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少額減価償却資産か?一括償却資産か?少額資産か?早期償却処理のポイント

償却資産

購入した資産については、数年に渡って減価償却するよりも、購入した年度に経費処理したほうが節税できる、ということはご存知の方も多いと思います。

処理の違いによる具体的なキャッシュフローへの影響と、一括で経費処理するもしくは減価償却期間を短くするためのポイントを解説します。

1.固定資産処理と経費処理のキャッシュフローの違いは?

資産を購入した場合に、経費処理と5年償却したときのキャッシュフローの違いは以下のとおりです(税率35%の前提)。

経費として処理した年度に税金計算上の所得金額が同額減りますので、所得に税率を乗じて計算される税額が、経費処理額×35%減る(=節税効果が発生)ということになります。

年度ごとのキャッシュフロー
1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 合計
経費処理
資産購入費 △100万円 △100万円
節税効果 +35万円 +35万円
合計 △65万円 △65万円
5年償却
資産購入費 △100万円 △100万円
節税効果 +7万円 +7万円 +7万円 +7万円 +7万円 +35万円
合計 △93万円 +7万円 +7万円 +7万円 +7万円 △65万円

※税率35%で、毎年利益を出している会社が前提です。

ご覧のように、キャッシュフローは5年のトータルでは変わりません。しかし、先行してキャッシュアウトが抑えられた方が、その分投資や広告費に使えるわけですから、財務の観点からは経費処理の方が当然有利と言えます。

2.早期の処理が認められているもの

そもそも固定資産とは、1年以上使える資産をいいます。固定資産は、購入時に資産として計上し、国が定めたほ法定耐用年数で減価償却し、耐用年数にわたって費用化していくことが原則になっています。

一方、一定の範囲内で全額経費処理や短期での償却が認められています。

(1)少額資産

以下のいずれかのものを言い、購入時に全額経費処理できます。

①取得価額が10万円未満

少額の文房具等は数年使うものもあると思いますが、全て固定資産として処理していくと非常に煩雑になってしまいます。

そこで税法上は10万円未満は経費処理してよいこととされています。(詳しくは、国税庁HP:少額の減価償却資産になるかどうかの判定の例示

金額が10万円未満であれば、何年使えるかどうかは検討することなく、機械的に経費処理することができます。

ただし、「通常1単位として取引されるその単位ごとに判定」することとされています。例えば、応接セットであれば、机や椅子をそれぞれ10万円の基準で判断するのではなく、応接セット1組を10万円の基準で判断する必要があります。

②使用期間が1年未満のもの

減価償却の期間は、通常税法上で細かく定められた耐用年数の期間に従います。ただし、耐用年数が定められたものであっても、使用可能期間が1年未満であれば経費処理できます。

使用可能期間が1年未満であることを明確に示すことができれば経費処理することができます。

(2)取得価額が20万円未満の一括償却資産

取得価額が、20万円未満の場合には簡便的に3年間で償却する「一括償却」が認められています。

これは、一括して償却額や残存価額を管理して、個別管理は行いません。この一括償却資産は償却資産税はかかりませんので、その分はトータルの納税額が減り、キャッシュフローが純増します。

(3)取得価額が30万円未満の少額減価償却資産

中小企業者の特例として、30万円未満の資産を経費処理することができます。ただし、300万円が限度額です。(詳しくは、国税庁HP:中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

中小企業者の要件は、資本金の額が1億円以下の法人であることで、大規模の会社の子会社等は除かれてしまいます。

(4)中古資産

①中古資産は償却期間が短くなる

中古資産は、新規の資産よりも償却期間が短くなります。

耐用年数ー経過年数+経過年数×20%で算定することとされており、6年の耐用年数で2年使用しているものであれば、6年-2年+2年×20%=4.4年→4年(端数切捨て)となります。

なお、計算の結果、耐用年数が2年となり定率法を選択している場合は、償却率が 100%になり、実質的に1年間で償却が可能となります。(その場合でも期の途中での取得は月割が必要ですので、要注意です)

②改装や改築のための支出が多い場合は適用なし

改装や改築のための支出(事業の用に供するために支出した資本的支出、といいます)が、中古資産の取得価額の50%に相当する金額を超える場合には、耐用年数の見積りをすることはできず、通常の耐用年数を適用することになります。

(5)建物や内装工事は細分化

建物の税法上の耐用年数は長いと30年を超えるものがあります。

建物や内装工事を行った場合に、支出額を建物1式として処理してしまうと、その建物の耐用年数に従って処理していく必要がありますので、実態からかけ離れた年数で償却しなければならなくなります。このようなときは、工事明細や見積書から資産を細分化して、加重平均で耐用年数を決めることになります。

設備投資型の事業は、資産の耐用年数の決め方が節税や決算書にきっちりと実態を反映させるという観点から非常に重要ですので、専門家にご相談することをお勧めします。

3.経費処理もしくは減価償却期間を短くするデメリット

なお、経費処理もしくは減価償却期間を短くするデメリットも存在します。

銀行から融資を受けようとしていたり、投資家から出資を受けようとしている場合には、利益の金額が重視されます。

何も考えずに経費処理すると、その分利益を押し下げ、形式的な基準で融資が受けれなくなってしまったり、出資検討のうえでマイナスポイントになる可能性もあります。節税の観点の他に、「決算書は適正な損益を示すためにある」ということを忘れてはなりません。

例えば、8万円のものを1,000個買って、それぞれが独立して使えるものであれば、8,000万円を経費処理できます。その場合でも、(会社の規模によりますが)損益に与える影響が大きく、かつ、1年以上使い続けるものであれば、複数年で償却するという選択肢もあります。

また、中古ベンツを買って節税するという話が流行りましたが、「いつか買いたいと思っていた資産について、節税効果もあるから今年買おう」というのであれば良いと思いますが、「あまり使わないかもしれないけど、節税効果もあるしこの資産を買っておこう」というのはお勧めしません。

4.まとめ

資産を短く償却するためのポイントを解説しました。購入した資産が、少額減価償却資産、一括償却資産、少額資産に該当するのかを確認したうえで処理を行います。なお、節税目的で資産を購入しても結局会社のキャッシュを減らすことになりますので、よく検討する必要があります。

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