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消費税10パーセントへの増税時期はいつか?2年半延期へ

少し前の話題になりますが、消費税の増税のタイミングが延期されました。
10パーセントへの増税は、2019年10月からになりました。消費税の増税の歴史を振り返り、また、増税の背景・企業へ与える影響を考えます。

1.消費税導入のから増税の歴史

消費税増税の歴史を振り返ってみます。振り返ってみると、日本は首相がよく変わりますね。。。

1988年12月:竹下登政権時に消費税法成立。翌年4月に施行し、消費税率は3パーセントでスタート。そういえばこの時期に自動販売機のジュースが100円から110円になりましたね。

1994年2月:細川護煕政権時に消費税を廃止して税率7パーセントの”国民福祉税”の構想を発表しましたが、発表翌日に早くとも撤回!。。こんな事件がありました。

1997年4月:橋本龍太郎政権時に消費税率を5パーセントに引き上げが行われました。「私は平成9年から10年にかけて緊縮財政をやり、国民に迷惑をかけた。本当に国民に申し訳なかった。これを深くお詫びしたい」「財政再建のタイミングを早まって経済低迷をもたらした」との発言がありました。政治的に消費税増税は本当に難しいです。

2014年4月:2012年6月に野田佳彦政権時に消費税率を2014年に8パーセント、15年に10パーセントに引き上げる法案を提出、参院本会議で可決成立。2014年4月時点では、安倍晋三氏が首相になっていました。

2014年11月:2015年10月の税率10パーセントへの引き上げを2017年4月に1年半延期。

2016年6月:ここで再び延期。2017年4月の税率引き上げを2019年10月に2年半延期。

2.増税時期延長の背景

2016年6月に増税時期延長した背景は、以下のとおりだと考えられます。

(1)選挙への影響

消費税10パーセントへの増税の延期は、2014年11月の決定に続いて、今回が2回目になります。

政府は当初、再延期の期間について「1年半」または「2年」で検討していました。しかし、2年未満では、10パーセントへの増税のタイミングが31年4月の統一地方選と重なり、31年夏の参院選も迫ってくる状況になってしまいます。

さらに、安倍首相の自民党総裁任期は30年9月末に満了となります。2年半の再延期ならば、任期中は増税判断に関係なく、有利なタイミングで衆院解散に踏み切ることができます。次の任期も見据える安倍首相にとっては、メリットが大きいと言われています。

(2)2年半延期すれば、景気が回復しているという期待

政府は、基礎的財政収支(プライマリーバランス)の32年度黒字化目標は維持する方針のようです。

32年度黒字化に向けて、景気が今よりも回復して、所得税・法人税等も税収アップが図られている必要がありますが、このタイミングでの消費税の増税は景気回復の足かせになるという判断がされました。

さらには、オリンピックにより景気刺激により、消費税増税によるマイナスのインパクトとの相殺も期待されます。

(3)社会保障等の負担増から2年半延期以上は延期できないという危機感

政治的な思惑や景気回復のために、このタイミングでの増税延期は致し方ないかもしれません。

しかし、社会保障等の負担は増え続けており、財政再建の観点からは少しでも早い増税が望まれます。

3.企業にとっての消費税増税の影響

(1)価格転嫁ができない場合は利益を圧迫する

消費税が増税されると、販売する金額の税込価格は増えることになります。今まで税抜き商品価格100円のものは、税込みで108円でしたが、2019年10月以降は10パーセントへ増税になるため、税込みで110円になります。理屈のうえでは増税分が最終的な税込価格にすべて上乗せされることになります。しかし、実際にはそう単純ではありません。消費税の増税分を上乗せすることができないということが発生する場合があります。

消費者にしてみれば、税金が含まれていようがいまいが、最終的な価格が高くなることに変わりはありません。消費者の購買意欲は下がることになり、この点が、景気対策と財政対策のバランスを取るという意味で政策的に難しいところです。小売店などは、売上げが減少する可能性がありますし、過去の増税のタイミングでは多く事業者の売上が減少しました。

仮に、売上の低下を防ぐために価格を据え置くと、増税分については小売店などが負担することになります。

(2)大企業と下請け業者の取引については監視されている

企業として考えることは、増税によって実質の売上が下がるのであれば、商品の仕入れ価格を下げようということです。増税負担分の売上げの減少は、同額の仕入れ価格の減少によって、カバーできれば、その小売店にとっては痛みはなく、全て仕入れ業者の負担になります。

注文を失いたくない仕入れ業者の中には、消費増税分を最終価格に上乗せできないという事態に陥る可能性があります。

政府はこうしたことを防ぐため、大企業と下請け業者の取引について監視を強化する方針を明らかにしています。経済産業省では数百人の転嫁Gメンを配置し、下請けに対する過度な値引き要求や消費税分の未払いがないか監視します。

ある日突然、公正取引委員会から連絡がくるということがないように、公正取引委員会の消費税転嫁対策コーナーなどを確認してください。

(3)消費税は”預かっているもの”のため、キャッシュフロー上の注意が必要

利益が出ている会社に関しては、特殊な場合を除いて、消費税を受け取った分と支払った分の差額の金額を預かって、あとで国に納付することになります。消費税率が高ければ高いほど、預かり金額が大きくなります。消費税を納税した直後に、「先月までキャッシュに余裕があると思っていたが、消費税の納税でこんなにキャッシュが減ってしまうのか!」という自体に陥りやすいです。消費税の納税の基本的なルールは以下のとおりです。

①確定申告・納付の基本的なルール

個人事業者は翌年の3月末日までに、法人は課税期間の末日の翌日から2か月以内に、消費税と地方消費税を併せて所轄税務署に申告、納付します。

ただし、金額が大きい場合は、中間納付が必要です。

②中間申告・納付について

直前の課税期間の消費税額が48万円を超える事業者は、次のとおり中間申告と納付を行わなければなりません。つまり、前年の消費税額が大きいほど、高頻度で納付する必要があります。

直前の課税期間の消費税額 中間申告・納付回数
48万円超400万円以下 年1回(直前の課税期間の消費税額の2分の1)
400万円超4,800万円以下 年3回(直前の課税期間の消費税額の4分の1ずつ)
4,800万円超 年11回(直前の課税期間の消費税額の12分の1ずつ)

4.まとめ

前半では、消費税の10パーセントに至るまでの増税の歴史をふりかえりました。

後半に記載の、価格転嫁の問題や、キャッシュフローの管理は注意が必要です。

以上、創業融資・ベンチャー起業・開業を支援する渋谷・港区の税理士・公認会計士の東京スタートアップ会計事務所でした。

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