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個別対応方式と一括比例配分方式の違い

個別対応方式と一括比例配分方式の違い

消費税の納税額は基本的に以下のとおり計算されます。

(①預かった消費税等-②支払った消費税等)×税率=国に納める消費税

”支払った消費税等”で一番大きい金額は、”控除対象仕入税額”と呼ばれるものです。この”控除対象仕入税額”の算出方法は、一般課税(原則課税)と簡易課税があり、さらに一般課税は個別対応方式と一括比例配分方式があります。

今回は、②の”支払った消費税等”の計算の中の”控除対象仕入税額”について詳しく解説します。

1.消費税の一般課税(原則課税)と簡易課税

預かった消費税等から差し引く”支払った消費税等”は以下の3つに区分されます。

  • 控除対象仕入税額
  • 返還等対価にかかる税額
  • 貸倒れにかかる税額

支払った消費税については、全て差し引くことができるわけではなく、一定の計算を経て算出されます。差し引くことができるもので最も大きいものは”控除対象仕入税額”と呼ばれるものです。”控除対象仕入税額”は”課税仕入れ”に一定の計算を加えて計算します。

最終的な納付税額は以下のとおり計算されます。

控除対象仕入税額控除対象仕入税額の計算方法には、大きく分けて2つあります。一般課税という原則的な方法と簡易課税という規模の小さな事業者のみが選択できる方法です。

”返還等対価にかかる税額”は返品等があった場合、”貸倒れにかかる税額”は貸倒れが発生した場合に発生するもので、納税額から控除されることになっています。

2.一般課税の場合の控除対象仕入税額の計算方法は?

一般課税の場合、控除対象仕入税額の計算は以下のとおり行います。

(1)課税売上割合の計算

まずは、課税売上割合というものを計算します。課税売上割合

全体の売上の中の非課税売上の割合が多ければ多いほど、課税売上割合は下がります。

(2)課税仕入れの集計

課税仕入れの集計を行います。これは、普段の仕訳を入力する時から、課税仕入れかどうかの区別をして会計ソフトに入力をしていれば、最後に自動集計してくれますので、決算での手間にはなりません。

課税仕入れとは、商品などの棚卸資産の仕入れ、機械や建物等の事業用資産の購入又は賃借、原材料や事務用品の購入、運送等のサービスの購入、そのほか事業のために購入したものなどをいいます。事業のための購入であれば、仕入先が免税事業者や消費者の場合でも課税仕入れになります。免税事業者からの仕入れが課税仕入れとなるのは違和感があるかもしれませんが、付加価値に課税するという消費税の性質からそのような扱いになっています。
ただし、土地の購入・賃借などの非課税取引、課税対象とならない給与、賃金の支払いなどは課税仕入れには含まれません。

なお、建物などの減価償却資産であっても、それらの資産を購入した課税期間(事業年度)において、その購入価額の全額に対する消費税の額が仕入税額の控除の対象になります。減価償却のように何年かにわけるという考え方は、原則ありません。

(3)課税仕入れにかかる消費税額の計算

課税仕入れにかかる消費税額の計算式は以下のとおりです。国税が6.3%、地方税が1.7%となり、申告書上は国税分の納税額をまず計算することになっています。

課税仕入税額

3.個別対応方式か一括比例配分方式かは選択できる

2.(3)で求めた金額が、原則として控除対象仕入税額となります。

ところが、課税売上高が5億円を超える、または、課税売上割合が95%未満の会社は、2.(3)で求めた”課税仕入れにかかる消費税額”のうち、課税売上に対応する部分のみを控除対象仕入税額とする調整計算が必要になります。

この配分方法には、個別対応方式と一括比例配分方法があり、会社の方で選択可能です。

ただし、一括比例配分方式によることにした事業者は、一括比例配分方式により計算することとした課税期間の初日から、同日以後2年を経過する日までの間に開始する各課税期間においては、一括比例配分方式を継続適用しなければなりません。

一括比例配分方式は簡便な方法になるのですが、一度選択したら個別対応方式にはすぐには戻せません。どちらが有利不利かは、2年単位で判断しなければなりません。

4.個別対応方式のメリット

(1)個別対応方式の概要

個別対応方式は算式は以下のとおりです。

課税売上に要する課税仕入れは全額を控除でき、共通のものは課税売上割合に応じて控除できます。課税売上に要しないものは控除することができません。

個別対応方式

(2)個別対応方式のメリット・デメリット

①メリット:税額が少ない場合が多い

一般的には、一括比例配分方式よりも個別対応方式によって計算したほうが税額上有利になることが多いです。もちろん、ある程度のシミュレーションは必要です。

②デメリット:事務負担が大きい

課税売上に要する課税仕入れ、共通のもの、課税売上に要しないものの3つに区分する必要があり、事務負担が増えます。

実務上は、業種・取引の数や種類の多さにより異なりますが、それなりの作業量を要します。

5.一括比例配分方式のメリット

(1)一括比例配分方式の概要

一括配分方式は算式は以下のとおりです。

課税売上に要する課税仕入れ、共通のもの、課税売上に要しないもの、全て課税売上割合に応じて控除できます。

一括配分方式

(2)一括比例配分方式のメリット

個別対応方式の逆になります。

①メリット:事務負担が小さい

課税売上に要する課税仕入れ、共通のもの、課税売上に要しないものの3つに区分する必要がなく、事務負担が小さいです。

②デメリット:税額が多い場合が多い

絶対ではありませんが、一般的には、一括配分方式よりも個別対応方式によって計算したほうが税額上有利になることが多いです。

6.簡易課税とは?

簡易課税制度とは、”みなし仕入率”というものを用いて仕入れ税額控除を計算する方法です。

簡易課税制度は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の会社が届出書をあらかじめ提出した場合にのみ認められます。提出期限は、適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで(事業を開始した日の属する課税期間である場合には、その課税期間中)です。

詳しくは、事業を開始当初こそ知っておきたい。消費税の簡易課税と原則課税の違いとは?をご覧下さい。

まとめ

個別対応方式と一括比例配分方式にはメリット・デメリットがあります。

注意したい点は、土地の売却など非課税売上が大きくなる取引がある場合、課税売上割合が大きく下がりますので、一括比例配分方式を採用していると個別対応方式よりもかなり不利になることがあります。

会社の業種、取引の数、取引内容などを総合的に勘案して、個別対応方式か一括比例配分方式かを選択する必要があります。

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