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記帳代行サービスを税理士・会計事務所に依頼するメリット・デメリット

税金を正しく申告するためには、日々発生する売上・経費などを、一定のルールに基づいて帳簿に記入していく必要があります。この取引を帳簿に記入していくことを「記帳」と言い、この記帳を外部の税理士事務所や代行会社がで実施することを「記帳代行」と言います。

インストール型の会計ソフトに始まり、最近ではクラウド会計の登場によって記帳の手間がかなり少なくなってきましたが、それでも多くの創業期の会社は、自社で記帳を行わず外部に委託をしていますし、委託するメリットは大きいと考えています。当然、メリットばかりではありませんので、今回は、記帳代行のメリット・デメリットを解説します。

1.記帳は「入出金の記帳」と「それ以外の記帳」に分けられる

記帳は、その種類を大きく2つに分けると、「入出金の記帳」と「それ以外の記帳」があります。

(1)入出金の記帳とは?

現金で支払いをしたり、会社の口座から振り込んだ・振り込まれたりした場合に、現預金で支払った・受け取ったという事実を、帳簿に記録するものです。

例えば、以下のような取引です。

  • A社から売上代金として3/30に普通預金に100万円が振り込まれた。
  • 家電店で3/31に5万円の備品を現金で購入した。

この現預金の動きを記録していき、今月いくらの入出金があり、結果として現金や預金が月末でいくらあるのかがわかるように記録していきます。

月初の現預金:100万円

月中の現預金の動き:売上代金による100万円の増加、備品購入による5万円の減少

月末の現預金:195万円

この記帳が正確に行われないと、帳簿上の現金・預金と、通帳上の現金・預金の残高が一致しなくなりますので、月末でしっかりと合わせる必要があります。逆に言うと、入出金に沿って漏れなく記帳していけば、月末残高は一致しますので、経理的な知識がなくとも、ある程度慣れれば、どなたでも記帳できるようになります。さらに、最初の設定は専門家に見てもらう必要がありますが、預金の入出金データを元にクラウド会計に記帳してもらえば、大部分を自動でこの記帳を行うこともできます。

ただし、現金取引はデータが存在しておらず、”領収書をスキャンして、自動読み込み・自動仕訳”は正確性にまだ問題があるため、いまだに手動仕訳を行っているのが現状です。

(2)入出金以外の記帳とは?

実際に会社の損益や税金を計算するためには、現金や預金の入出金がない場合でも、記帳をする必要がある場合があります。

例えば、下記のようなものがあります。

・A社に商品を3/30に納品した。入金は4月末に100万円あった。
→入金を待たずに売掛金として売上を計上する必要があります。

・amazonで3/31に備品を購入した。引き落としは4月末に5万円あった。
→出金を待たずに未払金として費用を計上する必要があります。

・昨年耐用年数5年の機械200万円を購入していた。
→固定資産として計上して、減価償却費を計上する必要があります。

・期末に在庫100万円がある
→在庫に関しては、費用ではなく資産として計上する必要があります。

これらは、期中に現金や預金の入出金がないにも関わらず、もしくは、入出金の動きとは別に、帳簿に記録しないといけません。なかなか理解するのは難しいです。

(3)記帳を自分でできるか

入出金の記帳作業は、複式簿記の知識はほとんど不要で、入出金が伴う取引の記帳を行うとともに、月末の現預金残高が帳簿残高と一致しているかを確認します。当初経理の知識が0でも、慣れさえすれば問題なくできるようになります。

一方、入出金以外の記帳作業は、複式簿記の知識が必要です。申告まで全て行うには両方を正しく記帳する必要がありますので、相当の勉強をしないと難しいです。

2.記帳代行を依頼するメリットは?

それでは、この記帳業務を外部に委託するメリットは何でしょうか?

(1)事業に専念できる

創業当初は特に、時間がいくらあっても足りないような状況になります。

優秀な方であれば、簿記の勉強を最初に1週間程度、記帳を毎月半日から1日かければ、基本的な記帳はできるようになるかもしれません(ただし、毎月どのぐらいの時間がかかるかは、取引の量や複雑性で大きく変動します)。しかし、経営者の方の時給を5千円~1万円程度と仮定してみると、その時間的コストは大きなものとなります。経営者の方は、財務諸表を読める能力はある程度必要だと思いますが、財務諸表を作る能力は不要ですので、貴重な時間を簿記の勉強や帳簿の作成に費やすことは合理的ではないと思います。このように、記帳代行を依頼するメリットは、貴重な時間を節約できることです。

なお、会計事務所によっては記帳代行は付加価値が低いため(会計事務所として報酬をあまり頂けないため)、会社に記帳ができるような体制を提案するところがあります(これを自計化と呼んでいます)。しかし、お客様のニーズ(無駄なことは可能な限りやらずにとにかく事業に専念したい)を考えれば、税理士事務所の商品ラインナップとして私は必要だと考えています。

(2)経理の知識を持った人員を雇用する必要がない

経理の知識をもった人員を採用するとなると、相応のコストがかかります。また、仮に専任の従業員を雇用した場合、売上数千万円程度ですと1ヶ月の業務の中で手が空いてしまう時期が必ずあります。営業兼経理など、その方が業務を兼任できれば良いのでしょうが、経営者の給与など会社のすべての情報をさらして良いほど信頼できる方なのかをよく考える必要があります。

私は、少なくとも売上1-2億円程度までであれば、経理の専門的な知識を持った従業員を雇う必要はありませんし、記帳業務は会計事務所などの外部に委託する方が良いと思います。

(3)クラウド会計などで経理の完全自動化するのはもう少し先

クラウド会計の登場によって、それをうまく使えば記帳などの経理業務は格段に楽になりました。一方、簿記や経理の知識が全くない人でも簡単に記帳や決算ができるかというとまだそこまでは進化していません。(経理の完全自動化は将来的には可能になり、我々税理士の仕事がなくなってしまうかもしれませんが。。。)

やはり、現状ではまだ専門家に任せたほうが楽です。

3.記帳代行を依頼するデメリットは?

(1)金銭的なコストがかかる

仕訳数が少ない場合でも、月額5千円~1万円程度(弊所も100仕訳まで月額1万円(税抜)でお受けしています)の費用がかかります。

一方で、既に説明のとおり、貴重な経営者の時間は節約することができます。月額1万円の金銭的コストを節約するか、時間的なコストを節約するかは経営者の方の価値観によりますが、私は時間的なコストを節約することをおすすめしています。

(2)自社で記帳するよりも月次決算に時間がかかる

記帳代行を依頼すると、領収書等の送付や、税理士事務所での記帳・チェックがありますので、ある程度の時間を要してしまいます。一日でも早く月次決算を締めたいという会社には向いていません。

ただし、一日でも早く締めたいというニーズがある、もしくは、一日でも早く締める必要のある会社は、ある程度の規模や利益が出ている会社だと思いますので、多くの創業期の会社は問題にはならないはずです。

正確な月次決算が終了していなくとも、クラウド会計などである程度自動的に仕訳が出来る状態を作っておけば、速報値はすぐに確認することができます。経営判断をする数値としてはこれで足りる場合もあります。

(3)いつまでも自計化ができない

記帳を外部に委託し続けると、いつまでも自社で帳簿を作成するノウハウが溜まらないというデメリットもあります。

しかし、会社にとってコアな部分ではない経理業務のノウハウをためていく必要が本当にあるのでしょうか。私は、既に上場された会社でも、上場直前まで経理は全て外部に委託していて問題がなかったという事例を知っています。現在はテクノロジーが進化して様々なサービスが生まれてきていますので、経理業務に限らず、会社のコア業務以外は外部にアウトソースする傾向がますます進むと思います。

記帳業務は、以下の2点が当てはまる会社以外は、外部に委託して問題ないと考えます。

  • 翌月の早い時期に決算を確定させたい
  • 上場などの管理体制強化の明確な目的がある

まとめ

フリーランスで収入はそれほど多くないが時間的に余裕があるから少しでもコストを削りたい、経理の勉強をしたい、自社の事業が会計に関連する部分があるため中身をある程度理解したい、という方は自社で記帳されるという選択肢もあると思います。

一方、記帳代行は金銭的なコストはかかってしまうものの、ほとんどの会社は時間を節約するために使ったほうが良いサービスだと思います。

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