11.242016
医療費控除の控除対象と確定申告-インプラントやコンタクトレンズは該当するのか?
先日、インプラントの治療を受けました。
インプラントは自由診療のため保険がきかないということで、かなり高額になってしまいました。しかし、確定申告で医療費控除すれば治療費の何割かは戻ってきます。
医療費控除の基本的な計算方法と控除対象、確定申告の仕方について解説します。
Contents
1.医療費控除の計算方法
医療費控除の計算方法は、以下のとおりです。
(1)医療費の対象となる期間
医療費控除の計算は、年単位(1月-12月)で発生した医療費に対して行うことになります。
治療の途中であっても、支払いが12月を超えてしまうと、その超えて支払った分については翌年の医療費控除の対象となります。
(2)医療費が1円でも発生すれば医療費控除の適用が受けれるわけではない
制度の趣旨は、「その年の医療費が高額になった場合、医療費負担を軽減するために税金を安くしましょう」ということになっています。高額の基準は、10万円、もしくは、その年の総所得金額等が200万円未満の人は総所得金額等5%の金額、と定められており、その基準を超えた分だけ控除対象となります。
(3)医療費控除の保険金の扱い
保険の適用で填補された分は対象になりません。保険の例として、以下のものが挙げられます。
生命保険契約などで支給される入院費給付金や健康保険などで支給される高額療養費・家族療養費・出産育児一時金など
保険金などで補填される金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きますので、引ききれない金額が生じた場合であっても他の医療費からは差し引きません。
例えば、病気Aの医療費10万円、病気Aの保険金12万円、病気Bの医療費10万円、病気Bの保険金5万円の場合、
控除される金額は、病気Bの医療費5万円です(20万円-17万円=3万円ではありません)。
なお、医療保険の保険料の支払い自体は、保険料控除というものが別途定められています。国税庁HP No.1140 生命保険料控除をご参照ください。
2.一般的な医療費控除の対象となるもの
(1)医師への支払い
- 医師又は歯科医師による診療又は治療の費用
- 病院などへの搬送費用
- あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師による施術代(単なるマッサージは不可)
- 医師等による診療等を受けるための通院費、医師等の送迎費、入院の際の部屋代や食事代
(2)自宅療養
- 保健師、看護師、准看護師又は特に依頼した人による療養上の世話に対する費用(家族へ支払いは除く)
- 介護福祉士等による一定の喀痰吸引及び経管栄養の費用
- 介護保険制度の下で提供された一定の施設・居宅サービスの自己負担額分
(3)出産関連
- 妊娠と診断されてからの定期検診や検査などの費用、また、通院費用
→通院費用については、領収書がなくとも、家計簿などに記録するなどして実際にかかった費用について明確に説明できるようにすれば良いとされています。後述する医療費集計フォームに入力できる状態にしておいてください。 - 出産で入院する際に、電車、バスなどの通常の交通手段によることが困難なため、タクシーを利用した場合のタクシー代
→実家で出産するために実家に帰省する交通費は対象外 - 病院に対して支払う入院中の食事代
- 助産師による分べんの介助の料金
(4)薬品等
- 治療又は療養に必要な医薬品の購入の対価
→風邪をひいた場合の市販の風邪薬などの購入代金も医療費に含まれます。 - コルセットなどの医療用器具等の購入代やその賃借料で通常必要なもの
- 医師等による診療や治療を受けるために直接必要な、義手、義足、松葉杖、義歯などの購入費用
- 6か月以上寝たきりの場合などのおむつ代
2.一般的な医療費控除の対象とならないもの
- 健康診断の費用や医師等に対する謝礼金など
- ビタミン剤などの病気の予防や健康増進のために用いられる医薬品の購入代金
- 疲れを癒したり、体調を整えるといった治療(マッサージなど)
- 自家用車で通院する場合のガソリン代や駐車場の料金等
3.インプラントなどの歯の治療の医療費控除
歯科医師による診療又は治療については、その病状などに応じて一般的に支出される水準を著しく超えない部分の金額は、医療費控除の対象となるとされています。
治療の項目ごとに整理すると以下の通りとなります。
(1)インプラントや金歯、セラミックなどの高額な費用
治療代が高額であっても治療の内容、金額が一般的なものであれば問題ありません。
インプラントや金歯、セラミックなどは一般的な治療とされていますので、その費用が高額なことが一般的であれば医療費の範囲内として認められます。
高額かどうかは一般的な相場と比較して判断しますので、何か特別な理由(治療が美容的な要素も含むなど)で高額となっているもの以外は問題はありません。
話が少しそれますが、インプラントの相場については、私自身が治療を受けるということで今回調べました。医院によってバラつきますが、町の歯科医師ですと1本40万円ぐらいが相場らしいです。ただし、専門でやっているところはもっと安くて、品質も良さそうなため安い方にしました。(治療が問題なく終わるかはまだわかりません。。)税理士業界に例えると、普段相続税をやらないところは料金が高く、品質もどうなのか?というところが多いような気がするのですが、それと同じようなものなのかなと感じました。
(2)美容のための治療
美容のためにインプラントを使った場合は、医療費控除の対象になりません。
(3)歯石・歯垢の除去、ホワイトニング
医療費控除の対象となるものは、原則として治療を目的とするものに限られています。歯石の除去費用などは歯周病の予防に対するものとして医療費控除の対象とはなりません。
ホワイトニングも目的が治療ではないため医療費控除の対象となりません。
(4)歯の矯正
目的によって医療費控除となる場合とならない場合があります。
発育段階にある子供の成長を阻害しないようにするために行う不正咬合の歯列矯正のように、歯列矯正を受ける人の年齢や矯正の目的などからみて歯列矯正が必要と認められる場合の費用は、医療費控除の対象になります。
一方、見た目などの美容のためだけに行なうものは医療費控除の対象とはなりません。
(5)その他の医療費控除に含まれるもの
他の病気の治療と同様に、治療のための通院費も医療費控除の対象になります。
小さいお子さんの通院に付添が必要なときなどは、付添人の交通費も通院費に含まれます。
4.メガネ・コンタクトレンズなどは医療費控除の対象になるのか
(1)メガネ・コンタクトレンズの購入費用
近視などのために日常生活の必要性に基づいて購入されるものは、視力を回復させるの治療の対価ではありませんので、医療費控除の対象とはなりません。
ただし、以下のものは、医療費控除として認められるとされています。
- 斜視、白内障、緑内障などで手術後の機能回復のため短期間装用するもの
- 幼児の未発達視力を向上させるために装着を要するための眼鏡などの治療のために必要な眼鏡として医師の指示で装用するもの
(2)視力回復レーザー手術(レーシック手術)の費用
レーシック手術は、眼の機能それ自体を回復させるものであり、医師の診療又は治療の対価と認められますので、医療費控除の対象となります。
(3)オルソケラトロジー治療(角膜矯正療法)の費用
レーシックと同様の理由で、医療費控除の対象となります。
5.医療費控除で実際いくらの節税になるのか
(1)給与所得者(サラリーマン)の税額算出の概要
給与所得者(サラリーマン)の税額算出の概要図は以下のとおりです。なお、個人事業主の方は、給与所得金額を事業所得金額と読みかえてご覧になってください。
医療費控除の金額が大きくなると、税率をかけ算する金額である”課税所得金額”が小さくなり、税金が小さくなります。
※1 税額の速算表
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円を超え 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円を超え 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円を超え 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円を超え 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円を超え4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
(2)実際いくら節税になるのか?
所得控除は家族構成により異なるため、一概にはいえません。
ただ大体で言うと、例えば妻子持ちの年収700万円(年収は上記の表で言う”給与・賞与収入金額”)方であれば、医療費控除考慮前で、給与所得控除や基礎控除などを引くと年収の60%ぐらいが、課税所得金額になります。
①年収700万円の人が医療費控除がない場合
課税所得金額が700万円×60%=420万円。
所得税額=420万円×20%ー42.75万円=41.25万円。
住民税額が420万円×10%=42万円。
所得税・住民税の合計が83.25万円。
②年収700万円の人が医療費控除の対象となる金額が100万円である場合
課税所得金額が700万円×60%-100万円=320万円。
所得税額=320万円×10%ー9.75万円=22.25万円。
住民税額が320万円×10%=32万円。
所得税・住民税の合計が54.25万円。
→つまり、所得税の適用税率約20%と住民税の税率10%分の29万円が節税になります。速算表をご覧になればわかりますが、所得が高い方ほど減る税額は大きくなります。
6.医療費控除の確定申告の必要書類
医療費控除を受けるには確定申告が必要です。必要書類は、以下のとおりです。
- 源泉徴収票(サラリーマンもしくは給与所得のある個人事業主)
- (2017年分以降は)病院や薬局などの支払先ごとに合計額を明細書に記載。健保組合などから「医療費のお知らせ」が届いている場合には、その分については明細書へ記載が不要。領収書は自宅等で確定申告期限から5年間保存
7.医療費控除の確定申告は書面提出がオススメ
書面提出をオススメする理由は、以下の2つです。
- 税務署に行かずに済む
→郵送しますので、税務署に行く必要がありません。パソコンとプリンターがあればできます。 - e-taxは電子証明の入手が面倒
→もう一つe-taxという郵送ではなく電子で行う方法もあるのですが、電子証明の入手が面倒なので、今回は書面提出をオススメします。
以下で、書面提出による確定申告の方法を解説します。
(1)確定申告書等作成コーナーにアクセスして、”作成開始”をクリックします。
(2)今回は書面提出をオススメしますので、書面提出を選択します。
(3)確認後にチェックをいれて次に進みます。
(4)所得税コーナーをクリックします。
(5)サラリーマンの方を前提に解説しますので一番左を選択します。(個人事業主の方でも、医療費控除の入力の仕方は同じです)
(6)確認して次に進めます。入力を進めるには源泉徴収票が必要になりますので、手元にご用意してください。
(7)生年月日を入力して次に進みます。
(8)サラリーマンの方は一番上を選択して次に進みます。
(9)1社だけお勤めの方で年末調整済みの方がほとんどだと思います。それぞれ上を選択して次に進みます。
(10)医療費控除にチェックを入れます。なお、ふるさと納税などのその他の控除項目があればチェックを入れます。ふるさと納税の場合、寄付金控除の箇所にもチェックを入れます。
(11)源泉徴収票の数字を転記します。
(12)お勤め先の住所・社名を入力します。
(13)”入力する”をクリックします。
(14)真ん中の”医療費集計フォームに入力したデータを読み込む”を選択します。
(15)ここで一旦、医療費集計フォームをダウンロード・作成するため、確定申告書等作成コーナーを開き、”医療費集計フォーム”をクリックします。
進めていくと医療費集計フォームをダウンロードすることができます(平成29年分以降用をダウンロードして下さい)。”ご利用にあたって”のシートを参照しながら入力して、デスクトップなどに保存します。
(16)(14)の画面に戻って、保存した医療費集計フォームを選択して、次に進みます。
(17)読み込みに成功すると以下のような画面がでますので、正しく入力されているか確認してください。
しばらく確認画面や選択画面が続きますが、特に疑問となるところはないと思います。
(18)住所や振込口座などの入力を進めていくと最終的にPDF化されますので印刷をします。
還付される金額も途中で確認する画面が出てきます。画面に出てくるのは所得税の金額で、画面金額に加えて住民税の納付額も小さくなります。
(19)PDF化したものには、医療費の明細も含まれていますので、印刷して申告書と一緒に郵送します。
8.書類送付や提出の注意点
(1)医療費の領収書原本は戻してもらえる
医療費の領収書等が必要となる方は、添付書類台紙などに添付せず医療費の領収書等の返戻を希望する旨の書面及び切手を貼付した返信用封筒を同封してください。
なお、領収書等の内容の確認に時間がかかる場合があり、しばらく返ってきませんのご留意ください。
領収書を送る際は、エクセルに入力した順番にクリップ止めして封筒に入れておけば十分です。過剰にきれいにする必要はありません。
また、特にルールはありませんが、簡易書留で送ったほうが紛失があった場合などの備えとしてベターです。そういう意味では、領収書も送る前にコピーをとっておいたほうが無難です。
→2017年分から領収書の提出は不要となりました。
(2)医療費は家族の含んで良い
医療費控除は本人だけが支払った分だけが該当するわけではありません。
自己又は自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費も含めることができます。
(3)医療費控除は5年まで遡って申告できる
医療費控除は仮に申告をし忘れていたとしても、5年間は遡って申告することができます。
まとめ
領収書をきちんと整理しておき、書面提出をおこなえばかなり楽に医療費控除の申請を終わらせることができます。
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