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設立から事業開始までに発生する創立費・開業費の会計・税務処理の4つのポイント

会社設立から事業開始までに発生する費用については、創立費と開業費に該当するものがあります。

会計基準と税務基準ではそれぞれ処理の仕方が定められており、適切に処理する必要があります。

1.設立前後に発生する費用の中に「創立費」と「開業費」がある

(1)「創立費」と「開業費」は「繰延資産」に該当

「創立費」と「開業費」は、「繰延資産」というものに含まれます。

繰延資産とは、法人が支出する費用のうち、支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものをいい、会計と税務でそれぞれ範囲・処理が定められています。

(2)会計と税務の違いは?

会計と税務の違いをひらたく言うと、会計基準は投資家が見る決算書を作成するうえで従わなければならない基準で、税務基準は全ての法人が公平に税金を計算するために従わなければならない基準で、両者の目的の違いにより、同じ事象であっても異なった処理が行われる場合があります。

なお、決算上その違いをどのように処理しているかというと、まずは会計基準に従って処理をして会計上の利益を確定させます。その後に「申告調整」(会計基準で作られた利益を税務基準に従って調整し、税務上の利益を計算すること)を行って、税金計算を行うことになります。なお、オーナー企業のように外部投資家のいない会社はその調整を最小限にしたいので(投資家目線の決算書を作る必要がないので)、最初から会計基準に合わせることなく、税法基準で会計処理を行ってることも多く見られます。

以下、本題の創立費と開業費について解説します。

(3)創立費の範囲

①会計基準で定められた創立費

会計基準等では、創立費は以下のとおり定められています。「実務対応報告第 19 号 繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」

創立費とは、会社の負担に帰すべき設立費用、例えば、定款及び諸規則作成のための 費用、株式募集その他のための広告費、目論見書・株券等の印刷費、創立事務所の賃借 料、設立事務に使用する使用人の給料、金融機関の取扱手数料、証券会社の取扱手数料、 創立総会に関する費用その他会社設立事務に関する必要な費用、発起人が受ける報酬で 定款に記載して創立総会の承認を受けた金額並びに設立登記の登録免許税等をいう。

②税務基準で定められた創立費

税務基準では、創立費は以下のとおり定められています。「法人税法施行令14条

発起人に支払う報酬、設立登記のために支出する登録免許税その他法人の設立のために支出する費用で、当該法人の負担に帰すべきものをいう。

③会計と税務の相違点

両者とも定款作成などの設立事務に関連する費用としており、大きな相違点はないと考えます。

(3)開業費の範囲

①会計基準で定められた開業費

会計基準等では、開業費は以下のとおり定められています。(「実務対応報告第 19 号 繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」

開業費とは、土地、建物等の賃借料、広告宣伝費、通信交通費、事務用消耗品費、支払利子、使用人の給料、保険料、電気・ガス・水道料等で、会社成立後営業開始時まで に支出した開業準備のための費用をいう。

②税務基準で定められた開業費

税務基準では、開業費は以下のとおり定められています。(法人税法施行令14条

法人の設立後事業を開始するまでの間に開業準備のために特別に支出する費用をいう。

③会計と税務の相違点

開業費については、a)開業するまでに支出した費用の全ての費用を含むとする考えと、b)開業準備のために直接支出した費用に限るとする考えの2つの考え方があります。

会計上は”開業準備のための費用”とあり、税務上は”開業準備のために特別に支出する費用”とありますので、会計上も税務上もb)の考え方を採用しており、私は大きな相違点はないと考えます。

2.設立前の費用は、個人で立替えして設立後に精算する

会社設立前に発生した創業費は会社で支払うことができませんが、これらの費用は会社の経費とすべきものですので、一旦個人で立て替えておき、設立後に会社で精算をします。

領収書等の支払いを証明できるものはきちんと保管しておきましょう。

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3.「創立費」と「開業費」は税務上は任意に費用処理できる

(1)会計基準上、原則は支出時に費用処理

創立費と開業費は、会計基準上は以下のように会計処理が定められおり、両者全く同じです。(「実務対応報告第 19 号 繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」

創立費は、原則として、支出時に費用(営業外費用)として処理する。ただし、創立費を繰延資産に計上することができる。この場合には、会社の成立のときから 5 年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却をしなければならない。

開業費は、原則として、支出時に費用(営業外費用)として処理する。ただし、開業 費を繰延資産に計上することができる。この場合には、開業のときから 5 年以内のその 効果の及ぶ期間にわたって、定額法により償却をしなければならない。

原則は支出時に費用処理し、資産に計上して5年以内に定額法により償却することもできます。さらに、効果が期待されなくなったものについては、以下の定めがあり、一時の費用とします。

(6) 支出の効果が期待されなくなった繰延資産の会計処理

支出の効果が期待されなくなった繰延資産は、その未償却残高を一時に償却しなければ ならない。

会計の考え方として、将来の収益増加や費用削減につながらないような資産については、価値がないということで費用処理しなければなりません。

繰延資産についても、通常の資産と同様に価値がなくなる(ここでは、”支出の効果が期待されなくなった”という言い方をしています)と、費用処理しなければなりません。

(2)法人税法上、いつでも自由に任意の額だけを償却して良い

創立費と開業費は、税務基準上は、開始事業年度において全額損金算入することも、また、いつでも自由に任意の額だけを償却して良いことになっています。(法人税法施行令64条

(3)実際の会計処理

基本的には「会計基準に従って会計処理をし、それが税務基準と差異がある場合には申告調整をし税金計算をする」のですが、ほとんどの会社は会計基準に厳密に従う必要はないので、最初から税務基準によることもでき、自由に費用処理する時期を選べます。

税金計算

4.いつ費用化するべきなのか

創立費や開業費に限らず、こういった会社が任意に費用かできるものに関しては、置かれた状況によって戦略的に費用していくべきです。

節税のみを考える場合と外部株主がいる場合に分けて説明します。

(1)節税のみを考える場合

銀行等からの資金調達を予定されていなのであれば、外部から決算書の見え方を気にする必要はありません。よって、通常は最も税金が安くなるように費用化していきます。

①すぐに利益が出る場合は、設立年度に全額費用化

利益を少なくすると税金も下がりますので、設立年度に全額費用化します。

②当面利益が出ない場合は、利益が出始めたタイミングで全額費用化

法人税は、100円の損失でも1億円の損失でも税金を払わないことに変わりはありません(地方税は別)。

「100円の損失でも1億円の損失でも変わらないのであれば、設立年度に全額費用化してしまっていいか」と思うかもしれません。

1期目はその通りなのですが、2期目以降の税金額が変わる可能性があります。

税金は基本1年ごとに計算をして納税額を決め、繰越欠損金といって損失を繰延べる制度があります。これは、一定の要件を満たすと、1期目に赤字で2期目が黒字だった場合、2期目の黒字額と1期目の赤字額を通算して、2期目の税金を計算して良いというものです。繰越欠損金には期限がありますので、早いタイミングで欠損を発生させてしまうと期限切れになる可能性があります。

よって、利益が出始めたタイミングで全額費用化することをお勧めします。

(2)外部株主のいる場合

①これから資金調達するベンチャー・スタートアップは決算書の見せ方が重要

ベンチャー・スタートアップは外部から資金調達を行いますので、目先のキャッシュフローに影響する納税額はもちろん考慮すべきですが、それ以上に「投資家に決算書をどう見せるか」ということが重要になってきます。

投資家にミスリードさせるような決算書を作ってしまった場合に、本来投資を受けれたものが受けれなくなってしまう可能性さえあります。

仮に、開発に1年かけてサービスが完成し、2年目以降に徐々に売上が上がってきたとします。そして資金調達を行うため、投資家候補の人と、「売上がいくらまで伸びれば損益分岐点になるの?」ということを2期目の決算書を見ながらディスカッションしていたとします。仮に2期目に大きめの(本業とは直接関係のない)開業費を償却して、損益分岐点の計算上その金額を含めてしまっているとすると、本来の損益分岐点のための売上よりも、開業費分を含めると大きな売上が必要になってしまいます。

「開業費を償却しているのだと説明すれば済むでしょ?」と思うかもしれませんが、社長も投資家も税務のプロではないので、お互いにきちんと理解した上でディスカッションするのは難しいのではないでしょうか?少なくとも私の経験上、投資家に細かな税務のことを理解してもらうのは難しく、納得してもらうには時間がかかりました。(批判しているわけではなく、基本的なことさせを知っていればそこまで詳しくなることもないとは思いますし、他に必要なスキルはたくさんあると思います。)

②開業費、創業費は早めに費用化したほうが良い

投資家は1年前の決算書よりも、直近の2-3ヶ月でどのような伸びを見せているのかをより重視します。その前提でいうと、投資家が最も注目する2-3ヶ月について実態を適切に反映させる数字を作ることが重要ということになります。創業時にかかった費用をダラダラと5年をかけて償却するのは、経常的に発生する費用が積み上がってしまうことになりますので、おすすめしません。

投資家は、「設立1年目にどのぐらい損失出したか」よりも、直近の決算書や月次試算表を使って「短期で見て、どのぐらいで利益がでそうかや、中長期で見て、どのぐらいまで伸びそうか」という点にフォーカスするはずです。

一方で、全てのものにつき早めに費用化したほうが良いかというとそうではありません(例えば重要な固定資産の償却期間等)ので、別の記事で書きたいと思います。

投資家との打ち合わせ

5.まとめ

開業費と創業費の範囲と費用処理の仕方を、会計と税務の面から見ていただきました。

後半に書いたように外部の投資家が入ると、単に税金を安くすれば良いというわけでもなくなりますので、処理が任意のものについては、よく検討されて会計・税務の処理を決めるべきです。

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