12.232016
会計監査人設置会社は法人税の申告期限を決算日の最大6カ月後まで延長へ
与党は平成28年12月8日に平成29年度税制改正大綱を決定しました。
法人課税に係る「コーポレートガバナンス改革・事業再編の環境整備」では,株主総会日の柔軟な設定を促進するため,会計監査人設置会社は法人税の申告期限を事業年度終了後から6カ月後まで延長可能にすることなどが打ち出されました。これは、株主総会期日の分散化を促進して、企業と株主・投資家との充実した対話を促すため、例えば3月期 決算企業が株主総会を7月以降に開催する場合、株主総会後に法人税の申告を行うことを可能とするものです。
Contents
1.コーポレートガバナンス改革・事業再編の環境整備の3ポイント
法人課税については,「競争力強化のための研究開発税制等の見直し」,「賃上げを促すための所得拡大促進税制の見直し」などの改正方針が打ち出されています。このうち,「コーポレートガバナンス改革・事業再編の環境整備」に係る主なポイントは,以下のとおりです。
- 株主総会日の柔軟な設定を促進するために,法人税の申告期限を事業年度終了後から6カ月後まで延長可能になりました。
→現行は3カ月後までですので、3ヶ月延長されました。 - 業績連動報酬等の導入を促進するため,役員給与の損金算入対象を拡大
→損金算入の対象となる利益連動給与の算定指標に「株式の市場価格の状況を示す指標」、「売上高の状況を示す指標」等が加えられました。なお,28年度税制改正では,利益連動給与の算定指標にROEやROA等も含まれることが明確化されました。 - 機動的な事業再編を可能にするため,企業内の事業部門の分社化等の際の組織再編税制を整備
→スピンオフなどが機動的に可能になりました。
2.7月株主総会開催の場合は,7月の申告が可能に
(1)経産省は、株主総会日の後ろ倒しを提案
株主総会日については,「決算日から株主総会日までの期間が短い(欧米諸国は4~5カ月後)」「招集通知から株主総会日までの期間が短い(欧米諸国は1~2カ月)」との指摘もありました。このため,投資家が議案を検討できる期間や,情報開示の準備期間を十分に確保する方策として,経済産業省は株主総会日の後ろ倒しを提案していました。
(2)会社法の改正に合わせて、法人税の申告期限の延長も
ただし,現行では、法人税では、事業年度終了後から3カ月(原則2カ月。特例で1カ月延長可能)後までに確定した決算に基づく申告を行う必要があります。仮に、3月決算の会社が7月に定時株主総会を開催し,そこで決算を確定する場合には、申告期限に間に合わないという事態になってしまいます。
(3)特定の場合に、申告期限を事業年度終了後から6カ月後まで延長することを認める
このため,今回の改正で,会計監査人設置会社が定款等により事業年度終了日の翌日から3カ月以内に定時株主総会を開催しない場合は,申告期限を事業年度終了後から6カ月後まで延長することを認めることとなりました。つまり,3月末決算会社が7月に定時株主総会を開催する場合は,9月末まで申告期限を延長することができます。
3.業績連動報酬導入促進で損金算入対象拡大
業績連動報酬の活用促進のため,役員給与の損金算入対象を拡大する等の措置が講じられました。損金算入の対象となる利益連動給与の算定指標に「株式の市場価格の状況を示す指標」および「売上高の状況を示す指標」等が加えらます。なお,28年度税制改正では,利益連動給与の算定指標にROEやROA等も含まれることが明確化されました。また、算定期間は単年から複数年の指標も対象となります。
4.スピンオフを課税繰延の対象へ
特定事業を切り出して独立会社とするスピンオフ等の円滑な実施を可能とする等の措置が講じられました。現行制度下ではスピンオフについて課税繰延措置が受けられないことが障害となっていたため,スピンオフを課税繰延の対象とします。
5.まとめ
上場会社等の会計監査人設置会社は、法人税の申告期限を決算日の最大6カ月後まで延長できることとなりました。
これにより、企業の負担集中が軽減できるとともに、会計士や監査法人の負担の分散も期待されます。
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