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法定調書とは?支払調書や源泉徴収票との関係は?

法定調書、支払調書、源泉徴収票という言葉は聞いたことかあると思いますが、それぞれの違いを理解されていますでしょうか?いずれも税務者が納税者の正確な支払いなどを把握するための書類です。これらの書類の意味や発行される条件を解説します。

1.法定調書・支払調書・源泉徴収票とは?

(1)法定調書とは?

法定調書とは、「所得税法」や「租税特別措置法」などの規定により税務署に提出が義務づけられている資料をいいます。

法定調書は、未施行のものも含めて60種類以上あり、その中に支払調書と源泉徴収票があります。

法定調書

(2)支払調書とは?

支払調書とは、特定の支払いをした事業者が税務署に提出する書類のことで、支払いの内容・明細が書かれています。税務署は、支払いを受けた個人や事業者がきちんと申告しているかどうかを照合するために利用されます。

(3)源泉徴収票とは?

源泉徴収票は「給与所得の源泉徴収票」「退職所得の源泉徴収票」「公的年金等の源泉徴収票」の3種類のみで、給与や退職金の支払いをする事業者が発行し、一年間の支払額の正式な証明書となります。

従業員のいない個人事業主のみ提出義務がありません。従業員のいる個人事業主や法人は提出義務があります。

2.主な法定調書の提出義務のある者

(1)「給与所得の源泉徴収票」

給料、賞与などこれらの性質を有する給与の支払をする場合に提出が必要で、従業員のいない個人事業主以外は、提出義務があります。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、源泉徴収簿などから転記をおこない作成します。年末調整を行っていなくとも作成しますので、ご注意ください。

(2)「退職所得の源泉徴収票」

法人の役員や従業員に対して退職金の支払をする場合に提出が必要です。

(3)「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」

税理士報酬・弁護士報酬など(所得税法第204条第1項各号並びに所得税法第174条第10号及び租税特別措置法第41条の20に規定されているもの)を支払った場合に提出が必要です。

報酬等の範囲は以下のとおりです。

  1. 外交員、集金人、電力量計の検針人及びプロボクサー等の報酬、料金、バー、キャバレー等のホステス等の報酬、料金、広告宣伝のための賞金については、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50万円を超えるもの
  2. 馬主に支払う競馬の賞金については、その年中の1回の支払賞金額が75万円を超えるものの支払を受けた者に係るその年中の全ての支払金額
  3. プロ野球の選手などに支払う報酬、契約金については、その年中の同一人に対する支払金額の合計額が5万円を超えるもの
  4. 弁護士や税理士等に対する報酬、作家や画家に対する原稿料や画料、講演料等については、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が5万円を超えるもの
  5. 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬については、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50万円を超えるもの

提出範囲の金額については、消費税が明確に区分されている場合には、その額を含めないで判断しても良いことになっています。
法人に支払われる報酬・料金等で源泉徴収の対象とならないものや支払金額が源泉徴収の限度額以下であるため源泉徴収をしていない報酬、料金等についても、支払調書の提出範囲に該当する場合には支払調書を提出する必要があります。(例えば原稿料などは1回5万円を超えなければ源泉徴収する必要はありませんが、年間5万円を超えれば支払調書の提出は必要です)
また、平成28年1月1日以後に支払の確定する報酬等に係る支払調書から、マイナンバー又は法人番号を記載する必要があります。

(4)「不動産の使用料等の支払調書」

一般的に発生する、法人に対する賃借料の支払いのみのときは支払調書の提出は不要です。

①「不動産の使用料等の支払調書」の対象となる支払い

  • 不動産(不動産の上に存する権利も含む)、船舶(総トン数20トン以上の船舶のみ)、航空機の借受けの対価
    →不動産等の使用料を支払った場合に必要となり、事務所の家賃、また権利金や更新料、礼金等も含まれます(上述のとおり、法人に対する賃借料の支払いのみの場合は不要)。
  • 不動産の上に存する権利の設定の対価

②「不動産の使用料等の支払調書」の提出義務者

  • すべての法人
  • 個人で不動産業を営む者(ただし、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業を営んでいる方は提出義務がありません)

③「不動産の使用料等の支払調書」の金額基準

不動産の使用料等の支払調書の提出範囲は、同一人に対するその年中の支払合計が15万円を超えるた場合になります。

消費税の扱いは(3)と同様です。

④法人への支払いについての留意点

法人に支払う不動産の使用料等については、権利金、更新料等のみを提出します。

そのため、法人に対して家賃や賃借料のみを支払っている場合は、支払調書を提出する必要はありません。

⑤不動産使用料に含まれるもの

  • 地上権、地役権の設定あるいは不動産の賃借に伴って支払われるいわゆる権利金、礼金
  • 契約期間の満了に伴い、又は借地の上にある建物の増改築に伴って支払われるいわゆる更新料、承諾料
  • 借地権や借家権を譲り受けた場合に地主や家主に支払われるいわゆる名義書換料
  • 催物の会場を賃借する場合のような一時的な賃借料、陳列ケースの賃借料、広告等のための塀や壁面等のように土地、建物の一部を使用する場合の賃借料
  • 敷金や保証金で返還されないことが確定したもの

(5)「不動産等の譲受けの対価の支払調書」

不動産等を譲り受けた一定の場合に提出が必要となります。

①「不動産等の譲受けの対価の支払調書」の対象となる譲受けの対価の支払い

  • 不動産(不動産の上に存する権利も含む)の対価の支払
  • 船舶(総トン数20トン以上の船舶のみ)の対価の支払
  • 航空機の対価の支払

②「不動産等の譲受けの対価の支払調書」の提出義務者

  • すべての法人
  • 個人で不動産業を営む者(ただし、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業を営んでいる方は提出義務がありません)

③「不動産の使用料等の支払調書」の金額基準

同一の者に対してその年の支払合計が100万円を超えた場合に提出が必要となります。

消費税の扱いは(3)と同様です。

④不動産等の譲受けに含まれるもの

不動産等の譲受けの対価の支払調書の対象には、売買の他にも次のような取得も含まれます。

  • 交換
  • 競売(支払を受ける者は裁判所ではなく、取得物件の前所有者になります)
  • 公売
  • 収用
  • 現物出資等

(6)「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」

不動産等の売買代金やあっせん手数料を支払った一定の場合に提出が必要となります。

①「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」の対象となる不動産等の売買のあっせん手数料や貸付けのあっせん手数料の支払い

  • 不動産(不動産の上に存する権利も含む)の売買または貸付けのあっせん手数料
  • 船舶(総トン数20トン以上の船舶のみ)の売買または貸付けのあっせん手数料
  • 航空機の売買または貸付けのあっせん手数料

②「不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書」の提出義務者

  • すべての法人
  • 個人で不動産業を営む者(ただし、主として建物の賃貸借の代理や仲介を目的とする事業を営んでいる方は提出義務がありません)

③「不動産の使用料等の支払調書」の金額基準

同一の者に対してその年の支払合計が15万円を超えた場合に提出が必要となります。

消費税の扱いは(3)と同様です。

3.主な法定調書の提出期限

上記(1)~(6)の法定調書の提出期限は、原則として支払の確定した日の属する年の翌年1月31日になります。

翌年1月31日までに支払事務を取り扱う事務所、事業所等の所在地を所轄する税務署長に提出します。

法定調書を税務署に提出する際は、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」を作成して添付します。なお、給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表とは、個々の法定調書を集計するものです。たとえば、従業員が何十人もいるような場合には税務署も集計に手間がかかるため、事業主体ごとに集計したものを提出することになっています。

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