12.122016
消費税の保存書類とその保管で守るべき4つのルール
消費税の課税事業者は、帳簿の保管については一定のルールが求められています。
消費税は受け取ったものから払ったものを差し引いて納税するわけですが、このルールが守られていないと、”払ったものを差し引くこと”ができなくなり、本来よりも多く納税しなくてはいけなくなる可能性があります。
今回は消費税の帳簿の保管のルールについて、解説します。
Contents
1.消費税の保存書類とその保管の基本的なルール
消費税の課税事業は、書類の保管に関しては以下のようなルールを守らなければなりません。
- 整然と、かつ、明りょうに記録する。
- ”記載事項”を記録したものであれば、商業帳簿でも所得税又は法人税における帳簿書類でもかまわない
→記載事項は、2.を参照下さい。法人税等と2重に作成する必要はなく、両方の要件を満たすように作成します。 - 課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日から7年間、事業者の納税地又はその事業に係る事務所等に保存しなければならない
→保管期間は7年間と定められています。自由に処分はできません。 - 仕入税額控除及び売上対価の返還等の適用を受けようとする場合には、一定の帳簿(仕入税額控除の場合は帳簿及び請求書等)の保存が要件とされる
→当然ですが、請求書等の保管が求められおり、これがないと”払ったものを差し引くこと”ができません。
保存書類は以下のとおりで、帳簿と請求書等の両方を備える必要があります。
2.消費税の記載事項の規定
帳簿に記載すべき事項は以下のとおりです。
- 課税仕入れの相手方の氏名又は名称
- 課税仕入れを行った年月日
- 課税仕入れに係る資産又は役務の内容
- 課税仕入れに係る支払対価の額
決算のときに、この情報を全て集めて整理するのは大変な手間です。日常の記帳業務において上記の点を意識して必要事項を漏れなく記載する必要があります。
3.消費税の保存書類の”請求書等”とは?
保存書類である請求書等は、相手から入手するものだけではなく、自社で作成することもできます。ただし、自社で作成する場合は相手方の確認を受ける必要があります。
(1)保存書類である請求書等の種類と記載事項
請求書等の種類 | 請求書等への記載事項 |
---|---|
取引の相手方から交付を受ける、請求書、納品書等(注1) | ①書類作成者の氏名又は名称 ②取引年月日 ③取引内容 ④取引金額(税込み) ⑤書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称 |
仕入を行った事業者が自ら作成する仕入明細書、仕入計算書等(注2) | ①書類作成者の氏名又は名称 ②相手方の氏名又は名称 ③取引年月日 ④取引内容 ⑤取引金額(税込み) |
課税貨物を保税地域から引取る事業者が税関長から交付を受ける輸入許可書等 | ①保税地域の所轄税関長 ②引取可能年月日 ③課税貨物の内容 ④課税標準の金額並びに輸入消費税額及び輸入地方消費税額 ⑤書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称 |
(注1) 小売業、飲食店業、写真業、旅行業等を営む事業者が交付する書類につきましては、⑤の記載を省略することができます。
(注2) その書類に記載されている事項について、取引の相手方の確認を受けたものに限ります。
(2)仕入明細書、仕入計算書等の相手方の確認の方法
保存する仕入明細書等に課税仕入れの相手方の確認の事実が明らかにされているもののほか、次のものが該当するとされています。なお、”相手方の確認の事実”とは相手にサインや押印をもらうことです。
- 仕入明細書等への記載内容を通信回線等を通じて課税仕入れの相手方の端末機に出力し、確認の通信を受けた上で自己の端末機から出力したもの
→電子的に相手が確認したことがわかるようにするためです。 - 仕入明細書等の写し等を課税仕入れの相手方に交付した後、一定期間内に誤りのある旨の連絡がない場合には記載内容のとおり確認があったものとする基本契約等を締結した場合における当該一定期間を経たもの
→わざわざ相手にサインや押印をもらうことは煩雑ですので、このような対応は現実的です。
4.消費税の保存書類の”請求書等”の特例
(1)課税仕入れにかかる支払対価の額の合計が3万円未満の場合
税込みの支払額が3万円未満の場合には、請求書等の保存を要せず、法定事項が記載された帳簿の保存のみでよいこととされています。この「合計額が3万円未満」かどうかは、1回の取引の税込みの金額が3万円未満かどうかで判断します。
(2)保存書類である請求書等の交付を受けなかったことにつきやむを得ない理由がある場合
税込みの支払額が3万円以上であっても請求書等の交付を受けなかったことにつき、やむを得ない理由がある場合には請求書等の保存がなくても仕入税額控除ができます。この場合には、法定事項を記載した帳簿にそのやむを得ない理由及び相手方の住所又は所在地を記載しなければならないこととされています。
(3)やむを得ない理由に該当する範囲
やむを得ない理由に該当する範囲は以下のとおりです。
- 自動販売機を利用して課税仕入れを行った場合
- 入場券、乗車券、搭乗券等のように、課税仕入れに係る証明書類が相手方により回収される場合
- 課税仕入れを行った者が相手方に請求書などの交付を請求したが、交付を受けられなかった場合
- 課税仕入れを行った課税期間の末日までに、その支払額が確定していない場合
(この場合には、その後支払額が確定したときに課税仕入れの相手方から請求書等の交付を受けて保存することになります。) - その他、これらに準ずる理由により請求書等の交付を受けられなかった場合
上記については帳簿の保存があれば仕入税額控除ができますが、保存する帳簿に「やむを得ない理由」と課税仕入れの相手方の住所又は所在地の記載をしなければなりません。
(4)請求書等の記載内容は次のような方法も認められている
- 課税期間の範囲内で、一定の期間内の取引をまとめて記載する方法
→電気、ガス、水道水等のように継続的に供給されるもので、一定期間ごとに供給量を検針し、その結果により料金を請求するという取引の場合は、まとめて良いとされています。 - 商品名等について、個々の名称でなく包括的な記載であっても、課税資産の譲渡等に当たることを明らかにする方法
→この場合、非課税取引が含まれていないか注意が必要です。 - 商品名を記号や番号などで表示してあっても、記号表などにより、課税資産の譲渡等に当たることを明らかにする方法
→作業効率化のため、小売事業者などは必要であれば積極的に取り入れたい方法です。ただし、自動仕訳などでこの問題を解決している事業者も多いです。
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