10.92016
役員社宅の家賃・賃料を経費にして節税する方法
法人の場合、役員の自宅を社宅に変更をして節税ができます。
個人事業主の場合や、法人でも役員が直接家賃を支払う場合と社宅とする場合を比較し、節税効果について解説していきます。
Contents
1.個人事業の場合
(1)事業専用の事務所がある場合
事業専用の事務所を借りいている場合には、全て経費と認められます。事業専用の事務所を持っている場合は、節税の観点からは個人事業と法人の違いはありません。
(2)自宅を自宅兼事務所としている場合
業務に係る部分のみを按分計算して経費にできます。いくつかある部屋のうちひと部屋を業務に使っているのであればその部分の面積に応じて経費とします。しかし、プライベートな領域に関するキッチン部分等は経費として認められませんので、自宅兼事務所の大半を経費として認めてもらうのは非常に難しいです。
個人で自宅を所有している場合も按分の考え方は同様で、建物に係る減価償却費や固定資産税、修繕費等を按分計算します。
2.法人の場合
(1)事業専用の事務所
上述のとおり、個人、法人ともに全て経費として認めれます。
(2)自宅兼事務所の事務所部分
役員個人から法人に貸し出すという形を取ることができます。その場合、法人から役員個人に支払う賃借料は経費として計上することができます。
その場合の賃料については、近隣の類似の賃料を設定する必要がありますが、通常は個人事業での単純な賃料按分よりは高く設定できるはずです。
さらに、役員個人が受け取った賃料は所得税で不動産所得になりますが、不動産所得はその所得を得るための経費は収入から差し引きすることができます。また、不動産所得は給与所得と損益通算が可能ですので、場合によっては所得税が安くなることがあります。
(3)自宅を社宅とする場合
法人の場合は役員の自宅を役員社宅とすることができます。賃貸の場合には、契約を個人から法人に切り替えます。会社は社宅の家賃を貸主に支払うと同時に、役員から社宅代として例えば全体の50%分を給与から差し引きます。これにより賃料の半分を会社の経費とすることができます。
以下に、役員報酬50万円・個人で家賃20万円を支払っていた役員が、役員社宅に変更して役員報酬40万円・家賃10万円を個人負担とした場合の節税金額です。
(単位:万円)
役員社宅としない場合 | 役員社宅とする場合 | |||
個人 | 法人 | 個人 | 法人 | |
役員報酬 | 50 | -50 | 40 | -40 |
所得税等 | -4 | – | -3 | – |
社会保険料 | -7 | -7 | -6 | -6 |
家賃 | -20 | – | -10 | -10 |
差し引き額 | 19 | -57 | 21 | -56 |
役員個人は、給与が下がったことにより、税金と社会保険料が安くなりました。また、法人も役員の給与が下がったことにより社会保険料の会社負担分が安くなりました。社員個人の手取り額が増え、会社の負担額も減っています。
役員個人が支払う所得税は所得が上がるほど大きくなる累進課税ですので、役員報酬が大きく家賃が大きいほど効果が大きくなります。
3.役員社宅にすると気の注意点
(1)社宅として認められない場合は節税にならない
会社が役員に対して無償もしくは著しく安い金額で社宅を提供している場合は役員社宅として認められません。仮に、役員社宅と認められなくなってしまった場合には、役員が自宅の家賃を全額負担している場合よりも、むしろ負担額が大きくなってしまいます。
(2)役員の負担額を何%にすれば良いのか
ざっくりいうと50%程度であれば、問題ありませんし、場合によっては20-30%程度でも問題ない場合もあります。詳しくは、4.をご覧下さい。
4.役員社宅した時の具体的な負担基準
(1)役員の社宅は3区分に分けられる
社宅については、基本的に豪華なほど役員の負担額を多くすべきという考え方のもと、3区分に分けれれます。それぞれの要件と負担額は以下のとおりです。
(2)小規模な住宅
もっとも役員の負担が少なくなる区分です。
①小規模な住宅の要件
・建物の耐用年数が30年以下の場合には床面積が132平方メートル以下である住宅
・建物の耐用年数が30年を超える場合には床面積が99平方メートル以下(区分所有の建物は共用部分の床面積をあん分し、専用部分の床面積に加えたところで判定)である住宅
②小規模な住宅における役員の負担額
以下の3つの合計額とされています。
・その年度の建物の固定資産税の課税標準額×0.2%
・12円×その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル)
・その年度の敷地の固定資産税の課税標準額×0.22%
(3)小規模な住宅でないもの
①小規模な住宅でないものの要件
小規模な住宅ではなく、かつ、豪華社宅にあたらないもの
②小規模な住宅でないものにおける役員の負担額
会社が家主に支払う家賃の50%の金額と、上記(2)②で算出した金額とのいずれか多い金額
なお、自社所有の社宅は、次のイとロの合計額の12分の1が賃貸料相当額になります。
イ (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12% ただし、建物の耐用年数が30年を超える場合には12%ではなく、10%を乗じます。
ロ (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%
(4)豪華社宅
社会通念上一般に貸与されている社宅と認められないいわゆる豪華社宅である場合は、(1)、(2)のような算式の適用はなく、時価(実勢価額)を負担すべきとされていますので、役員社宅とする意味がなくなります。豪華社宅の定義は以下のとおりで、適用例は少ないと言われています。
いわゆる豪華社宅であるかどうかは、床面積が240平方メートルを超えるもののうち、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等各種の要素を総合勘案して判定します。なお、床面積が240平方メートル以下のものについては、原則として、プール等や役員個人のし好を著しく反映した設備等を有するもの
5.まとめ
社員社宅は頻繁に使われる節税策です。法人しか行うことができませんので、個人事業から法人に変更した場合などはぜひ検討してみてください。
スポンサードリンク
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。