1.72017
消費税の還付の仕組みと申告から入金までの期間
消費税は「8%分支払うもの」というイメージをお持ちかと思いますが、会社の状況によっては、戻ってくることがあります。
消費税の納付額は、預かった消費税から支払った消費税を差し引いた額で計算され、これを国に納税します。逆に、支払った消費税が預かった消費税よりも多い場合は消費税を払いすぎているということになり、その差額は、国から還付されることになります。
還付されるには事前に必要な手続きをするなどの基本的な要件があります。また、具体的にどのような場合に消費税が還付されるのかの例を示しながら、消費税還付の基本的な仕組みについて解説します。
Contents
1.消費税の還付ができるのは「課税事業者」かつ「原則課税」
(1)課税事業者と非課税事業者とは?
消費税は規模の小さな会社は納税する必要がないという特例があります。この特例を受ける会社を免税事業者と言います。(具体的な判定方法は、事業を開始当初こそ知っておきたい。消費税の簡易課税と原則課税の違いとは?をご覧下さい。)
ただし、この特例を受けて免税事業になると、消費税の還付を受けることができません。あらかじめ、支払う消費税が預かる消費税よりも多いと想定される場合は、課税事業者となるため、納税地を所轄する税務署長に「消費税課税事業者選択届出書」を提出することが必要です。この届出書は原則として、適用しようとする課税期間の開始の日の前日まで(事業開始の初年度は、その期間中)に提出することが必要です。
この届出書を提出した事業者は、原則として、課税選択によって納税義務者となった最初の課税期間を含めた2年間(※特定の場合は3年間)は免税事業者に戻ることはできません。なお、要件が揃って免税事業者に戻る場合には、前課税期間中に「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出する必要があります。
課税事業者になると会計処理としては複雑になりますし、2年間は戻ることができませんので、わずかに支払う消費税が多いと見込まれる程度であれば、選択する必要はないと思います。これは経営者の考え方次第なところはあります。しかし、下記2.の具体例に該当するような場合は、課税事業者を選択したほうがよいです。
※調整対象固定資産(棚卸資産以外の資産で、建物及びその付属設備等で一の取引単位の価額が100万円以上のもの)の課税仕入れや調整対象固定資産に該当する課税貨物の保税地域からの引取りを行った場合には、その調整対象固定資産の仕入れ等の日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間の初日以後でなければ消費税課税事業者選択不適用届出書を提出することができません。さらに、(2)で説明する簡易課税制度も選択することもできません。
(2)簡易課税と原則課税とは?
簡易課税制度は、これも規模の小さな会社(免税事業者になるほどは小さくない)に認められた、課税事業者の中の支払った消費税の簡易的な計算方法が認められた制度です。(こちらも具体的な判定方法は、事業を開始当初こそ知っておきたい。消費税の簡易課税と原則課税の違いとは?をご覧下さい。)
原則課税によった場合は、預かった消費税と支払った消費税を日々の取引の積み上げにより計算をして、その差額を納税するまたは還付されます。
一方、簡易課税制度によった場合は、預かった消費税は同じく日々の取引により積み上げて計算をしますが、支払った消費税(控除対象仕入税額と呼びます)は、「預かった消費税額×みなし仕入率」で求めます。簡単に言うと、預かった消費税にみなし仕入れ率という一定割合を掛け算して、(実際の支払った消費税の大きさとは無関係に)支払った消費税を計算します。一定割合よりも多く実際に消費税を支払った場合は損しますし、一定割合よりも少なく実際に消費税を支払った場合は得をします。みなし仕入れ率が100%を超えることはありませんので、簡易課税制度によった場合は基本的に還付はありません。
2.消費税の還付が発生するのはどのような企業か?
具体的にどのような会社が還付の対象となるのか、ご自身の会社の状況に合致するのかを以下の例でご確認ください。
(1)開発型ベンチャーなど、仕入れや経費が先行する赤字の会社
開発型のベンチャーですと、億単位の赤字が出ることが珍しくありません。また、そこまでいかなくとも会社設立当初は赤字の場合が多いと思います。
売上よりも仕入や経費などの支出のほうが金額が多いと、預かった消費税より支払った消費税が多くなるのでその差額分を消費税の還付としてもらうことができます。
ただし、費用の大部分が人件費の場合など、消費税の課税対象ではないものが多い場合は、赤字だからといって、消費税の計算上は還付があるとは限りません。
(2)大規模な設備投資を行った会社
建物やその附属設備を購入したり、建物を賃借してその内外装費や設備を購入する場合など、大規模な支出がある場合も、支払った消費税の方が多いことがあるでその差額分を消費税の還付としてもらうことができます。
飲食店などの店舗型ビジネスを行っている場合の初年度に該当するケースが多いです。
例えば初年度に税込で1500万円かけて飲食店を開業したとすると、1500万円/108×8=111万円の消費税を支払うことになります。仮に、営業開始後に預かった消費税と支払った消費税が同程度だったとすると、約111万円が還付されることになります。ただし、敷金・保証金など店舗型ビジネスの初期投資であっても消費税の対象にならない支出もありますのでご注意ください。
(3)売上が輸出メインの会社
売上が輸出メインの会社は、売上について消費税が免税され、預かった消費税がほとんど発生しませんので、支払った消費税の方が多いことがほとんどで、その差額分を消費税の還付としてもらうことができます。
国内の事業者が輸出する場合、その売上にかかる消費税は免除されることになっています。一方、輸出のために国内で行う仕入・経費などは消費税が課税されるので、「支払った消費税」は経常的に発生するため、その分の還付を受けることができます。
3.消費税の還付の手続きと還付されるまでの時期
消費税の還付金の受取方法は、確定申告のときに指定する口座に振込まれる方法と、ゆうちょ銀行などで受け取る方法を選択できます。
また、還付金の税務署による支払手続きには、申告書を提出してから、1ヶ月から2ヶ月程度かかります。これは税務署の混み具合などから一概に言えないため、資金繰り表などの計画を作成する場合は、余裕をもって2ヶ月程度を見込んでください。さらに、資金が切迫している状況であれば、可能な限り早めに還付を受けるために、申告書を早めに出すことをオススメします。
4.まとめ
課税事業者の選択は、法人の場合、設立の最初の事業年度中に行う必要があり、これを過ぎるといくら支払った消費税が多くとも還付を受けることができず、会社にとっては大損害となってしまう場合があります。また、シミュレーションを誤って、「結局免税事業者の方が得だった。。」となるケースもありますので、扱う金額が大きい場合は専門家にアドバイスをもらいならがシミュレーションをすることをオススメします。
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