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事業を開始当初こそ知っておきたい。消費税の簡易課税と原則課税の違いとは?

簡易課税 原則課税 違い

消費税の計算方法には、簡易課税と原則課税があります。

ただし、簡易課税は規模の小さな会社しか選択できません。簡易課税を選択できる規模の小さな会社は、何を基準に簡易課税か原則課税を選択すれば良いのでしょうか?

答えはシンプルで、消費税のざっくりとしたシミュレーションをしてみて、納める消費税が小さい方を選択すれば良いのです。

シミュレーションをしてみて、どちらもあまり変わらなそうだ、予想が難しくてわからないという場合は、計算の仕方が簡単な簡易課税を選択することになります。

1.消費税の原則的な納付額の決定方法と還付

(1)消費税は基本的に事業者が預かった消費税を国に納める

スーパーで買い物することをイメージしてみてください。お客さんとしてスーパーで買い物をする時、私たちは本体価格に8%の消費税を上乗せして支払っています。

スーパーはそのお客さんから受け取った消費税を後日、国に納付します。ただし、スーパーは預かった消費税を全て納税するわけではありません。卸の業者から仕入れた商品の代金の8%をスーパーでも支払っています。(卸の業者は、スーパーから受け取った消費税を国に支払っています。)スーパーは、お客さんへの売上の際に受け取った消費税から卸の業者に支払った消費税を差し引いて国に納めるのです。

(2)支払った税金が多ければ、国から”還付”してもらえる

スーパーは、赤字の場合など、お客さんから預かった消費税よりも支払った消費税の方が多い場合があります。国に納めると申し上げましたが、このような払いすぎた消費税は、申告することによって後日返金してもらうことができます。これを消費税の還付と呼びます。

(3)還付は原則的な方法で手続きを行った事業者のみが行うことができる

消費税の還付については、注意が必要です。

そもそも、消費税が課税される事業者とそうでない事業者があり、また、課税される事業者の中でも、簡易課税と原則課税があります。還付されるには、消費税が課税される事業者で原則課税である必要があります。

2.小規模の事業者は納税義務が免除される

(1)2年前が1000万以下なら原則として納税義務免除となる

「事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が1000万円以下であるものについては、その課税期間中において国内において行った課税資産の譲渡等につき 消費税を納める義務を免除する」というルールが消費税法に規定されています。

専門用語が並んでいて、よく理解できないかと思います。ざっくりと言うと、「事業者のうち2年前の売上高が1000万円以下であるものについては、消費税を納める義務が免除される」ということです。納税義務が免除された事業者は、お客さんから預かった消費税を国に納めずに自分のものにすることができますので、ほとんどの事業者は納税義務の免除で得をします。

以下で、もう少し詳しく免税事業者の要件を見ていきます。

(2)免税事業者の判定における基準期間とは?

基準期間とは、個人事業者と会社などの法人で異なります。

個人事業者については、基準期間は課税期間の前々年を言います。全ての個人事業者が共通です。

会社などの法人については、基準期間は課税期間の前々事業年度を言います。事業年度は自由に決めることができますので法人によって異なります。

なお、法人の前々事業年度が1年未満である場合には、基準期間の課税売上高を1年換算して判定を行います。個人事業者についてはそのような調整が必要なく、年の途中で開業した場合などは少ない課税売上高で判定されます。

(3)免税事業者の判定における課税売上高とは?

課税売上高には、一般の国内販売の売上高の他に、輸出売上高を含みます。

輸出取引は、消費税が免税となりますので少し違和感があるかもしれません。輸出取引は消費税率が0パーセントの消費税がかかる取引として扱われています。0%で課税されているので、輸出売上高は課税売上高に含まれるという考え方になります。

(4)新設法人で資本金が1,000万円以上の場合

また、新設法人で資本金が1,000万円以上の場合、基準期間がなくても課税事業者となります。

(5)免税事業者の要件を満たす場合であっても、課税事業者になることを選択できる

免税事業者であっても、あえて課税事業者を選択する場合は「消費税課税事業者選択届出書」を提出する必要があります。

あえて選択する理由は該当するかどうかの考え方は、4.をご覧下さい。

なお、課税事業者を選ぶと、最低2年間は継続して適用する必要があります。さらに、この2年間で「調整対象固定資産」に該当する設備投資などがあった場合は、もう1年間課税事業者になります。3年間で消費税が納付となる可能性もあるので、慎重に判断する必要があります。選択を取りやめるには、免税の適用を開始したい課税期間の開始前日までに「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出する必要があります。

3.簡易課税制度の納付方法

ここからは、課税事業になった事業者が、2つ方法である原則課税、簡易課税のうち、どちらを選択するかということの説明です。

原則課税は、1.で説明したとおり、売上の際に受け取った消費税から支払った消費税を差し引いて国に納める方法です。

簡易課税制度は、みなし仕入率を用いて支払った消費税を計算する方法です。

(1)簡易課税制度の要件

簡易課税制度は規模の小さな会社に認められている方法です。

具体的には、基準期間の課税売上高が5000万以下の事業者が、「消費税簡易課税制度選択届出書」をあらかじめ税務署長に提出した場合に適用を受けられます。

(2)支払った税金は関係なく消費税を納める

簡易課税制度によった場合の支払った消費税(控除対象仕入税額と呼びます)は次の算式で求められます

控除対象仕入税額= 課税標準額に対する消費税額×みなし仕入率

※課税標準額に対する消費税額とは、売上で預かった消費税のことです。預かった消費税×みなし仕入率で計算することにより、業種ごとの大体の原価率に応じた消費税を計算することになります。

(3)みなし仕入率の業種ごとのパーセンテージ

みなし仕入率は、90%から50%までの5段階に分かれていま。 事業の種類によって 以下のような表のとおり、区分されます。

事業区分 みなし仕入率 該当する事業
第一種事業 90% 卸売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業)をいいます。
第二種事業 80% 小売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで販売する事業で第一種事業以外のもの)をいいます。
第三種事業 70% 農業、林業、漁業、鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含みます。)、電気業、ガス業、熱供給業及び水道業をいい、第一種事業、第二種事業に該当するもの及び加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を除きます。
第四種事業 60% 第一種事業、第二種事業、第三種事業、第五種事業及び第六種事業以外の事業をいい、具体的には、飲食店業などです。
なお、第三種事業から除かれる加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業も第四種事業となります。
第五種事業 50% 運輸通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業に該当する事業を除きます。)をいい、第一種事業から第三種事業までの事業に該当する事業を除きます。
第六種事業 40% 不動産業

一般的に利益率が低い業種のみなし仕入率は高く設定されており、利益率の高い業種のみなし仕入率はは低く設定されています。

(4)簡易課税のデメリット

簡易課税制度は、預かった消費税額に一定割合をかけ算するだけですので、簡単に算出することができます。

一方で、支払った消費税よりも預かった消費税の方が多い場合(払いすぎた)であっても、還付されることはありません。

3.原則課税と簡易課税がどちらが有利か

原則課税と簡易課税がどちらが有利かを具体的に考えていきます。

たとえば、小売業なら簡易課税の「みなし仕入率」は80%です。預かった消費税(課税売上高に対する消費税)に80%を乗じたものを支払った消費税とみなし、20%分を納税することになります。

(1)簡易課税が有利なパターン

課税売上高が1000万円、課税される仕入れ・経費が700万円

・預かった消費税:課税売上高1000万円×消費税率8%=80万円
・支払った消費税:仕入れ・経費700万円×消費税率8%=56万円

原則課税の場合

預かった消費税額から支払った消費税額を差し引いて国に納める税額を決定します。80万円から56万円を差し引いた24万円を納税することになります。

簡易課税の場合

預かった消費税額の80%の64万円が「支払った消費税」になりますので、残り16万円を納税することになります。

→簡易課税を選択した場合の方が、8万円支払いが少ないわけですから、簡易課税を選択したほうが有利になります。

(2)原則課税が有利なパターン

課税売上高が1000万円、課税される仕入れ・経費が700万円。その他、大型の設備投資があったため、固定資産の購入費が700万円

・預かった消費税:課税売上高1000万円×消費税率8%=80万円
・支払った消費税:(仕入れ・経費700万円+固定資産の購入費700万円)×消費税率8%=112万円

原則課税の場合

預かった消費税額から支払った消費税額を差し引いて国に納める税額を決定します。80万円から112万円を差し引いて、△32万円を納税する、つまり、32万円還付されることになります。

簡易課税の場合

支払った消費税額に関係なく、計算されますので、(1)と同様に16万円を納税することになります。

→原則課税を選択した場合の方が、48万円の得することになります。

4.まとめ

課税事業になるのかならないのか、簡易課税か原則課税か、を決めるのに、消費税のざっくりとしたシミュレーションは欠かせません。

大型の設備投資がある場合や、大きな資本がある割にしばらく大きな赤字が続く場合などは、課税事業者・原則課税が有利な場合が多いです。

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