

(4)対外的な観点

資本金は、一般には会社の大きさや信用力を示すとも言われていますが、そういったものは売上、利益、従業員数、社歴などから総合的に判断されるべきものであり、資本金のみでは判断できないというのが私の考えです。ただ、他の企業と取引を開始する場合は、取引先は信用調査表には必ず資本金の額を記入するものですので、toBのビジネスであれば気にする必要があります。toCの売上取引であれば、個人の考えもありますが気にする必要はないと思います。

資本金は金額自体が対外的な観点から重要な場合がありますが、「誰が出資しているのか」(有名エンジェル投資家を出資している、反社会勢力ではないか)も、重要です。

(5)許認可の観点

資本金がいくら以上ないと取得できない許認可があります。これは建設業等の一部の業種に限られますが、念のため確認が必要です。

3.出資の原資は現金だけではない

出資は現金だけではなく、現物で行うこともできます。例えば、個人事業を法人化する場合に、個人事業の時に使っていたPCや車や設備等です。

ただし、500万円を超えるものは、専門家の証明か裁判所が選任した検査役の調査を受けなければなりませんので、500万円以下が目安になります。

4.まとめ:結局は事業を行ううえでいくら必要なのかが重要

サイバーエージェントの藤田社長は、私の著書が若い起業家に与えた誤解」の中で以下のように語っています。

 お金も仲間もアイデアもないまま起業した経緯を、私は確かに書きました。会社を作ることは決めたものの、事業内容はぎりぎりまで決まらなかった。それはその通りなのですが、半面、最低限、食べていけるだけの目処はついていました。それは、広告や人材採用といった商品の枠を仕入れ、企業に営業する、というものです。

設立当初のサイバーエージェントのように日銭を稼げる目処がたっており、天才的な経営者がいらっしゃれば事業計画は不要なのかもしれませんが、多くの会社にはこれは当てはまりません。

私は会社を設立するならば事業計画は必要であると考えていますし、また、創業融資を受けるのであれば手続的に必ず必要になります。

事業計画がないと、「事業をいつまでにどの程度進捗させて、それにはいくら必要なのか?」といった点が感覚的にしかわからず、その感覚が間違っていなければ良いのですが、間違っていれば倒産のリスクが大きくなってしまいます。

会社設立や事業計画作成のタイミングも重要です。新しいサービスや事業を作り始める過程では、必ずしも会社という箱を作る必要はないかもしれません。サービスや事業が形になる目処が立って、「たくさんの人を巻き込む必要が出てきた、投資家が出資できるように株式会社にする必要がある」といったタイミングで会社設立する場合もあります。

さらに、資本金をいくらにするのかという課題は、「設立時に事業計画作成という重要な経営課題がある→その事業計画の中には資金計画作成がある→その資金計画の中には資金の調達の項目がある→その資金の調達は大きく資本金と借り入れに分けることができる→では資本金はいくらにするか?」というものです。何を言いたいかというと、資本金決定の上位にある事業計画の作り込みがまずは重要ということです。

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