ブログ

資金繰りに困らないための起業時に使える資金調達方法

「最初の資金調達前に知っておきたい出資と借入のメリット・デメリット」では、主要な調達方法である出資・借入のメリット・デメリットを解説しました。

設立時に考えられる資金調達の方法は、外部投資家や銀行からの出資・借入のみではなく、様々な調達先・調達方法が考えられ、以下のように整理できます。それぞれのメリット・デメリットを解説します。

Contents

1.自分の貯蓄からの出資・借入

(1)メリット

①最初にやるべことに集中できる

設立から当面の間の資金については、自分の貯蓄で賄えるに越したことはありません。

会社のスタート時は商品やサービスが売れるかどうかわからない状況だと思いますので、最初の試行錯誤を出資者や銀行等の他人からのモニタリングや制約を受けずに行うことができるは大きなメリットだと思います。モノやサービスを開発して売る会社であれば、商品やサービスをローンチする前、飲食店であれば開店当初に過多に他人に口出しをされてしまうと、社長のリソースがそちらにさかれてしまい、モノやサービス開発、営業に集中できなくなってしまいます。

②株主構成をきれいなままにしておける

他人から出資を受ける場合に、その出資をしてくれる人がどのような人なのかよく調べておく必要があります。

事業が順調に伸びていって将来ベンチャーキャピタルや事業会社から出資を受けるとなっときに、株主構成がよくないと、それだけで出資を受けられない可能性があります。それは、株主自体に問題があったり(例えば反社会勢力やそれに準ずるような人)、社長や実際に会社を経営しているメンバー以外の比率が高すぎる(例えば、社長が40%で社長の親が60%だった等、会社の経営に関係のない人の比率が高いのはマイナスポイントです)があります。社長もしくは社長+共同創業者の比率が100%の状態を維持しておけば後からどうにでもなりますが(その場合も共同創業者とは必要な株主間契約を結びます)、一旦他の人が株主になってしまうと基本的にはやり直しはききませんので、注意してください。

③将来出資を受ける場合、会社の価値を上げてから出資を受けることができる

詳しくは別記事で解説しますが、出資を受けた場合に、創業者の出資比率を維持できるかできないかは、出資額とその時点の会社の価値(バリュエーション)で決まります。仮に、バリュエーションがまだ大きくない時に大規模な出資による資金調達を行ってしまうと、創業者の出資比率が大きく下がってしまいます。一方で、自己資金である程度事業を進捗させバリュエーションを上がることができれば、それだけ出資比率を維持することができます。

(例えば、5億円のバリュエーションの会社が1億円調達しようとすると新たに20パーセント分(1億円÷5億円)の株式を発行する必要があり創業メンバーのメンバーの出資比率がそれに応じて下がることになります。この時に10億円のバリュエーションがつけば10パーセント分(1億円÷10億円)の発行ですみますので、それだけ創業メンバーの出資比率を維持することができます)

(2)デメリット

①本気の協力者がいない

これといったデメリットはないのですが、あえて言うのであればこの点です。

前回エンジェル投資家やベンチャーキャピタルから出資をうけるメリットを記載しましたが、出資を受けると、出資をした人は成功すれば自分もキャピタルゲインを得ることができるわけですので、本気で応援してくれます。これは会社経営の経験のない創業者にとっては非常に大きな力になると思いますし、私の経験上も大きく助けられました。社長+共同創業者が100%出資の場合はこのようなメリットを受けることができません。

piggy-bank

2.エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの出資

「最初の資金調達前に知っておきたい出資と借入のメリット・デメリット」を参照してください。

出資のメリットは、①返済不要で、創業初期の資金調達手段となる、②投資家からアドバイスを受けることができる、③投資家からのネットワークにアクセスできる、④本気で会社の成功に協力してくれる等が挙げられます。

一方で、出資のデメリットは、①出資比率によっては経営権を握られ、機動的に事業ができなくなる、②投資家のためにExitの時期を考えて事業を成長させる必要がある、③投資家とのコミュニケーションコストがかかる等が挙げられます。

3.親族・知人からの借入・出資

出資のデメリットは大きいので、もし可能であれば返済期間長め、かつ、低金利で貸付をしてもらえるようにお願いし、(投資を理解している方なら)資金提供者としてもキャピタルゲインを得たいという主張をされる場合もあるでしょうから、その場合は出資は少しだけにしてもらえるように交渉する必要があります。

(1)借入のメリット・デメリット

①メリット:事業の善し悪しに関わらず資金を提供してもらえる

合理的な投資家から資金の提供については受ける場合には、事業により返済のためのキャッシュフローを生みだせるか(出資であれば事業が成功するか)、厳しく審査されます。

一方で、親族・知人から資金提供を受けるのであれば、事業の魅力ではなく、どちらかというと個人の信用がものを言うと思いますので、面倒な「事業の魅力をきちんと説明する」ということを行わなくとも(または実際に魅力がないとしても)、資金の提供を受けることができる場合も多いと思います。

②メリット:相場よりも低い金利になる可能性がある

金利については、リスクの高い(貸し付けた金額を返済してもらえない)ほど高くつく仕組みになっています。開発費等がかかり売上が上がるまで時間がかかるような事業は、通常設立の段階では、ものすごい高い金利になるはずです(実際には、高金利どころか貸付自体をしてもらえないことがほとんどです)。

一方で、上記のとおり、親族・知人から資金提供を受けるのであれば、事業の魅力ではなく、どちらかというと個人の信用がものを言うと思いますので、金利も低いもので設定されています。この点、税務上は低すぎると金利が低すぎると贈与とされて課税される可能性がありますのでご留意ください。

(2)出資のメリット・デメリット

①メリット:事業の善し悪しに関わらず資金を提供してもらえる

→上記(1)①と同様です。

②デメリット:親族・知人は、合理的な判断ができない株主となる可能性がある

株主になるということは会社の運営権の一部を渡すことです。仮に、親族・知人が合理的な判断ができず明らかに誤った判断を株主総会で行ってしまった場合には、会社は大きな損失を被ります。会社法上、会社は株主のものですので、株主に合理的な判断をできない人を入れてしまうとこのような事態が行ってしまう可能性があります。

③デメリット:創業者の出資比率が大きく下がり、また、将来の資金調達の足かせになる可能性がある。

創業初期は特に会社のバリュエーションが低いので、仮に創業者と知人等で普通株で同時に出資をしてしまうと金額に応じて出資比率が決まってしまいます。

この点は、種類株を発行する等の工夫の仕方はありますが、発行のコストが普通株とは段違いにかかってしまいます。

woman-1594711_1280

4.銀行からの創業融資(借入)

「最初の資金調達前に知っておきたい出資と借入のメリット・デメリット」を参照してください。

借入のメリットは、①経営権を握られず出資比率を落とさせずに資金調達できる、②創業融資や制度融資を利用するれば、安定的なキャッシュフローや担保がなくとも資金調達ができる等が挙げられます。

一方で、借入のデメリットは、①確実な回収が求められる、②担保や個人保証がないと借入できない場合もある、③出資と同様に、投資家(銀行や他の貸主)とのコミュニケーションコストがかかる等が挙げられます。

創業融資について詳しくは、起業資金を調達するための創業融資の概要をご覧下さい。

5.補助金や助成金

(1)メリット

①返済が不要

補助金や助成金は、会社が国や地方公共団体からお金をもらうことができる制度ですので、返済は不要です。(ものによっては一定の売上が上がったあとに返済する必要のあるものがあります)

②要件が合えば、受給できる可能性が高い

創業補助金に関しては言えば年によってバラバラですが、6-7割程度の確率で受給ができます。

(2)デメリット

①金額が小さく、補助率が100%ではない

創業補助金に関しては言えば、100-200万円程度です。ものによってはもっと大きいものもありますが、要件が合わなかったり競争率が高くなったりします。

また補助率も2/3のものも多いです。(実際に150万円使ったとすると、100万円を受給できる)

②事務手続きを要する

申請書やその後の精算のための書類整理に関しては、ある程度の事務手続きが必要です。専門家に頼む方法もありますが、その分コストがかかってしまいます。

 

6.クラウドファンディング

クラウドとビジネス

(1)メリット

①上手くアピールできれば、相当な金額の調達も可能

日本ではまだまだ数は少ないと思いますが、1千万円を超えるような金額を集めている案件もあります。

②商品やサービスが市場に受け入れられるものかを見極めることができる

「購入型」(出した金額に応じて、商品やサービスが手に入るもの)のクラウドファンディングを行うと、集まる金額によって、そもそも欲しがられる商品やサービスなのか、実際に提供したあとのフィードバックによって、商品やサービスの今後の改善点はなんなのか、といった情報を入手するのかを見極めることができます。ここでほとんど集めることができなれば、実際に市場に投入するのは難しいのではないでしょうか。

(2)デメリット

①マッチする事業としない事業がある

クラウドファンディングは、「購入型」、「寄付型」(特にリターンがないもの)、「投資型」(利益の一部が分配されるもの)に区分されます。

「寄付型」は社会的意義がある等の理由が必要であり営利企業にはマッチしづらいこと、「投資型」は少なくとも日本のベンチャー企業に直接出資というのは法令等の問題からやりづらいことから難しいと考えます。

よって実質は「購入型」が一択になるわけですが、個人がもらって喜ぶような商品やサービスがあれば良いのですが、例えばBtoBの商品やサービス提供を行っている会社は難しいです。

②プラットフォームを使うと手数料がかかり、募集のための手間がかかる

使用するプラットフォームにより異なりますが、通常20%程度の手数料がかかります。また、プラットフォームに載せるための募集ページを作成する必要がありますが、それなりの手間がかかります。

7.まとめ

ご覧頂いたように資金調達の方法は様々です。会社の状況や必要額にあった調達先・方法を考えましょう。

スポンサードリンク

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。




ページ上部へ戻る