7.62018
消費税の軽減税率をざっくり解説。対象品目、時期、一体資産など。
平成31年10月1日から消費税率が8%から10%にアップされますが、特定のものは8%に据え置かれます。これを軽減税率制度と言います。これにより、原則として、すべての事業者が同日を含む課税期間から、売上または仕入れを税率ごとに区分して税額計算を行うことになります。
Contents
1.実施の時期、対象品目
実施の時期は平成31年10月1日からの取引から、対象品目は酒類・外食を除く飲食料品、週2回以上発行される新聞です。
2.対象となる品目に関するQA
対象品目は、上述のとおり、酒類・外食を除く『飲料食品』、『定期購読の契約をした週2回以上発行される新聞』です。これらが軽減税率の適用を受けて、平成31年10月1日以降も8%に据え置かれることになります。実務上で問題になりそうな点を以下で解説します。
(1)飲料食品の定義とは?
軽減税率制度の飲食料品の定義は、食品表示法に規定する食品をいい、酒類は除きます。なお、外食やケータリング等は、対象品目には含まれません。
(2)外食とテイクアウト
外食は軽減税率の対象外です。店舗等でサービスと一体となって提供されるような食料品は、単なる飲食料品ではないため、軽減税率の対象外という考えからです。
なお、飲食店業等が行うものであっても、テイクアウトは、単なる飲食料品の譲渡という考えから、軽減税率の対象(すなわち8%)となります。
(3)ケータリング・出張料理等と出前・宅配
ケータリング・出張料理等は、外食と同様にサービスを伴う飲食料品の提供ということで、軽減税率の対象となりません。一方、出前・宅配等、単に飲食料品を届けるだけのものは、軽減税率の対象(すなわち8%)となります。ここはややこしいのですが、料理だけではなくサービス提供行為を伴うものは、軽減税率の対象となりません。
(4)一体資産とは?
この制度では、一体資産というものが定義づけられています。これは、おもちゃ付きのお菓子などが該当し、食品とそれ以外のものが一体となって販売されているようなものです。
一体資産は、税抜価額が1万円以下であって、食品の価額の占める割合が2/3以上の場合、全体が軽減税率の対象(すなわち8%)となります(逆に言うと、1万円以上、もしくは、食品の価額の占める割合が2/3未満のものは、全体が軽減税率の対象となりません)。
(5)「定期購読の契約をした週2回以上発行される新聞」の定義は?
軽減税率の対象となる新聞とは、一定の題号を用い、政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載する週2回以上発行されるもので、定期購読契約に基づくものです。
週刊誌などは含まれません。なぜ新聞だけ優遇されるのか?という違和感はありますが。。
2.仕入れ・経費を払う側の企業の対応
(1)軽減税率対象品目かどうかを確認したうえで記帳する
ほとんどの中小企業(個別対応方式を行っているような企業は除きます)は、軽減税率導入前は、消費税がかかる取引か、かからない取引を区別すれば、ほぼ事足りていました。
今後は、免税事業者以外は消費税がかかる取引の中でも軽減税率対象品目かどうかの判断が必要になります。当然、会計システムへの入力も軽減税率対象品目かどうかを識別したうえで入力する必要があり、会計システム自体も軽減税率へ対応したものが必要になります。これは結構な手間になると思います。
(2)仕入税額控除の要件
消費税は、預かった税額から支払った税額を差し引いて計算しますが、”支払った税額”を差し引く上では一定の帳簿の要件が定められています。
軽減税率制度開始後は、従来の要件に加えて、”軽減税率の対象品目である旨”を帳簿に記載にすることが求められます。なお、以下のとおり都度記載しなくとも、記号で代替することも可能です。また、請求書には”軽減税率対象品目である旨や税率の異なるごとに合計した税込金額の記載”が求められますが、ない場合は、仕入先に確認して、自社で追記することも可能とされています。
3.売上側の企業の対応
(1)軽減税率に対応したレジや会計システムなど
軽減税率の対象となる商品を扱っている事業者の方は、現在お使いのレジ等が軽減税率に対応しているかを確認する必要があります。
軽減税率が導入された後は、当然、事業によって複数の税率を使い分けなければいけないケースが出てきます。準備ができていなければ、その時に混乱を招いたり、売上や消費税の計算を間違えたりする可能性があります。お使いのレジ等が複数税率に対応しているか確認し、軽減税率への対応を済ませておきましょう。
なお、軽減税率対策補助金いうものもありますので、今後、軽減税率のための投資を検討されている方はチェックしてみてください。
(2)請求書で対象項目かどうかの明示化
軽減税率対象品目の売上げがある場合、請求書等に軽減税率対象品目である旨や税率の異なるごとに合計した税込金額を記載し、交付する必要があります。システムを使って請求書を発行している事業者は当然システム会社側が対応するでしょうが、自社で作成・発行されている場合は注意が必要です。
(3)仕入れと同様に、軽減税率対象品目かどうかを区分したうえで記帳する
従来も、課税、非課税、不課税などの区分が必要でしたが、今後は税率の区分も必要になります。頻繁に発生する場合は、レジや請求書発行から自動で仕訳が集計されるような仕組みを構築する必要があります。
(4)免税事業者も税額を明記した請求書の発行が必要
2.(2)の要件を仕入れ側の事業者が満たすため、売上側の事業者は、たとえ免税事業者であっても、請求書等に軽減税率対象品目である旨や税率の異なるごとに合計した税込金額の記載が求められることになります。
まとめ
軽減税率制度の開始により事業者は様々な対応を求められます。
特に、自社が誤って請求書等を発行してしまうと、取引先の税額計算を誤らせる可能性が大いにありますので、注意が必要です。
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