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消費税は切り捨て?端数計算はどうなるのか?

日々の取引においては、相手先の請求書に書いてある消費税の金額と、会計ソフトで自動計算された消費税の金額が1円異なるなどのケースはよく発生します。

その金額差が生じる原因は、相手先と自社で消費税の端数処理のルールが異なっているからということが多いです。そもそも消費税法上の端数処理のルールはどうなっているのでしょうか?また、異なっている場合、最終的にどう対処すれば良いのでしょうか?

1.売上側の消費税の端数処理の原則

消費税のルールでは、もらう側である売上と、支払う側である仕入れ・経費について、それぞれルールがあります。

まず、もらう側の売上の原則ルールを見ていきます。

ステップ1:課税標準額の計算

まず、課税標準額というものを算出します。

取引には、課税取引、非課税取引、免税取引、不課税取引があります。消費税の対象になるのは”課税取引”です。課税取引の受け取り側を集計したものを”課税売上高”とし、課税標準額は、108分の100を掛けて算出した金額となります。そして、この金額に1,000円未満の端数があるときは、その端数を切り捨てます。

課税標準額=課税売上高(税込み)×100/108
※1,000円未満は切り捨て

ステップ2:課税標準額から消費税額を計算

消費税額の算出方法は、原則として、課税標準額に6.3%の税率を掛けて算出します。

なお、6.3%は国税分であり、残りの地方税分の1.7%は申告書上、最後に計算します。

消費税額=課税標準額×6.3%

つまりは、個々の取引で端数処理をすることはせずに、1年間の税込の売上を全て集計して、税抜き換算するときに一度だけ1,000円未満を切り捨てる、というのが原則的な方法です。

2.売上側の消費税の端数処理の特例

上記が原則になりますが、端数処理に関しては特例が定められています。

(1)外税方式による端数処理の問題点

平成16年3月までは、消費税の表示方法は外税方式が主流でした。そのため、税抜価格に税率を乗じて、端数が生じた場合にはこれを切り捨てることとし、受け取らない事業者が少なくありませんでした。

取引数が何万件、何十万件の発生するような事業者は、切り捨てられた消費税の額だけでも大きな金額になります。原則どおりの計算をしていると、受け取っていない消費税を支払うことになり、結果として小売の事業者の負担が大きくなる恐れがありました。

(2)端数処理に関する特例

そこで、個々の取引の消費税の端数を処理した金額を積み上げ計算し、課税標準額に対する消費税額とすることできる特例が設けられていました。この方法によると、実際に顧客から預かった消費税だけが、消費税の計算上の預かり消費税となるため、”預かった消費税額以上の消費税を支払う”ということは避けられていました。

なお、現在も、個々の取引の端数を計算するときは、切り捨てか四捨五入かは選択できるとされています。

(3)平成16年4月以降の取扱い

平成16年4月以降、対消費者取引については、消費税の総額表示が義務付けられたため上記の特例は廃止されました。スーパーやファミリーレストランなどの飲食店で、一斉に税込表示になった記憶がある方もいらっしゃると思います。

一方、事業者間取引については、総額表示の義務がなく従来どおりの規定が適用されるなど、経過措置が設けられています。

3.売上側の消費税の端数処理の特例-平成26年4月1日以降の取扱い

平成26年4月1日以降、消費者に対して総額表示をしなくてもよい特例の適用を受ける事業者にも、当分の間、従来通りの積み上げ計算が認められています。これは、以下のとおり、事務負担の軽減の観点からです。

「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」(消費税転嫁対策特別措置法・平成25年10月1日施行)第10条で、二度にわたる消費税率の引上げに際し、消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保及び事業者による値札の貼り替え等の事務負担に配慮する観点から、総額表示義務の特例として、平成25年10月1日から平成30年9月30日までの間(注)、「現に表示する価格が税込価格であると誤認されないための措置」を講じていれば税込価格を表示することを要しないこととされました。

国税庁HPより

経過措置については以下の通りです。

(1)税抜価格での事業者間取引について

事業者間取引については、総額表示が義務付けられていないため、従来通りに個々の取引の消費税の端数を処理した金額を積み上げ計算して、課税標準額に対する消費税額とすることができます。これを適用するためには、領収書等の証憑に税抜価格の合計額と端数処理後の消費税相当額を明示することが必要です。明示方法は、”税抜価格100円、消費税額等7円”などです。

(2)税抜価格で対消費者取引について

8%の税率引き上げに際して、対象消費者取引についても、一時的に税抜価格での表示が認められることとなったため、事業者間取引同様に積み上げ計算ができます。

(3)税込価格での取引について

顧客から受け取る代金に含まれる消費税相当額の1円未満の端数を処理した後の金額を領収書等の証憑に明示していれば、個々の取引の消費税の端数の処理した金額を積み上げ計算し、課税標準額に対する消費税額とすることができます。

4.消費税の総額表示とは

平成16年4月1日から総額表示が義務付けられました。この総額表示とは、消費者に対して価格表示する際に消費税を含めた価格を表示しなければならないというものです。その表示方法としては次のような方法が認められています。

  • 10,800円
  • 10,800円(税込)
  • 10,800円(税抜価格10,000円)
  • 10,800円(うち消費税額等800円)
  • 10,800円(税抜価格10,000円、消費税額等800円)

ただし、平成25年10月1日から平成29年3月31日までの間は、現に表示する価格が税込価格であると誤認されないための措置を講じている場合に限り、総額表示をしなくても良いことになっています。総額表示義務の特例措置の適用を受けるために必要となる誤認防止措置としての表示は、消費者が商品等を選択する際に、明瞭に認識できる方法で行う必要があり、以下のような表示の仕方になります。

例1
値札、チラシ、ポスター、商品カタログ、インターネットのウェブページ等において、商品等の価格を次のように表示する。

総額表示

例2

 個々の値札等においては「○○円」と税抜価格のみを表示し、別途、店内の消費者が商品等を選択する際に目に付きやすい場所に、明瞭に、「当店の価格は全て税抜価格となっています。」といった掲示を行う。

国税庁HPより

5.課税仕入れに係る消費税額の端数処理

仕入れや経費などの支払う側の消費税である”課税仕入れに係る消費税額”は、原則としてその課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る支払対価の額の合計額に108分の6.3を掛けて計算した金額です。なお、1円未満の端数は切り捨てます。

”課税仕入れの係る支払対価の額”は、仕入れや経費などの支払いの中で、消費税の申告上、差し引き計算できるものの税込金額を言います。

課税仕入れに係る消費税額=課税仕入れに係る支払対価の額×6.3/108
※1円未満は切り捨て

ただし、課税仕入れの都度課税仕入れに係る支払対価の額について、税抜経理方式により経理処理を行う場合に次の処理をしているときは、下記の参照のような処理が認められます。

下記の参照は、ざっくりいうと取引の相手方の領収書又は請求書で、消費税額を区分しているのならば、端数処理はそれに従って良いということです。

また、相手方が区分していない場合で、ご自身が8パーセント分の仮払消費税等の処理を継続して行っているときは、その金額をベースに申告上差し引き計算して良いとされています。なお、この場合に取引の都度発生する端数処理は、切捨て又は四捨五入する、ということで選択できることになっています。

(1) その課税仕入れの相手方が、領収書又は請求書などに1円未満の端数を処理した後の消費税及び地方消費税の合計額(以下「消費税等相当額」といいます。)を本体価額と区分して記載している場合、すなわち、「No.6383 課税標準額に対する消費税額の計算の特例」の経過措置1又は3(「消費税及び地方消費税相当額を区分領収している場合の申告税額の計算」(旧規則第22条第1項))を適用できる事業者からの課税仕入れについては、課税期間中におけるその請求書等に別記された消費税等相当額を仮払消費税等として経理し、その課税期間中における仮払消費税等の合計額の80分の63に相当する金額を課税仕入れに対する消費税額とすることができます。

(2) その課税仕入れの相手方が、領収書又は請求書などに税込価格とその税込価格に含まれる1円未満の端数を処理した後の消費税等相当額を記載している場合、すなわち、「No.6383 課税標準額に対する消費税額の計算の特例」の経過措置2(「税込価格を基礎とした代金決済を行う場合の課税標準額に対する消費税額の計算に関する経過措置」(平15改正消費税法施行規則附則2条3項))を適用できる事業者からの課税仕入れについては、請求書等で明示されている消費税等相当額を仮払消費税等として経理し、その課税期間中における仮払消費税等の合計額の80分の63に相当する金額を課税仕入れに対する消費税額とすることができます。

(3) その課税仕入れの相手方が、領収書又は請求書などに消費税等相当額を記載していない場合、又は記載していても「No.6383 課税標準額に対する消費税額の計算の特例」の各経過措置が適用できないような端数処理を行っている場合の課税仕入れについては、請求の都度帳簿等において支払対価の額に108分の8を掛けた金額を仮払消費税等として経理する方法を継続して行っているときは、その課税期間中における仮払消費税等の合計額の80分の63に相当する金額を課税仕入れに対する消費税額とすることができます。
なお、この方法を適用する場合の、その取引ごとに行う消費税等相当額の1円未満の端数処理は、切捨て又は四捨五入によります。
また、この方法は上記(1)又は(2)が適用できない場合について認められます。

国税庁HPより

まとめ

消費税法上の基本的な考え方は、”申告時に1年間のものを全部集計して、最後に一定のルールで切り捨て処理する”というものです。よって、日々の取引の消費税の端数処理は、切捨てでも、四捨五入でも、切上げでも、全てOKということになり、相手先との端数処理の相違については気にする必要はないのです。

一方、特例措置として、日々の積み上げ計算で算出された金額を申告書上の金額として良いというルールもあります。これを採用する場合には、相手先と端数処理の仕方を合わせたほうが効率的です。会計ソフトに設定しておけば端数処理を自動的に計算してくれるためです。

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